大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

新年のご挨拶(と反省)

新年あけましておめでとうございます。

こちらのブログもすっかり「年頭挨拶だけ更新する」という悪習が定着してしまい各方面から「社長ブログはどうなっているのか」というお叱りを頂戴しております。
特に2023年はコロナの影響もだいぶ軽減され会食の席も増えたことから、久方ぶりにお目にかかる方も増えたのですが、そうした方々から「社長ブログを更新してくれていれば大石さんの近況が分かるのに、(コロナで疎遠になっていたこともあり)ブログがないと本当に近況が分からない」というお声をいただいたことがだいぶ心に響きました。

どうしても社長ブログには「それなりのいいことを書こう」と思って準備する一方で筆(キーボード)が遠のいてしまいがちですが、近況を書き残しておくだけでも情報としてお役に立てることがあるなら吝かではありませんので、2024年は定期的に近況のご報告をするようにして参りたいと思います。

事業のご報告は上場以降「決算説明会」の方に場を譲っておりますが、皆様のお陰を持ちまして順調に進捗しております。これもひとえに、日頃より当社をご愛顧くださっているお客様、パートナーのみなさま、素晴らしいサービスを提供してくれているAWS、Googleの皆さま、そして成長を支えてくれている社員と、そのご家族・パートナーの皆さまのお陰と深く感謝致しております。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

2023年は生成AI元年とも言える年でしたが、当社もご多分に漏れず全グループ社員が利用できるように制度をつくり、いくつかのパイロットプロジェクトを走らせるだけでなく、実際のお客様が安全に生成AIを利用できるような環境づくりのプロジェクトにも参画させていただきました。私も実際に手を動かして試しておりますが、率直に言うと「意外と難しい」という感想です。ChatGPTが出たての「何でもできそうだ」という万能感は一段落し、どのエンジンをどのように使い、かつ企業固有のデータをどのようにRAGで読み込ませるのかという組み合わせの問題が予想より複雑で一筋縄ではいきませんでした。

社内では「当社はこれからCIerからAIerになっていく」という話をしていますが、まさにAIもインテグレーターが必要な複雑系の世界に突入していきそうです。こうした状況でも、クラウドを用いてお客様の課題に真正面から取り組み「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」というビジョン目指して社員一同力を合わせて参ります。

今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2023年 年頭挨拶

新年あけましておめでとうございます。

昨年も引き続き新型コロナウイルス感染症に世界中の人々が苦しめられるだけでなく、ロシアによるウクライナ侵攻、急激な円安と経済、安全保障、健康と多くのテーマを一度に考えなくてはならない一年になりました。

こうした中、当社としては、昨年初めての企業買収を経験し、これまで当社になかった能力を買収で獲得するというチャレンジに踏み切りました。今後もこうした活動を通じてより成長スピードを加速させて行きたいと考えております。

また昨年は大幅な円安に振れたことから「お客様にとって海外クラウドが割高に感じられるのでは無いか?成長の阻害要因になるのではないか?」という懸念の声もありましたが、昨年から用意していたカスタマーサクセス部(ご契約済みのお客様に対してアフターフォローを専門に行うチーム)がAWS利用料の多いお客様にコスト削減コンサルティングサービスを提供するなど、タイムリーなサービス提供によってむしろご利用が増え、また「こうしたサービスがあるから当社と契約する」という新しいお客様もお迎えすることができるという好循環を築くことができました。

厳しい環境下においても順調に事業を進めることができたのも、日頃より当社をご愛顧くださっているお客様、パートナーのみなさま、素晴らしいサービスを提供してくれているAWSの皆さま、そして成長を支えてくれている社員と、そのご家族・パートナーの皆さまのお陰と深く感謝致しております。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 

2022年にはAWSの年次カンファレンス re:Invent も通常通りのフォーマットで開催され、私も3年ぶりにラスベガスに行って参りました。米国では殆どの人がマスクなしで通常の生活に戻していることに驚く一方、街中は3年前と異なりホームレスの人が目に見えて増え、ダウンタウンでもオフィスの空きが目立ち加熱した経済を急激に冷やしている状況であることが実感できる、(良くも悪くも)米国のダイナミズムを肌で感じる出張となりました。

