こんにちは、大石です。
今月も忙しいビジネスマン、ビジネスウーマンの皆さまに向けて、先月(2021年3月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!
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2021年3月のクラウド関連トップニュース 〜LINEの情報が中国からアクセス可能に〜
- 先月最もインパクトのあったニュースにはこちらを取り上げました。残念ながらLINEの個人情報が中国の事業者からアクセス可能な状態になっており、実際に30回以上のアクセスがあっただけでなく、ユーザーのコンテンツも明示のないまま韓国のサーバーに保管されていたことなどが問題視されています。実際に政府でも機微な情報の取り扱いは一時中止するなど波紋が拡がっています。
- 中国政府のインテリジェンスによる脅威が現実のものとして広く認識されるようになったのはこの2−3年の話ですから、おそらくそれよりも前から進めていたこの取り組みが問題視されるのは、LINEさんにとって「気の毒」と言えなくもありませんが、一方でほぼ日本国内のインフラにまで育った状況にあって、中国との関係性を考慮したオペレーションにしていなかったことについては、無理解の誹りを受けても致し方ないでしょう。
- 実際にLINEの情報が中国政府に渡ったかどうかは今後の調査・報告を待ちたいと思いますが、少なくとも私たちは「中国が国益の為に、あらゆる手段を講じてこうした情報収集に向けたチャレンジをしている」ことを理解し、リスクとリターンを十分に勘案した上で、製品選定、オペレーションや協業体制の構築を検討する必要があると考えます。
注目AWSトピックス
- AWSのトップに現Tableau CEOのAdam Selipsky氏が指名
AWSの現CEOであるAndy Jassy氏がAmazon.comのトップになることから後任人事が注目されていましたが、なんと元AWSで現TableauのCEOであるAdam SelipskyさんがAWSに復帰しCEOを務めることが発表されました!古くからAWSに携わっている方であれば、日本のパートナーミーティングなどにも出席されていたので「懐かしい」という感覚を抱くかたもいらっしゃるのではないでしょうか?AWSのこともクラウド業界のことも十分に理解のあるAdamさんの復帰を、まずは歓迎したいと思います! - 大阪リージョンが正式オープン
ついに大阪が正式なリージョンとして立ち上がりました!これまでも制約のある使い方をすることはできましたが、今後は東京リージョンと同様3つのAZ(アベイラビリティゾーン)を有する通常のリージョンとして利用可能になります。
東京・大阪間は400kmほど離れていますので、金融機関の方など内規で「災害対策拠点は250km以上離れていること」が上限になっていた組織にも対応できるようになります。金融機関・公的機関などでの活用が進むことが期待されます。 - FISが正式サービスイン
過去何回か、私が興奮気味にお伝えしてきたAWSの「障害をシミュレーションできるサービス」であるFIS(Fault Injection Simulator)がいよいよサービスインしました!
まだ対応しているサービスがEC2やRDSなど限定的なため、実用までにはもう少し時間がかかりそうですが、多くの方が悩まれているマネージドサービスの障害試験ができるようになれば、利用の幅は大きく拡がりそうです(LambdaとSQSの対応を心待ちにしています!!)
その他クラウド関連ニュース
- マイクロソフト、無料RPA「Power Automate Desktop」をWindows 10ユーザーに提供
AWS以外のクラウド関連でもっとも影響があったニュースはこちらではないでしょうか?まさかのMicrosoftが無料でRPAを出してきたということで「プラットフォーマーのエコシステム潰しがここまで来たか」という感想をお持ちになった方も多くいらっしゃったのではないかと思います。このような無償バンドル戦略はNetscape対Internet Explorerの対決を彷彿とさせるものであり、B2B市場でこの戦略がどこまで許容されるのかは予断を許しませんが、一方でRPAの裾野が広がるという意味ではユーザーにとって歓迎すべき一歩とも思われます。 - ISMAP(イスマップ)クラウドサービスリストが公開
ISMAPという、内閣サイバーセキュリティセンター・情報通信技術(IT)総合戦略室・総務省・経済産業省が運営する、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度があるのですが、これに適合するクラウドサービスのリスト第一弾が発表になりました。AWSやGCPはリストされている一方でAzureがリストに掲載されていませんが、Microsoftさんから「申請中である旨」が表明されており、掲載は時間の問題と思われます。こうした取り組みで、いよいよクラウドを用いたデジタル政府も実現に向けた歩みが加速しそうです。
先月のサーバーワークス関連ニュース
- サーバーワークス、内製化支援推進AWSパートナーに
国内の10社と協同で、AWSが推進する「内製化支援推進AWSパートナー」への取り組みを表明しました。
DX推進の為に「内製化」が標榜されるケースが増えておりますが、当然私たちもお客様のそうしたニーズを理解した上で、AWSを用いた内製化の支援を推進しております(AGC様の事例|当社のサービス)
当社のスタンスとして、AWSの中でも「インフラ領域のような非競争領域は当社の様な専門会社へのアウトソースを、競争優位性を確保すべき領域は内製化」をオススメしております。
まとめ
- ITのカントリーリスクは「実害」以前に「可能性を排除する」というステージに
こちらのブログでも何度もお伝えしているように、IT製品やITプロセスにおけるカントリーリスクは、既に「実害があるかどうか」ではなく「可能性の有無」という段階にレベルがあがっています。大変残念ではありますが、イデオロギーの対立というものはそういうものだと歴史は教えています(さながら1942年に、アメリカ在住の日系人が強制収容されたようなものでしょうか・・)。
本稿ではイデオロギーの是非を論じるつもりはなく、あくまで「IT戦略立案のお手伝い」を目指しています。その点から言えば、この事例は「こうしたリスクが自社にも起こりえる」ことを教えてくれる良いケースになったと思います。 - モード1でもクラウドを利用する環境が急速に充実
ISMAPによるクラウドのお墨付き、AWSによる大阪リージョンの拡充、そしてFISによる「クラウドの障害試験」など、コロナ禍でクラウドの重要性が高まる中クラウドを公共・金融などこれまで本格的な利用が進んでいなかった領域でも利用できる環境が急速に整ってきました。
給付金の支給でも、諸外国に比べIT化の遅れが支給の遅れに直結してしまい、改めてIT化の重要性が再認識されました。ISMAPの様な取り組みが、こうした遅れの挽回に繋がることを期待しています。
いよいよ4月になって、皆さまの会社でも新しい期に移られたり、新入社員を迎えられた方も多くいらっしゃるのではないかと思います。若手に「IT業界は楽しい。入って良かった」と思って貰えるよう、クラウドなどの新しい取り組みを進めて、一緒に夢のある職場を作って参りましょう!