大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

2021年1月版 クラウド業界アップデート 「祭りだ!乗っとけClubhouse!」

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こんにちは、大石です。

先月に引き続きまして、忙しいビジネスマン、ビジネスウーマンの皆さまに向けて、先月のクラウド関連ニュースをさくっと10分でキャッチアップできるように、まとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

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2021年1月のクラウド関連トップニュース 〜話題のSNS clubhouse(クラブハウス)が日本に上陸!〜

1月のビッグニュースはなんといってもClubhouseの上陸でしょう!全く新しい音声SNSの新星との呼び声が高く、中毒者が続出中です。かくいう私もかなりの時間を費やしてしまっており、そのせいでこのブログの執筆が遅るなど各処に迷惑をかけています。申し訳ありません・・

そんなClubhouseがこれまでのSNSと違うポイントを簡単に纏めると以下の通りです。

ちがうところ
  • 情報を残さない揮発性
    これまでのSNSは「テキストや画像で情報を残すことで、再利用したり検索されやすくする」アプローチが一般的でした。ところがClubhouseでは会話の内容は保存されず、録音したり内容を書き起こししたりすることも規約で禁止されています。これによって発言のハードルが下がり、気軽なおしゃべりからセンシティブな話題まで、幅広い話題が取り扱われるようになっています
  • 限定的な双方向性
    Clubhouseでの会話は「room」と呼ばれる部屋の中で行われますが、この中でも「スピーカー」と「オーディエンス」に分かれており、オーディエンスは基本的にスピーカー同士の会話を聞いているだけです。コメントしたり何か意見を述べたりすることもできません(例外的に手を挙げて発言を求めることができますが、それを認めるかどうかはモデレーターとよばれる部屋の管理者に一任されます)。今までのSNSですとリアルタイムにコメントができたり「いいね」などで評価するという流れが一般的でしたが、Clubhouseではスピーカーとオーディエンスの関係を敢えて一方通行にすることで「評価やフィードバックを気にせずに、スピーカーが言いたいことを言う」という環境作りに成功しています。最近はYouTubeでも「高評価や閲覧数といった注目を集めたくて、過激な行動を取る」などの行為が問題視されていますが、Clubhouseではそうした評価を気にすること無く気軽に会話できることで、より面白いトークを引き出すことに一役買っています
  • できることが少ない
    これまでのSNSというと、文字による情報の共有だけで無く絵文字や写真、動画にメッセンジャーと「どんどん機能を追加していく」というスタイルでしたが、Clubhouseではかなり意識してできることを減らしているようです。機能の追加で複雑化したり、それによって得られる個人情報をSNS事業者が利用することで利益を上げている状況に反発が強まりつつある中、「機能が少ない」ことが「事業者に対して提供する情報の少なさ」にも直結しており、これがこれまでのSNSとの差別化につながっています
流行った理由
  • よく考えられたUI/UXと音声テクノロジー
    アプリが良く出来ていて、機能を絞ることで分かりやすくなっています(「引き算のUI」と呼ばれています)。このため初めての方でも10-20分も触ればなんとなく使い方が分かり、参加ハードルが低くなっています。
    更にテクノロジー面でも優位性があり、ZoomなどのWeb会議と異なり音声が被っても綺麗に聞こえることが、自然なコミュニケーションの成立に一役買っています(中国Agora社のテクノロジーを使っていると報道されています)
  • 標準で2人しか呼べない「招待制」
    Clubhouseへの参加は「参加者からのSMSによる招待」が必要で、しかも標準で2人しか招待できません。今風に言うと、基本再生算数が2ということです。これによって「流行に乗り遅れたくない」という心理に火がつき、早期の大量ユーザー獲得につながったようです(現在では、一定の活動を続けると招待枠が増えることが知られており、過熱感は一巡したようです)
  • 芸能人、セレブが初期から参入
    立ち上げのかなり初期から有名人がroomを作っておしゃべりをしています(落合陽一さんやこじはる、フワちゃん、フェンシングの太田雄貴さんやYouTuberのヒカルさん等)。有名人の突っ込んだ話や、逆にユルい話がきけるという面白さもあって、聞く専門(Clubhouseではゴーストと呼びます)でも十分に楽しめるのものになっています。
    これまでのSNSは「情報を発信すると、それに対する反応があってコミュニケーションが成立する」という順序だったので、発信が苦手な方には大きなハードルになっていましたが、自分のお気に入りの芸能人、有名人や友達・知り合いのおしゃべりを聞くだけでも十分に楽しめるという気軽さが、人気の理由の一つになっています
考えられる利用例
  • 製品のプレマーケティング
    これまでメーカーが消費者と直接コミュニケーションする方法は極めて限定的でしたが、例えば「今度YouTuber向けのカメラを作ろうと思っているんだけど意見をきかせて欲しい」といったタイトルでroomを作れば、一家言ある人たちが集まってきていろいろと意見を言ったりしてくれます。そうした活動を通じて「潜在的なニーズがありそうかどうか」といった感触を事前に掴むことができるようになります
  • 採用
    企業の採用活動にも使えそうです。これまでの採用は、企業側の「よい会社に見せよう」という努力と求職者側の「よいところを見せたい」という相互の努力によって成り立っていましたが、これはお互いに期待値を上げてしまい、いざ入社してみたら「こんなハズじゃなかった」という失望を生みかねません。Clubhouseの様に「本音で、カジュアルに話せる雰囲気」のある場であれば、企業も求職者も下手に期待値を上げることなく「自分にあっているか」という視点で活動ができるようになり、採用ミスマッチの防止が期待できそうです
  • 社外とのネットワーキング
    現在の使われ方などを見ていると、特定業務(人事やマーケティングなど)に関連するroomも多いようです。下手なセミナー等にでるよりもこうしたroomの方が勉強になりますし、またスピーカー同士の偶然の出会いも生まれやすいことから、ネットワーキングにも活用できそうです。特にコロナ禍で偶然の出会いが減っている中、社外とのネットワーキングによって会社に新しい風を持ち込む活動は重要度が増しそうです