かく言う私も昨年9月にはコロナに罹患してしまいまして、39度台の発熱で1週間寝込むという悪夢を経験しましたので「いますぐノーマスクに戻そう」などというつもりは毛頭無いのですが、実際に米国で(日本人を含めて)ほぼ全員がノーマスクの環境で打ち合わせや飲み会をやったりすると「やはりマスクなしでの会話は表情を含めたたくさんの情報が伝わって良いな」と再確認する機会にもなりました。

当社も出社率は10%程度という状況が続いていますが、これから何年かかけてハイブリッドワークの体制を作っていく前提に立つと「社員に強制することなく、社員自身が会社に来たくなる、face-to-faceのコミュニケーションを取りたくなるような機会をどう作っていくのか」が大きなテーマになるものと理解しています。
こうしたチャレンジについても、私たちの挑戦を皆さまにお伝えして行きたいと考えています。

皆さまにおかれましても健康にはご留意いただくとともに、よい一年になるようお祈り申し上げております。

今年も一年、どうぞよろしくお願いいたします!

2022年 年頭挨拶

新年あけましておめでとうございます。

昨年は、2020年に引き続き新型コロナウイルス感染症に世界中の人々が苦しめられる一年となりましたが、一方で新型ワクチンの登場など「技術が人々の生活を大きく変える可能性を秘めている」ことが明らかになった一年ともいえます。

当社の事業はお陰様をもちまして、2020年に慎重だったIT投資が一気に復調し、堅調に推移することができました。これも、日頃より当社をご愛顧くださっているお客様、パートナーのみなさま、素晴らしいサービスを提供してくれているAWSの皆さま、そして成長を支えてくれている社員と、そのご家族・パートナーの皆さまのお陰と深く感謝致しております。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

www.youtube.com

 

2022年も、これまで同様に「DX」がIT業界における大きなテーマになることは間違いありません。お客様との物理的な接触が今後も限られる中で、お客様とどう繋がっていくのか、また満足度をどうやって高めていくのかは容易な事ではありませんが、みなさまがこうしたチャレンジに当たって何か参考になることがあればと思いまして、↑の動画では米国ユナイテッド航空社のAWSを用いたDX事例についてご紹介させて頂きました。

昨年は新卒・中途を含め50名を超える採用を進めて参りましたが、まだまだ皆さまからの「クラウドを使ったDX推進をサポートしてほしい」というご要望に完全には応えられる体制には至っていないと猛省しております。今年は、採用+社内でのトレーニングを通じて、皆さまのリクエストに100%お応えできるよう体制の強化を進めて参ります。

 

皆さまにおかれましてもご健康にはご留意いただくとともに、よい一年になるようお祈り申し上げております。

今年も一年、どうぞよろしくお願いいたします!

2021年10月版 クラウド業界アップデート 〜ガバメントクラウドにAWSとGoogle Cloudが採択!〜

こんにちは、大石です。

今月も忙しいビジネスパーソンの皆さまに向けて、先月(2021年10月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

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2021年10月のクラウド関連トップニュース 〜ガバメントクラウドAWSGoogle Cloudが採択

  • 報道などでも大きく取り上げられましたが、AWSGoogle Cloudがデジタル庁   のクラウド基盤として採択されました(なおこれは21年度の話で、22年度以降は他のクラウドを採択する可能性もあるとのこと)。
  • これは「ガバメントクラウド先行事業」と呼ばれているもので、2025年までに地方自治体のシステムをクラウド化することを睨み、先行8自治体の基幹システムをクラウドに移行するというもの。
  •  調達に際しては先行してISMAPに登録されていることなどが求められているものの、実際に仕様をみた限りは非常に網羅的に「標準的なパブリッククラウドに求められる要件」が並べられており、特に恣意的なものを感じることはありませんでした。一方でコンピューティングリソースからセキュリティ、サポート体制、アプリケーション統合のための基盤まで幅広く求められていることから「相当な規模感でサービスを提供している事業者でなければこの要求を満たすことは難しい」のも事実です。
  • なお、デジタル庁のこの発表に対して、2ch創設者のひろゆき氏などが「なぜ国産クラウドを使わないのか」という意見を表明し議論になりましたが、国産クラウドの代表格であるさくらインターネットの田中社長がこの問題に対する見解をインタビューで答え(田中社長の回答が正鵠を射ていたこともあり)一旦は収束したようです。田中社長の見解は非常に参考になりますので、ぜひこちらの記事をご覧になることをお奨めします。

