大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

2021年8月版 クラウド業界アップデート

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こんにちは、大石です。

今月も忙しいビジネスパーソンの皆さまに向けて、先月(2021年8月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

(動画はただいま作成中です)

2021年8月のクラウド関連トップニュース 〜AWS東京リージョンでDiret Connectに障害

  • 今月のトップは残念ながらこちらです。AWSの東京リージョンに専用線接続(Direct Connect = DXと略します)を行っているお客様の環境で、通信ができなくなるという障害が発生しました
  • AWSの障害は複数のリージョンを使うことで回避できるものが多いのですが、今回の障害は「仮にDXを二重化していても防げなかった」点がこれまでの障害とは性格が異なる点です。ただし、専用線VPN接続の場合は(手動でフェイルオーバーすれば)回避できたことや、複数リージョンを用いたDR構成の場合は回避できたことから「全く回避方法がない障害」というわけではなかったことに注意が必要です。実際に当社のお客様でも、このような構成で障害を回避された方はいらっしゃいました
  • 障害の内容はAWSから公式ドキュメントが出ていますが、一言で言うと「新しく開発されたプロトコルのバグ」だそうです。Publickeyの解説が非常に読みやすく、正式ドキュメントに注釈を付ける形で解説されておりますので、ご一読をお奨めします

    www.publickey1.jp

  • 当社では、この障害が発生したすぐ後からWebサイト上で状況を公開するとともに、対応策などについて(その時点での情報を元に)お客様、AWS利用ユーザーと共有して参りました。現時点での共有内容は下のリンクからご覧いただけますので、DXをご利用中の方は是非ご一読ください

    www.serverworks.co.jp

  • また、AWSをご利用中の方からは、「障害期間中に得られる情報が限定的だった」というお声も耳にしました。AWSの最上位サポートに加入すればTAMという専門サポートがつきますし、また当社との契約でも(上のペーパーの様に)必要な情報をタイムリーにご提供することができますクラウドは運用が非常に重要ですが、殆どの場合で、当社の様に多数のAWSプロジェクトを経験している企業の方が一般のユーザー企業よりも運用の知見が蓄積しています。
    AWS利用の際には、当社の様なパートナーを有効に活用し、アプリケーションをはじめとする戦略領域は内製化を、インフラの様な汎用サービスはアウトソースを有効に活用するという戦略が現実解と考えます
  • なお、このCloudUpdateでは基本的に前の月のニュースを取り上げていますが、こちらの障害は2021年9月2日に発生したもので、非常にホットなトピックであることから今月の記事として取り上げさせていただきました

注目AWSトピックス

  1. AWSNSAと1兆円の契約
    AWS国家安全保障局NSA)と1兆円規模の契約を締結したと報じられました。早速これに対してMicrosoftが抗議をしているとのこと。国防総省のプロジェクトJEDIでは約3年に渡りAWS vs Microsoft vs Oracleで熾烈な訴訟合戦を繰り広げた挙げ句、プロジェクトそのものがキャンセルになる(正確にはJWCCという別プロジェクトへ)という憂き目を見たことから、今回もすんなりと事が進むのか経緯が注目されます
  2.  EC2が15周年
    仮想コンピューターの基盤であるEC2が2006年に誕生し、先月で15周年を迎えたとのことです!EBSが2008年ですから、実に2年近くの間「インスタンスストア」と呼ばれる、仮想サーバーをシャットダウンすると中のデータが消えてしまうという仕様で使われていたことになります。
    AWSを立ち上げた現Amazon.comのCEOであるAndy Jassyさんは、最初にこの「サービスをAES(Amazon Execution Service)と名付けていた」とAWSエバンジェリストのブログで初めて明かされました。これからもAWSの基盤としての活躍が期待されます

その他クラウド関連ニュース

  1. Microsoft365が値上げ
    M365, O365の一部プランが2022年3月に値上げされるとのことです。M365は大分市場に普及した感がありますので、普及しきった後の値上げには反発も予想されますが、一方でTeamsがバンドルされたりと機能追加も行われていますので判断は分かれそうです。
個人的には、後付けでTeamsがバンドルされたことを理由に値上げされてもあまり納得感はないので、もう少しユーザーが必要サービスをきちんと取捨選択できるプライシングを期待したいところです
  2. クラウドインフラ市場は39%成長
    Synergy Researchの調べにより、2021年の4-6月期もクラウドインフラ市場は順調に成長し、売上ベースで39%成長し4.6兆円規模になったと報じられました。市場シェアはAWSが33%でトップを維持しているようですが、Microsoftも前年同期比51%成長と猛追しており市場シェアは20%に達した模様です。

    特筆すべきがCanalys社の分析で、「顧客はマルチクラウド戦略によってカーボン・フットプリントの最小化を実現するだろう」と示しており、CO2削減が国家目標となった現在、再生可能エネルギーを大規模に用いているAWSMicrosoft, Googleなどのクラウドを用いることでCO2排出量の削減が進んでいくことを示しています

先月のサーバーワークス関連ニュース

  • 合弁会社「 G-gen(ジージェン)」を設立し、Google Cloud事業へ本格参入
    韓国のクラウドインテグレーターであるBespin Global社と共同でG-genを設立し、GCPのライセンス提供やインテグレーション、保守サービスの提供を開始します。特に提供ライセンスの価格にこだわり、G-gen経由でGCPをお使いのお客様には▲5%で提供いたします!
    インフラとしてのクラウド(いわゆるIaaS)はAWSが中心になることは変わりませんが、例えばBigQueryなどの高速な大量データの解析や、ゼロトラスト環境の構築(BeyondCorp)など、AWSでのカバレッジが薄い領域で「AWSGCPを組み合わせて利用したい」というリクエストが増えつつあります。こうしたお客様が期待される、より完全なクラウド戦略の実行をサーバーワークスとG-genのタッグでサポートして参ります。ご期待下さい!

まとめ

  • クラウドの利用に障害はつきもの

    このブログでも幾度となくお伝えしている通り、クラウドでもオンプレでも、コンピューターに障害はつきものです。クラウドの利用にあたっては、当社の様な専門家をうまく使い、想定されるトラブルとその対処法を十分に吟味し、「トラブルが起きないシステム」ではなく「何が起きても素早く対応できるシステム」を目指すのが良い選択だと考えます
  • マルチクラウドは進むが、目的ではなく「手段」
    
当社も子会社を通じてGCPの提供を始めますが、当社は「マルチクラウドをゴールにしている」わけではありません。多くの方がマルチクラウドというとこのようなイメージ

    f:id:swx-ooishi:20210914202407p:plain

    を持たれるようですが、これはAWS以外のベンダーによる「AWS以外のクラウドも使ってくれ、というマーケティングメッセージ」と認識した方が正確です。
実際の現場で起きているマルチクラウドのニーズはこのようなイメージで、

    f:id:swx-ooishi:20210914202444p:plain


    あくまでビジネス目標に対して必要なサービスを組み合わせていった結果、「たまたまAWSGCPを組み合わせる形になった」というのが本当のところです。

    クラウドがどれだけ優れた道具であっても、ITは本質的に「手段」です。皆さまが達成したいビジネス目標やお客様へのサービス向上のために、手段として有効に活用頂ければと思います!