大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

re:Invent と Dreamforce の両方に行ってきたまとめ

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こんにちは、大石です。

先月の10日から23日にかけて、AWSが主催するイベント「re:Invent」とSalesforce.comが主催する「Dreamforce」が開催されました。それぞれ「行ってきた」「発表されたサービス」のレポートは各処で掲載されていますが、

・両方行ってきた
・じゃあ私たちはどうすればいいのか

という観点でのまとめは見当たりませんでしたので、出張報告を兼ねて皆さまにレポートさせて頂きたいと思います。


行ってみた

re:Inventは昨年に続き2回目の参加です。「ラスベガス」という場所を聞くと誤解しそうですが、「ガチンコで勉強する」ためのカンファレンスです。4日間、下手な大学生より勉強することになります。
Dreamforceは初めての参加でした。Salesforceのトップベンダー、テラスカイとの資本業務提携を受け、Salesforceの世界を知っておこうという目的で参加しましたが、本当に衝撃を受けました。「IT系カンファレンスでここまで盛り上がるのか」と。

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展示会比較表

それぞれの展示会を表で纏めてみました。

  re:Invent Dreamforce
主催者 AWS(Amazon Web Services) Salesforce.com
場所 ラスベガス サンフランシスコ
回数 2回目 10回目
参加者数 9,000人 130,000人
日本人参加者数 240人

300人〜1,000人(*)

コンテンツ スクール型セッション キーノート!
ヒューイ・ルイス
マリッサ・メイヤー
シェリル・サンドバーグ
Green Day(!)

(*)Dreamforceの日本人参加者数は300名とか1000名とか、いろいろな情報を聞いています。どなたか情報をお持ちの方は教えて頂ければ幸いです!

re:Inventの印象

・去年このイベントが始まったときは「AWSらしくない」と思いましたが、コンテンツはディベロッパー向けになっており、ディベロッパーを大切にする文化を大切にしていると感じました
抑制は効いているけど、ちゃんとインパクトは与える。「マーケティングコストのレバレッジを利かせよう」という意図を感じました

Dreamforceの印象

マーケティングコストは度外視?して、「インパクトを最大化しよう」という意図を感じました
”Dream” forceというくらいですから、とにかくユーザーにも、ディベロッパーにも、そしてベンダーにも「夢を与えよう」という強い意志を感じました。事例も「ただ導入した」ではなく、わざわざユーザーに「What's next?」と聞いたりして、「Salesforceで問題が解決したことは分かった。じゃあどこに向かうんだい?ビジョンは?」という具合に、必ず「Salesforceの先」を見せることを徹底してやっていました。
キーノートの時に「10月16日ってなんの日か知ってるかい?」とスピーカーが聞いたりしていました。正解は、SalesforceのパートナーVeevaが上場した日なのですが、(普段話題になることが少ない)パートナーのIPOをわざわざみんなでお祝いするくらい、「ベンダーにも夢を与える」ことを徹底していました


共通していること

2社とも、かなり似通ったメッセージを発していたことに驚きました。よく「最近の企業経営は、情報の伝達速度が速すぎるので戦略で差がつけられない。決定的に差が付くのは戦術レベルだ」という話を聞きますが、それを裏付けるかのように同じ未来について語っていました。特に共通していると感じたメッセージが以下です。

実際にこのキーワードを元に発表されたサービスや、行われたイベントが以下の通りです。

  re:Invent Dreamforce
ビッグデータ
(M2M, IoT)
Amazon Kinesis Salesforce 1, Heroku 1
モバイル Amazon AppStream Salesforce 1
マリッサ・メイヤーのキーノート
ワークスタイル Amazon Workspaces Salesforce A
シェリル・サンドバーグのキーノート

ワークスタイルについては、AWSがWorkspacesというデスクトップのサービスで「物理的な制約から解放されよう」というアプローチをとっているのに対して、Salesforceシェリル・サンドバーグのようなオピニオン・リーダーを引っ張り出してきて「性的差別から解放されよう」というメッセージを発していたことが非常に印象的でした。やり方の差はあれ、どちらからも「(クラウドによって)制約を排除し、より生産的な、人間的な仕事をしよう」という気持ちを感じることができました。