注目AWSトピックス

  1. Amazon RDS Custom for Oracle を発表
    これまでAWS上でOracle DBを動かそうとすると、EC2にOracle DBをインストールするかOracle RDSを使うかの二択でしたが、前者では仮想サーバーのお守りが必要になってしまい、後者ではOracle DBのエコシステムを支える各種パッケージソフトなど(例えば監査ログの取得や特殊な暗号化ソリューションなど)が利用できないというジレンマがありました。
    Amazon RDS Custom for Oracleを用いると、基本的な運用はRDSのマネージドサービスを利用しつつ、特殊なソフトウェアをインストールする場合には直接インスタンスにアクセスできるため、Oracle DBのエコシステムをクラウド環境でも展開することが可能になります。
  2. Amazonが決算を発表。AWSは39%増
    Amazon全体はコスト増もあり株価は軟調ですが、AWSは絶好調で売上はなんと前年同期比39%増。第3四半期の売上は、円安傾向も手伝って、日本円で約1兆8千億円に上るとのこと。
    すごいですね(白目

その他クラウド関連ニュース

  1. Google Cloudもオンプレミスで。Google Distributed Cloud発表
    この「クラウド全盛時になぜオンプレが必要なのか?」という向きもあるかと思いますが、私が認識している限りでは
    証券業務のような超低レイテンシが求められる業務領域
    災害拠点病院のようにインフラが途絶した状態でも稼働が求められる領域
    ③モバイル通信サービス事業者内にコロケーションして通信サービスとバンドルする用途
    といった領域で、クラウドサービス事業者が提供するオンプレミス型のサービス需要が増している様です。特に3の領域は既にNetflixなどが通信事業者と組んで実現しており「Netflix見放題プラン」などが提供されていますが、今後もゲームの領域で「当社の通信サービスだとレイテンシが早くてゲームが有利」だったり「当社の通信サービス経由だとチケット争奪戦に勝ちやすい」など、サービス提供者が積極的にモバイル通信サービス事業者のコロケーションサービスを使うことで差別化を図るなどの可能性もあり、今後の拡大が見込まれます。
  2. Microsoft AzureがCO2排出量確認ツールを提供
    MicrosoftMicrosoft Emissions Impact Dashboardという名称で、二酸化炭素の排出量を把握、追跡できるツールを提供開始しました。このツールを用いればオンプレミスで動作しているシステムをAzureに移行した際に削減できるCO2排出量の見積もりも取得することができ、今後市場再編でプライム市場へ移行する企業はTCFD提言に沿った形で「どのようにCO2削減に関与しているか」を開示する義務が発生する見込みですが、こうした活動を支えるものになりそうです。
    AWS, Google Cloudからも同様のツールが提供されることが強く望まれます。

まとめ

  • クラウドがついに政府の本丸に
    今回の決定は2021年度限りのもので、事業者選定を含めた本格的な展開は来年度以降になるものと思われますが、それでも公共システムの基盤にクラウドが採択されたことには大きなインパクトがありそうです。
  • 来るべきTCFD時代に備えて、IT部門もCO2排出量削減の計画と見える化
    COP26も閉会し気温上昇を1.5度に抑えることが各国義務になった今、企業もTCFD提言等を通じて、この枠組みに沿った企業活動を行っていることを表明する義務が発生します。個別に小規模なシステムを運用するのではなく、AWSやAzureの様に大規模に再生可能エネルギーを用いて、効率性と環境配慮を両立しているサービスを利用することが、環境保護の観点からも必要とされそうです。

 

 

2021年9月版 クラウド業界アップデート 〜DXはPaidyに学ぼう!3000億円買収の意味〜

こんにちは、大石です。

今月も忙しいビジネスパーソンの皆さまに向けて、先月(2021年9月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

