大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

2021年10月版 クラウド業界アップデート 〜ガバメントクラウドにAWSとGoogle Cloudが採択!〜

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こんにちは、大石です。

今月も忙しいビジネスパーソンの皆さまに向けて、先月(2021年10月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

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2021年10月のクラウド関連トップニュース 〜ガバメントクラウドAWSGoogle Cloudが採択

  • 報道などでも大きく取り上げられましたが、AWSGoogle Cloudがデジタル庁   のクラウド基盤として採択されました(なおこれは21年度の話で、22年度以降は他のクラウドを採択する可能性もあるとのこと)。
  • これは「ガバメントクラウド先行事業」と呼ばれているもので、2025年までに地方自治体のシステムをクラウド化することを睨み、先行8自治体の基幹システムをクラウドに移行するというもの。
  •  調達に際しては先行してISMAPに登録されていることなどが求められているものの、実際に仕様をみた限りは非常に網羅的に「標準的なパブリッククラウドに求められる要件」が並べられており、特に恣意的なものを感じることはありませんでした。一方でコンピューティングリソースからセキュリティ、サポート体制、アプリケーション統合のための基盤まで幅広く求められていることから「相当な規模感でサービスを提供している事業者でなければこの要求を満たすことは難しい」のも事実です。
  • なお、デジタル庁のこの発表に対して、2ch創設者のひろゆき氏などが「なぜ国産クラウドを使わないのか」という意見を表明し議論になりましたが、国産クラウドの代表格であるさくらインターネットの田中社長がこの問題に対する見解をインタビューで答え(田中社長の回答が正鵠を射ていたこともあり)一旦は収束したようです。田中社長の見解は非常に参考になりますので、ぜひこちらの記事をご覧になることをお奨めします。

注目AWSトピックス

  1. Amazon RDS Custom for Oracle を発表
    これまでAWS上でOracle DBを動かそうとすると、EC2にOracle DBをインストールするかOracle RDSを使うかの二択でしたが、前者では仮想サーバーのお守りが必要になってしまい、後者ではOracle DBのエコシステムを支える各種パッケージソフトなど(例えば監査ログの取得や特殊な暗号化ソリューションなど)が利用できないというジレンマがありました。
    Amazon RDS Custom for Oracleを用いると、基本的な運用はRDSのマネージドサービスを利用しつつ、特殊なソフトウェアをインストールする場合には直接インスタンスにアクセスできるため、Oracle DBのエコシステムをクラウド環境でも展開することが可能になります。
  2. Amazonが決算を発表。AWSは39%増
    Amazon全体はコスト増もあり株価は軟調ですが、AWSは絶好調で売上はなんと前年同期比39%増。第3四半期の売上は、円安傾向も手伝って、日本円で約1兆8千億円に上るとのこと。
    すごいですね(白目

その他クラウド関連ニュース

  1. Google Cloudもオンプレミスで。Google Distributed Cloud発表
    この「クラウド全盛時になぜオンプレが必要なのか?」という向きもあるかと思いますが、私が認識している限りでは
    証券業務のような超低レイテンシが求められる業務領域
    災害拠点病院のようにインフラが途絶した状態でも稼働が求められる領域
    ③モバイル通信サービス事業者内にコロケーションして通信サービスとバンドルする用途
    といった領域で、クラウドサービス事業者が提供するオンプレミス型のサービス需要が増している様です。特に3の領域は既にNetflixなどが通信事業者と組んで実現しており「Netflix見放題プラン」などが提供されていますが、今後もゲームの領域で「当社の通信サービスだとレイテンシが早くてゲームが有利」だったり「当社の通信サービス経由だとチケット争奪戦に勝ちやすい」など、サービス提供者が積極的にモバイル通信サービス事業者のコロケーションサービスを使うことで差別化を図るなどの可能性もあり、今後の拡大が見込まれます。
  2. Microsoft AzureがCO2排出量確認ツールを提供
    MicrosoftMicrosoft Emissions Impact Dashboardという名称で、二酸化炭素の排出量を把握、追跡できるツールを提供開始しました。このツールを用いればオンプレミスで動作しているシステムをAzureに移行した際に削減できるCO2排出量の見積もりも取得することができ、今後市場再編でプライム市場へ移行する企業はTCFD提言に沿った形で「どのようにCO2削減に関与しているか」を開示する義務が発生する見込みですが、こうした活動を支えるものになりそうです。
    AWS, Google Cloudからも同様のツールが提供されることが強く望まれます。

まとめ

  • クラウドがついに政府の本丸に
    今回の決定は2021年度限りのもので、事業者選定を含めた本格的な展開は来年度以降になるものと思われますが、それでも公共システムの基盤にクラウドが採択されたことには大きなインパクトがありそうです。
  • 来るべきTCFD時代に備えて、IT部門もCO2排出量削減の計画と見える化
    COP26も閉会し気温上昇を1.5度に抑えることが各国義務になった今、企業もTCFD提言等を通じて、この枠組みに沿った企業活動を行っていることを表明する義務が発生します。個別に小規模なシステムを運用するのではなく、AWSやAzureの様に大規模に再生可能エネルギーを用いて、効率性と環境配慮を両立しているサービスを利用することが、環境保護の観点からも必要とされそうです。