そして、とても印象的だったのが「イノベーション」というキーワードを両社とも何度となく使っていたことです。
クラウドによって、トライアンドエラーのコストが大幅に減ることでいろいろな取り組みがスピーディーにできるようになり、イノベーションに繋がるというメッセージを何度も発していました。

 

全く違っていること

エコシステムの設計

2社とも「エコシステムが大切だ」と言っていますが、その設計は大きく違うように感じました。
AWSは「安くだす」ことでユーザーベースを拡大し、投資を増やすことでさらに安くするというモデルです。それに対してSalesforceのエコシステムは「マーケティング」が始点となり、より高くても買うユーザーを増やしさらにマーケティングに投下するというイメージです。これはどちらが優れているとか好ましいという話では無く、「そういう哲学だ」ということを理解する必要があると強く感じました。
わかりやすい例を挙げると、Dreamforceではハッカソンの優勝者に1億円を出すコンテストを開催していました。AWSがやっているGame Dayなどでも分かるように、AWSに熱狂しているユーザーはお金よりも「名誉」をかけて戦っている感じがしますが、Salesforceの方がよりビジネスにスポットライトが当たっている様に感じられます。

AWSのエコシステムですが、実はAWSのパートナーにとっては辛い現実を意味するように思われます。ほおっておいたら売上が下がる、利益が下がることを意味するからです。
ですが、私たちにとってはこのサイクルは好ましい。厳しいエコシステムには強いコミットが求められ、より高い付加価値が求められますが、そうした環境に身を置くことでより強い組織になり、よりよいサービスを提供できるようになりますし、何よりそれができる組織には多くのユーザー獲得という果実がもたらされるからです。まさに「疾風に勁草を知る」ですね。

まとめ

・re:InventもDreamforceも、世界を代表するクラウドプロバイダーにふさわしい素晴らしいイベントでした。両方に参加して改めて確信しましたが、AWSも、Salesforceも、世界のクラウドをリードするポジションが相当の期間継続しそうです。どうやってこのプラットフォーム上でビジネスを展開するか、に焦点が絞られていると改めて感じました。

AWSもしくはSalesforceのビジネスを行う立場の人間としては、エコシステムの違いを理解する必要がありそうです。この違いが、提供者との付き合い方、営業のやり方、マーケティングのやり方、エンジニアトレーニングのやり方など、全てに影響を及ぼしていそうです。プラットフォーマーのやり方を学び、吸収すべき所は吸収して、会社対会社のプロトコルを合わせるようにした方が、関係の構築・ビジネスの円滑な進め方などあらゆる面でメリットを享受できると思います。

・これだけのエンジニア、人員、関心がクラウドに集中していることから考えると、もはやオンプレミスの世界で起きるイノベーションは限定されたものになりそうです(AWSのエンジニア視点では、SDNですら「既にVPCで実現できているモノで、車輪の再発明」に見えます)。ITに携わる方であれば須く「クラウドを基本にキャリアを再構築する」道を選択しないと、これから先かなり厳しいのではないかと危惧します。

・非常に残念ですが、去年と今年とで、「日米間の差が開いた」印象を受けました(極めて主観的であることをお断りしておきます)。米国で、膨大な数の、クラウドを使うことによるサクセスストーリーを目の当たりにし、国を挙げてクラウド分野に投資をしていかないと、IT業界だけではなく産業全体の競争力に悪影響を及ぼしかねないと懸念しています。私たちも最大限努力して、AWSがもたらすメリットを丁寧に理解していただき、より大くの企業様がクラウドイノベーションを体現されるお手伝いを加速していきたいという気持ちを新たにしました。

 

 

最後に、、

 

2週間米国に居て痛感したことは、、、

 

 

ウォシュレット万歳!!!