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2021年9月のクラウド関連トップニュース 〜DXはPaidyに学ぼう!3000億円買収の意味〜

  • 後払いサービスを提供する国内のベンチャー企業Paidyが、約3,000億円でPayPalに買収されました。国内フィンテック企業の巨額買収は、その金額も驚きをもって迎えられましたが、「なぜPayPalが?」「後払いってそんなにニーズがあるの?」というところでもクエスチョンがついた方が多かったのでは無いかと思います。
  • PayPalの戦略としては、アンダーバンクト層と呼ばれる若年者、クレジットカードを持てない層を一気に取り込む目論見だと思われます。国内でも47.5%の大学生が奨学金を借りていたり仕送りの金額も減少を続ける中、クレジットカードがあまりにリボ払いをプッシュするせいで「後払い」の受け皿になっておらず、むしろ逆に忌避されはじめているようです(私の知り合いの学校では、授業で「リボ払いはしないように」と指導されたと聞きました)。こうした事情もあり、国内だけでなく全世界的にBNPL(Buy Now, Pay Later)市場は伸びており、最大手のスウェーデンKlarna社の時価総額は3兆円超えと言われています。
  • Paidyは、こうしたBNPLに特化したfintechベンチャーとしてよく知られていました。Paidyはそうした「クレジットカードを[持てない|持たない]層」に対して、非常に使いやすいアプリと、Appleをはじめとする有力なECサイトとの連携によって「安心できる後払い」ソリューションを提供することで成長を続けてきました。買収時点でのPaidyのユーザー数は600万人超と見込まれています。
  • Fintechというとどうしても「tech」に目が行ってしまい「技術の会社」という認識を持ってしまいますが、Paidyは「実際に与信を行い、新しい市場に対して金融サービスを提供していた」ことが評価されたのではないかと思います。
    Amazonも創業当初から大量の本の在庫を抱えていましたが、「e-businessは在庫を持たないことが利点なのにAmazonは分かっていない」と投資家に批判され続けていました。ですが、Amazonは「在庫を持っていた方が顧客により早く、安く商品を届けることができる」という信念(customer obsession)の下で在庫し続けました。どちらが正しかったのかは結果が示すとおりですが、AmazonもPaidyも、高い技術を持ちつつも、リスク(Amazonは在庫、Paidyは与信)を取ることで「顧客によいサービスを提供する」ことにきちんと焦点が当たっていたことが成功に繋がったのだと思います。
  • これはDXを考える上でも非常に重要な視点だと考えられます。つまり「技術は大切だが、最も重要なことは顧客によりよいサービスを提供すること」で、「技術はサービスを実現するために用いる」「技術によって顧客体験が劇的に改善される」ことがDXの本質だと考えられます。どうしても私たちの様にITに携わっているとこの順番が逆転しがちですが、私も自戒を込めてPaidyの事例をトップニュースとしてご紹介させていただきました。

注目AWSトピックス

  • Amazon三菱商事から太陽光発電による電力を購入
    Amazonは、2040年までにカーボンニュートラルを実現すると表明しており、その取り組みの一環として(使途は明示されていないものの、ほぼ確実に)AWSのデータセンター向けに、最大で23MW分h分の再生可能エネルギーの調達を進めるというものです。
    既にAWSから「オンプレからAWSに移行することでどの程度CO2削減に貢献できるのか」というデータが出ていますが、今後企業の間でもSDGs推進の為に「再生可能エネルギーを用いているクラウド事業者から調達する」ことが選定条件として拡がるものと考えられます。

その他クラウド関連ニュース

  1. ISMAPの認定が更新。kintoneやBoxが政府でも利用可能に!
    ISMAPとは、政府が求めるセキュリティ要求を満たしているクラウドサービスを予め評価・登録することにより、政府におけるクラウドサービスの円滑な導入を目的とした制度です(実際に登録されたサービスの一覧はこちらから確認できます)。
    
