大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

Cloudworks を開始しました

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こんにちは、大石です。

本日プレス向けにリリースさせて頂きましたが、本日よりAmazon EC2を利用したクラウドコンピューティングによるホスティングサービス”Cloudworks”サービスを開始いたしました。

クラウドコンピューティングとは「インターネットの先にあるサーバーに処理をしてもらうシステム形態を指す言葉」とITProで説明されています。昔はネットワークが遅かったので、サーバーを社内に置く必要に迫られていたわけですが、ブロードバンドの普及によって必ずしもサーバーが社内に無くても良いという環境が整うことで、雲(インターネット)の向こう側にあるサーバーに処理をしてもらう、という構成が現実のものとなり、にわかに注目を浴びるようになってきたものです。

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(もう一つ、クラウド発展の技術的な要因として仮想化がありますが、ここでは割愛させていただきます)

クラウドコンピューティングによるメリットは、「規模の経済による利益」です。

わかりやすくするために、電気の話で例えてみました。

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交流による送電システムの発達前、工場など電気を必要とする場所には、小規模な発電施設がありました。

自分で必要な電気は自分で作る、という点では理にかなっていますが、小規模な発電所は効率が悪く、かつ「発電施設をメンテナンスする」という、本来の目的とは異なる負担が発生していました。

しかし、送電システムの発達により、大規模で効率の良い発電所から送電線によって「電力を必要な分だけ調達する」ということができるようになり、こうした問題が解決したわけです。

クラウドでも、これとほとんど同じことが起きています。

クラウドコンピューティングが生まれる前は、各企業が、それぞれサーバールームと称して冷房施設や加重床をつくりこんだり、データセンターと契約したりして場所を確保しつつ、そこにルーターやスイッチ、サーバーやストレージなど、ほとんどの企業が同じようなハードを、同じように購入して、同じように保守費用を払い、同じようにメンテナンスする、という非効率が生まれていました。

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しかし、ブロードバンドの発達によりサーバーの処理結果だけをネットワーク越しに受け取る、ということが現実的に可能になり、大規模なクラウド型データセンターに処理を任せ、企業はその結果だけをネットワーク経由で受け取る、という概念が現実のものになったのです。

実際にクラウドコンピューティングのサービスを提供している 事業者としては、GoogleSalesForceといった会社が有名ですが、今回私たちがCloudworksのインフラとして選択したのは、この2社ではなく、EC大手のAmazonです。

「なぜ書店のAmazonがこんなサービスをやっているのか?」という問いに対して私が正確な答えを持っているわけではありませんが、恐らくこうでしょう、ということは言えます。

Amazonは巨大なECを実現するために、大量のサーバーと大規模なデータセンターを持っている。これらの資産を有効に利用して、サービスを提供する機会を作った

Amazonは、9,000万人という膨大なユーザーのクレジットカード番号を預かる強固なセキュリティインフラを持っている。こうしたインフラを利用することで、クラウドコンピューティングサービスの提供時にもっとも懸念されるであろう「セキュリティに対する懸念」を払拭することが出来る(ご参考

いずれにせよ、Amazonはこうした自社の強固なインフラを期間貸しするというサービスを提供しており、それによって(今までは夢物語だった)以下の様なことが実現できる目処が立っています。

・負荷状況の読めないサイトの運用

これまでのシステム開発は「ピーク時にあわせて設計する」のが常識でした。

ところが、Amazonのサービスでは動的にサーバー数を増やしたり減らしたりといったことができるので、そもそもピークの設計をしなくて良くなるのです!最初はサーバー1台でスタートし、負荷が高まるときだけサーバーを10台にする、といったことが実現できるようになります。負荷試験なんかもいらなくなりますね。

・大規模ストレージの利用

Amazonはストレージが安いんです!2TBクラスの企業向けストレージとなると5百万~というのが相場ですが、Amazon S3では2TB、1ヶ月200GBのデータ転送を含めてざっと4万円/月。

これまで大規模なストレージがくめなくて諦めていたビジネスを実現したり、クラウドを利用したBCPの実装なども実現できそうです。

上述の通り、非常にメリットの大きいクラウドコンピューティングですが、私たちは、全てのコンピューターがクラウドになるとは思っていません。しばらくの間は、データセンターに自社サーバーを設置するトラディショナルなネットワーク環境と、クラウドを使ったオンデマンドのネットワーク環境が混在するものと思っています。

特に国内ではセキュリティに対する懸念から(この懸念には若干の誤解も含まれているようですが)、それほどドラスティックにクラウドへの移行が進むとは考えていません。

ですが、これから立ち上げる新規システムや、ストレージが大量に必要なサービス、負荷状況の高低が激しいシステムなど、クラウド環境に向くシステムから徐々に移行が始まり、10年くらいの時間をかけて公共・金融・インフラを除くほとんどの企業が、何らかの形でクラウドコンピューティングを利用することになると考えています。

そうした時代の到来に先駆け、少しでもクラウドコンピューティングというものを国内企業のみなさまに知っておいて頂きたい。クラウドを活用して、競争力のある企業へ飛躍されるお手伝いをさせて頂きたい。そんな想いから、まずは「Amazonクラウドを日本の企業ユーザーが使ってみることができる」環境をご提供することにしたものです。

今後は「管理コンソール」PHP開発者向けパッケージ」の2つを、今秋を目処にご提供する予定です。

管理コンソールを使うと、ユーザー企業のご担当者様がログインして、直接仮想マシンの電源をOn/Offしたり、当社が用意する仮想マシンを起動することができるようになります。

仮想マシンのイメージは、いわゆるLAMPスタック(Linux, Apache, MySQL, PHP)にCakePHPsymfonyといったトレンディーなフレームワークをプリインストールした全部入りモデルや、Apacheだけの最小モデルなど、様々なラインアップを揃えていく予定です。また、仮想マシンプロプライエタリなアプリケーションをインストールした「バーチャルアプライアンス」もご提供する予定です。

仮想マシンはご要望にあわせて作っていきたいと思っておりますので、ぜひ sales@serverworks.co.jp までご遠慮なくご要望をお送りください。

PHP開発者向けパッケージですが、現時点では詳細はヒミツですw

ですが、開発者の方であれば「こんなのが欲しかった!!」と必ずおっしゃって頂けるようなサービスにする予定ですので、ぜひご期待ください。