大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

2021年7月版 クラウド業界アップデート 〜(ウマ娘は動かなくても)本命のWindows 365登場〜

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こんにちは、大石です。

今月も忙しいビジネスパーソンの皆さまに向けて、先月(2021年7月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

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2021年7月のクラウド関連トップニュース 〜Microsoftが仮想デスクトップサービス Windows 365を発表

7月に発表され、8月2日には実際に利用できるようになっていましたので、早速私も使ってみました。

実際の使用感は動画でご確認いただきたいと思いますが、さすがにMS謹製だけあって快適です。利用者側のネットワーク環境にもよりますが、ネットワークさえよければ端末のスペックに関わらずどこからでも自分のWindows環境にアクセスできるのはかなり便利です。

これまで仮想デスクトップサービスを利用する場合、比較的大規模な環境でAzure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)を用いるケースは多く見受けられましたが、転送量やストレージによって料金が変動したり、仮想マシンのサイズ変更が若干難しいなどの制約もあって大規模導入が中心だったように見受けられます。それに対してWindows 365では、テンプレートから選ぶだけで簡単に仮想マシンを起動でき、料金もわかりやすいため、中小規模での導入に最適化されている印象です。

ブラウザ(Chrome)でもそれなりに快適に動作しますが、やはりRemote Desktopアプリの方が快適です。なお、私の環境(M1 iMac)でRDP接続を選択するとなぜか.rdpwという拡張子でRDPファイルがダウンロードされますが、そのままでは開けなかったので、拡張子を.rdpにリネームしたところ接続することができました(ご利用は自己責任でお願いします)。

大注目のW365ですが、残念な点を2つ。

  • 8/6現在、無料提供枠が売り切れてしまったとのことで無償トライアルはできませんが、また復活の予定とのこと。ご興味のある方はこちらからお試しになることをお奨めします!
  • ウマ娘は動きません!GPUがないので当たり前ですが)「これでどこでも育成可能」と期待されていた方は、Windows 11のAndroidアプリ対応を待ちましょう

注目AWSトピックス

  • JEDIプロジェクトがキャンセルに。AWSとAzureの痛み分けか?
    以前よりクラウド界隈で話題になっていた、1兆円とも言われる巨額を投じて米国防総省が実行しようとしていたクラウド移行プロジェクト「JEDI」が、数年にわたる訴訟合戦の末に最終的にはキャンセルされることになりました。国防総省は新たにJWCCというマルチベンダー型のプロジェクトをスタートし、これはAWSMicrosoftの両社に提案を求めていると報道されており、時勢に従った判断になったように思われます。
  • AWSの決算が発表に
    2Qの売上は1兆6,300億円・前年同期比で37%成長とのことで、この規模に至っても30%を超える成長を続けていることが驚きをもって迎えられているようです。7月からはAmazon.comのトップがAWS生みの親であるAndy Jassy氏に替わることもあり、よい置き土産ができたのではないでしょうか?

その他クラウド関連ニュース

  • Googleが国内でもモバイル決済サービスを開始へ
    Google社が日本国内でpringという資金移動を手がけるメタップス傘下のベンチャーを買収し、国内で資金移動業に参入すると報じられました。既にApple Cardの発行を手がけるゴールドマン・サックスが国内で銀行免許を取得し「Apple Cardの来日か?」と囁かれていたり、来年にはLINE PayとPayPayの統合が予定されていたりと、モバイル決済が非常にホットな市場になってきました。

    市場シェアはPayPayが取り切ると思いますが、個人的にはApple Cardを使ってみたいところです。
  • Slackが音声のみのコミュニケーション機能「Huddle」をリリース
    Clubhouseの登場などで注目を浴びる音声によるコミュニケーションですが、Slackでも音声で「ちょっとした会話」を実現する「Huddle」という機能がリリースされました。カメラを付けなくてよいので、家からテレワークをしている人などでも気楽に雑談や「ちょっといい?」を実現できる、ユニークなソリューションになっています。
    裏側はAmazon Chimeのテクノロジーを使っているとのことで、2020年8月に発表されたSlackとAWSとの協業が具体化したものと見られています。当社でも試用中ですので、追ってレポートする予定です。

先月のサーバーワークス関連ニュース

  • ガートナー社 「パブリック・クラウド・インフラストラクチャの実装∕運⽤サービスのマーケット・ガイド」に掲載
    米調査会社のガートナーは、CIOに対する影響力の高いリサーチ/コンサルティング会社として知られていますが、同社のレポートに当社も昨年に引き続き掲載されることになりました。特に米国では「ガートナーのレポートに載らなければ調達の候補に入らない」と言われるほど影響力のあるもので、私どもとしても光栄に感じつつ、より高い評価を得られるようサービスの内容・質の向上に努めて参ります。
  • エクレクトと協業しAWSとZendeskによる次世代型コンタクトセンターサービスを拡充
    エクレクト社は、コンタクトセンターを提供するためのクラウドサービスを提供する、アジアNo.1のZenDesk専業インテグレーターです。同社と協業することで、複数チャネル(主にZenDeskとAmazon Connectを想定)による顧客接点の運用効率化からコスト削減まで一括提案できる体制を整えます。
    コロナ禍で、これまでのような三密型コールセンターの継続が難しくなる中、同社との協業で新しい形のコンタクトセンターを国内に拡げていきたいと思います。

まとめ

  • Windows 365の登場でようやく仮想デスクトップが本格化か
    W365にはMicrosoft謹製の強みが、またAWSのWorkSpacesも安定性やGPU性能などに一日の長があり、PCの入手が予定通り進まない状況が継続しそうな中、企業のクライアント戦略がどう変化するのか注目されます(ちなみに著者はSun Ray 170時代からの筋金入りのシンクライアント信者です)
  • 社内SNSでも「ちょっといい?」
    テレワークの継続によってあたらしい働き方が模索される中、Huddleの様な「社内での音声によるちょっとした会話」が、コミュニケーションの隙間を埋める存在になり得るのか期待されます。

デルタ株の蔓延で、これまでで最も酷い勢いで感染が拡がりそうな状況です。
ITに携わる方であれば比較的テレワークを継続しやすいものと思いますので、医療従事者の皆さまやエッセンシャルワーカーの方に感謝しつつ、クラウドを効果的に用いて「物理的な接触がなくても、事業は続けられる」ことを実証して参りましょう!