デジタル庁で代表されるように政府・公共機関でもクラウドの導入が始まっていますが、個別の省庁、地方自治体がサービスの評価(特にセキュリティ)を行うことは非合理的なので一括でやってしまおう、という取り組みです。2021年3月に初版が出て以降アップデートが定期的になされており、今年の9月にはBoxやKintoneなども登録されました。今後企業でもこうしたリストを参考にする動きが拡がる可能性がありますので、クラウドサービスの調達に関わる方にとっては要チェックです
  2. Oracle JDKが無償提供へ
    2018年にOracle JDKが有償化され大きな混乱が起きましたが、結果としてOpenJDK、AWSが提供するAmazon Correttoといった無償のJDKが拡がるきっかけともなりました。経緯とねらいについてはPublickeyさんの解説が詳しくかつ的確なので、一度ご覧になることをお奨めします。
いずれにしても、一度有償化されたものを「もう一度無償化します」と言われても「はいそうですか」と信じる方は少ないと思われますので、「エンタープライズアプリケーション=Java」の世界に水を差してしまったことに変わりはなさそうです。

先月のサーバーワークス関連ニュース

  1. 2021年9月のAWS障害(Direct Connect障害)に関する説明会を実施
    2021年9月2日にAWS東京リージョンで発生した障害について、事象の報告会・勉強会を開催しました。それだけ今回の障害がみなさまに与える影響が大きかったということと、AWSを使う上でDirect Connectが一般的になっていることを示したものと考えられます。当社では、今後もこうしたトラブルの回避法やベストプラクティスなどを資料としてご提供の予定です。
  2. アプリケーション開発サービスを開始
    実は当社、昔からASPの開発や提供をやっており、かつCloudAutomatorというSaaSも全て自社で開発していますので、アプリケーション開発のチームも能力もずっと維持していたのですが、AWSのインフラ周辺のサポートの需要が急激に高まったことから、対外的にアプリケーション開発サービスを提供することはお休みしておりました。
ですが、昨今AWSをインフラにしてサーバレス開発をやっていきたい、Amazon Connectを使って音声アプリケーションを構築したいというニーズが高まったことを受けて、改めてアプリケーション開発もサービスとしてご提供を再開することにしたものです

まとめ

  • DXの本質は「顧客体験の劇的な向上」
     DXを「ユーザーや社員などのステークホルダーの体験を、デジタルを使って劇的に良くすること」と考えると、Paidyは「アプリの使い勝手に加え、支払いの体験そのものも劇的に改善」したファイナンス業界のDX事例とみてよいと思います。「当社もDXだ!」という号令がかかっている方も多いと思いますが、ぜひこうした事例をご参考にされることをお奨めします
  • クラウドサービスの調達に変化が。クラウドの利用は技術に留まらずSDGs
    AWS再生可能エネルギーの調達を大規模に始めることで、いよいよIT業界にもカーボンオフセットの波が押し寄せそうです。こうした対応をとっていないクラウド事業者やデータセンター事業者は今後の調達で不利になることが予想され、ITサービスの選定に「持続可能な取り組み」という項目が入ってくることも遠くなさそうです

 

 

2021年8月版 クラウド業界アップデート 〜AWS東京リージョンでDiret Connectに障害〜

こんにちは、大石です。

今月も忙しいビジネスパーソンの皆さまに向けて、先月(2021年8月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

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2021年8月のクラウド関連トップニュース 〜AWS東京リージョンでDiret Connectに障害

  • 今月のトップは残念ながらこちらです。AWSの東京リージョンに専用線接続(Direct Connect = DXと略します)を行っているお客様の環境で、通信ができなくなるという障害が発生しました
  • AWSの障害は複数のリージョンを使うことで回避できるものが多いのですが、今回の障害は「仮にDXを二重化していても防げなかった」点がこれまでの障害とは性格が異なる点です。ただし、専用線VPN接続の場合は(手動でフェイルオーバーすれば)回避できたことや、複数リージョンを用いたDR構成の場合は回避できたことから「全く回避方法がない障害」というわけではなかったことに注意が必要です。実際に当社のお客様でも、このような構成で障害を回避された方はいらっしゃいました
  • 障害の内容はAWSから公式ドキュメントが出ていますが、一言で言うと「新しく開発されたプロトコルのバグ」だそうです。Publickeyの解説が非常に読みやすく、正式ドキュメントに注釈を付ける形で解説されておりますので、ご一読をお奨めします

    www.publickey1.jp

  • 当社では、この障害が発生したすぐ後からWebサイト上で状況を公開するとともに、対応策などについて(その時点での情報を元に)お客様、AWS利用ユーザーと共有して参りました。現時点での共有内容は下のリンクからご覧いただけますので、DXをご利用中の方は是非ご一読ください

    www.serverworks.co.jp

  • また、AWSをご利用中の方からは、「障害期間中に得られる情報が限定的だった」というお声も耳にしました。AWSの最上位サポートに加入すればTAMという専門サポートがつきますし、また当社との契約でも(上のペーパーの様に)必要な情報をタイムリーにご提供することができますクラウドは運用が非常に重要ですが、殆どの場合で、当社の様に多数のAWSプロジェクトを経験している企業の方が一般のユーザー企業よりも運用の知見が蓄積しています。
    AWS利用の際には、当社の様なパートナーを有効に活用し、アプリケーションをはじめとする戦略領域は内製化を、インフラの様な汎用サービスはアウトソースを有効に活用するという戦略が現実解と考えます
  • なお、このCloudUpdateでは基本的に前の月のニュースを取り上げていますが、こちらの障害は2021年9月2日に発生したもので、非常にホットなトピックであることから今月の記事として取り上げさせていただきました

注目AWSトピックス

  1. AWSNSAと1兆円の契約
    AWS国家安全保障局NSA)と1兆円規模の契約を締結したと報じられました。早速これに対してMicrosoftが抗議をしているとのこと。国防総省のプロジェクトJEDIでは約3年に渡りAWS vs Microsoft vs Oracleで熾烈な訴訟合戦を繰り広げた挙げ句、プロジェクトそのものがキャンセルになる(正確にはJWCCという別プロジェクトへ)という憂き目を見たことから、今回もすんなりと事が進むのか経緯が注目されます
  2.  EC2が15周年
    仮想コンピューターの基盤であるEC2が2006年に誕生し、先月で15周年を迎えたとのことです!EBSが2008年ですから、実に2年近くの間「インスタンスストア」と呼ばれる、仮想サーバーをシャットダウンすると中のデータが消えてしまうという仕様で使われていたことになります。
    AWSを立ち上げた現Amazon.comのCEOであるAndy Jassyさんは、最初にこの「サービスをAES(Amazon Execution Service)と名付けていた」とAWSエバンジェリストのブログで初めて明かされました。これからもAWSの基盤としての活躍が期待されます

その他クラウド関連ニュース

  1. Microsoft365が値上げ
    M365, O365の一部プランが2022年3月に値上げされるとのことです。M365は大分市場に普及した感がありますので、普及しきった後の値上げには反発も予想されますが、一方でTeamsがバンドルされたりと機能追加も行われていますので判断は分かれそうです。
個人的には、後付けでTeamsがバンドルされたことを理由に値上げされてもあまり納得感はないので、もう少しユーザーが必要サービスをきちんと取捨選択できるプライシングを期待したいところです
  2. クラウドインフラ市場は39%成長
    Synergy Researchの調べにより、2021年の4-6月期もクラウドインフラ市場は順調に成長し、売上ベースで39%成長し4.6兆円規模になったと報じられました。市場シェアはAWSが33%でトップを維持しているようですが、Microsoftも前年同期比51%成長と猛追しており市場シェアは20%に達した模様です。

    特筆すべきがCanalys社の分析で、「顧客はマルチクラウド戦略によってカーボン・フットプリントの最小化を実現するだろう」と示しており、CO2削減が国家目標となった現在、再生可能エネルギーを大規模に用いているAWSMicrosoft, Googleなどのクラウドを用いることでCO2排出量の削減が進んでいくことを示しています

先月のサーバーワークス関連ニュース

  • 合弁会社「 G-gen(ジージェン)」を設立し、Google Cloud事業へ本格参入
    韓国のクラウドインテグレーターであるBespin Global社と共同でG-genを設立し、GCPのライセンス提供やインテグレーション、保守サービスの提供を開始します。特に提供ライセンスの価格にこだわり、G-gen経由でGCPをお使いのお客様には▲5%で提供いたします!
    インフラとしてのクラウド(いわゆるIaaS)はAWSが中心になることは変わりませんが、例えばBigQueryなどの高速な大量データの解析や、ゼロトラスト環境の構築(BeyondCorp)など、AWSでのカバレッジが薄い領域で「AWSGCPを組み合わせて利用したい」というリクエストが増えつつあります。こうしたお客様が期待される、より完全なクラウド戦略の実行をサーバーワークスとG-genのタッグでサポートして参ります。ご期待下さい!

まとめ

  • クラウドの利用に障害はつきもの

    このブログでも幾度となくお伝えしている通り、クラウドでもオンプレでも、コンピューターに障害はつきものです。クラウドの利用にあたっては、当社の様な専門家をうまく使い、想定されるトラブルとその対処法を十分に吟味し、「トラブルが起きないシステム」ではなく「何が起きても素早く対応できるシステム」を目指すのが良い選択だと考えます
  • マルチクラウドは進むが、目的ではなく「手段」
    
当社も子会社を通じてGCPの提供を始めますが、当社は「マルチクラウドをゴールにしている」わけではありません。多くの方がマルチクラウドというとこのようなイメージ

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    を持たれるようですが、これはAWS以外のベンダーによる「AWS以外のクラウドも使ってくれ、というマーケティングメッセージ」と認識した方が正確です。
実際の現場で起きているマルチクラウドのニーズはこのようなイメージで、

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    あくまでビジネス目標に対して必要なサービスを組み合わせていった結果、「たまたまAWSGCPを組み合わせる形になった」というのが本当のところです。

    クラウドがどれだけ優れた道具であっても、ITは本質的に「手段」です。皆さまが達成したいビジネス目標やお客様へのサービス向上のために、手段として有効に活用頂ければと思います!

2021年7月版 クラウド業界アップデート 〜(ウマ娘は動かなくても)本命のWindows 365登場〜

こんにちは、大石です。

今月も忙しいビジネスパーソンの皆さまに向けて、先月(2021年7月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

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2021年7月のクラウド関連トップニュース 〜Microsoftが仮想デスクトップサービス Windows 365を発表

7月に発表され、8月2日には実際に利用できるようになっていましたので、早速私も使ってみました。

実際の使用感は動画でご確認いただきたいと思いますが、さすがにMS謹製だけあって快適です。利用者側のネットワーク環境にもよりますが、ネットワークさえよければ端末のスペックに関わらずどこからでも自分のWindows環境にアクセスできるのはかなり便利です。

これまで仮想デスクトップサービスを利用する場合、比較的大規模な環境でAzure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)を用いるケースは多く見受けられましたが、転送量やストレージによって料金が変動したり、仮想マシンのサイズ変更が若干難しいなどの制約もあって大規模導入が中心だったように見受けられます。それに対してWindows 365では、テンプレートから選ぶだけで簡単に仮想マシンを起動でき、料金もわかりやすいため、中小規模での導入に最適化されている印象です。

ブラウザ(Chrome)でもそれなりに快適に動作しますが、やはりRemote Desktopアプリの方が快適です。なお、私の環境(M1 iMac)でRDP接続を選択するとなぜか.rdpwという拡張子でRDPファイルがダウンロードされますが、そのままでは開けなかったので、拡張子を.rdpにリネームしたところ接続することができました(ご利用は自己責任でお願いします)。

大注目のW365ですが、残念な点を2つ。

  • 8/6現在、無料提供枠が売り切れてしまったとのことで無償トライアルはできませんが、また復活の予定とのこと。ご興味のある方はこちらからお試しになることをお奨めします!
  • ウマ娘は動きません!GPUがないので当たり前ですが)「これでどこでも育成可能」と期待されていた方は、Windows 11のAndroidアプリ対応を待ちましょう

注目AWSトピックス

  • JEDIプロジェクトがキャンセルに。AWSとAzureの痛み分けか?
    以前よりクラウド界隈で話題になっていた、1兆円とも言われる巨額を投じて米国防総省が実行しようとしていたクラウド移行プロジェクト「JEDI」が、数年にわたる訴訟合戦の末に最終的にはキャンセルされることになりました。国防総省は新たにJWCCというマルチベンダー型のプロジェクトをスタートし、これはAWSMicrosoftの両社に提案を求めていると報道されており、時勢に従った判断になったように思われます。
  • AWSの決算が発表に
    2Qの売上は1兆6,300億円・前年同期比で37%成長とのことで、この規模に至っても30%を超える成長を続けていることが驚きをもって迎えられているようです。7月からはAmazon.comのトップがAWS生みの親であるAndy Jassy氏に替わることもあり、よい置き土産ができたのではないでしょうか?

その他クラウド関連ニュース

  • Googleが国内でもモバイル決済サービスを開始へ
    Google社が日本国内でpringという資金移動を手がけるメタップス傘下のベンチャーを買収し、国内で資金移動業に参入すると報じられました。既にApple Cardの発行を手がけるゴールドマン・サックスが国内で銀行免許を取得し「Apple Cardの来日か?」と囁かれていたり、来年にはLINE PayとPayPayの統合が予定されていたりと、モバイル決済が非常にホットな市場になってきました。

    市場シェアはPayPayが取り切ると思いますが、個人的にはApple Cardを使ってみたいところです。
  • Slackが音声のみのコミュニケーション機能「Huddle」をリリース
    Clubhouseの登場などで注目を浴びる音声によるコミュニケーションですが、Slackでも音声で「ちょっとした会話」を実現する「Huddle」という機能がリリースされました。カメラを付けなくてよいので、家からテレワークをしている人などでも気楽に雑談や「ちょっといい?」を実現できる、ユニークなソリューションになっています。
    裏側はAmazon Chimeのテクノロジーを使っているとのことで、2020年8月に発表されたSlackとAWSとの協業が具体化したものと見られています。当社でも試用中ですので、追ってレポートする予定です。

先月のサーバーワークス関連ニュース

  • ガートナー社 「パブリック・クラウド・インフラストラクチャの実装∕運⽤サービスのマーケット・ガイド」に掲載
    米調査会社のガートナーは、CIOに対する影響力の高いリサーチ/コンサルティング会社として知られていますが、同社のレポートに当社も昨年に引き続き掲載されることになりました。特に米国では「ガートナーのレポートに載らなければ調達の候補に入らない」と言われるほど影響力のあるもので、私どもとしても光栄に感じつつ、より高い評価を得られるようサービスの内容・質の向上に努めて参ります。
  • エクレクトと協業しAWSとZendeskによる次世代型コンタクトセンターサービスを拡充
    エクレクト社は、コンタクトセンターを提供するためのクラウドサービスを提供する、アジアNo.1のZenDesk専業インテグレーターです。同社と協業することで、複数チャネル(主にZenDeskとAmazon Connectを想定)による顧客接点の運用効率化からコスト削減まで一括提案できる体制を整えます。
    コロナ禍で、これまでのような三密型コールセンターの継続が難しくなる中、同社との協業で新しい形のコンタクトセンターを国内に拡げていきたいと思います。

まとめ

  • Windows 365の登場でようやく仮想デスクトップが本格化か
    W365にはMicrosoft謹製の強みが、またAWSのWorkSpacesも安定性やGPU性能などに一日の長があり、PCの入手が予定通り進まない状況が継続しそうな中、企業のクライアント戦略がどう変化するのか注目されます(ちなみに著者はSun Ray 170時代からの筋金入りのシンクライアント信者です)
  • 社内SNSでも「ちょっといい?」
    テレワークの継続によってあたらしい働き方が模索される中、Huddleの様な「社内での音声によるちょっとした会話」が、コミュニケーションの隙間を埋める存在になり得るのか期待されます。

デルタ株の蔓延で、これまでで最も酷い勢いで感染が拡がりそうな状況です。
ITに携わる方であれば比較的テレワークを継続しやすいものと思いますので、医療従事者の皆さまやエッセンシャルワーカーの方に感謝しつつ、クラウドを効果的に用いて「物理的な接触がなくても、事業は続けられる」ことを実証して参りましょう!