Clubhouseの記事はあらゆるところで出ていますので詳細はそちらに譲るとして、私からの推薦はとにかく「やってみなはれ」です。

正直に申して、Clubhouseがそのまま生き残るかは分かりません。既にTwitterがSpacesという名称で似たような音声SNSのテストを始めているほか、facebookもこの流れを黙って見過ごすとも思えず、競争の激化は間違いありません。しかし、Clubhouseという音声SNSの新しいフォーマットは斬新かつ登場時点で非常に完成されており、相当長い間ネットで使われることになることは間違いありません。こうしたネットワークに後から参加して有利になることは何もなく、早く参入して早くネットワークを作った人が後々までその恩恵に浴することは、Twitterの津田さんやYouTubeのヒカキンさんなどが証明済みです。我々企業人としても早くこのネットワークに参加し、ビジネス機会を獲得することが最善手だと確信します!

その他の業界注目トピックス

  1. IntelのCEOにゲルシンガー氏が復帰
    このブログでもお伝えしているように、現在のIntelは技術面で競合に遅れを取っており「積極的にIntelを選ぶ理由がない」という状況に追いやられています。この状況を打破すべくCEOに伝説のエンジニア、ゲルシンガー氏が復帰することになりました。18歳でIntelに入り25歳で486プロセッサを作るなど、Intelを今のポジションにした立役者がCEOとして復帰することでIntelが苦境を脱することができるのか、大きな注目が集まります。
  2. Salesforceからデータ漏洩?実際は??
    楽天やPayPayで大量の個人情報漏洩があり、それに使われていたクラウドSalesforceだったと報道されました。これらはいずれも「クラウドのセキュリティが突破されたのではなく、利用者(ここでは楽天など)側の設定ミスが原因」だったと分かっています。同じ問題はAWSやAzure等でも起こりえるもので、対処としては ①利用するクラウドのセキュリティ機構について理解すること ②それらを意図通りに正しく設定すること ③それらが持続して機能するように、継続的かつタイムリーな調査を継続的に行うこと の3つが求められます。
  3. Alibaba Cloudが黒字化。世界3位に?
    Alibaba Cloudが2020年第4四半期に黒字化したと決算で発表されました。Gartner社のレポートを元に「IaaS市場でAWS, Microsoftに次いで世界3位になった」と報じられていますが、別な調査ではGCPの方が大きいとも報じられており、正確な比較は困難です。ただし3位のGCPでも年間の赤字額が5,900億円となっており、AWS vs Microsoft Azureの2強体制はしばらく続きそうな情勢です。

 

2021年1月のサーバーワークス関連ニュース

  1.  サーバーワークス、東証一部へ市場変更
    皆さまのお陰をもちまして、2021年1月15日をもって当社株式の上場市場が、東証マザーズから東証一部へ指定替えとなりました。今後も皆さまのご期待に沿えるよう、そしてよりよいサービスがご提供できるよう全力で事業に取り組んで参ります
    私からのメッセージはこちら
  2. 三越伊勢丹様との共同プレスリリース
    三越伊勢丹システム・ソリューションズ様、株式会社IM Digital Lab様とで「モード2開発基盤ガイドライン」を作成しました。特に歴史のある企業ほど必然的にレガシーなシステムが残ってしまいがちですが、そうしたシステムに対するアプローチと、現代求められている「顧客体験をアップグレードするためのIT基盤」とでは考え方、手法、アプローチなどが異なります。こうした前提に基づき共同で「モード2開発を最適化するためのエッセンス」を取りまとめたガイドを準備しました。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください

まとめ

  • Clubhouseでノリノリに!
    久しぶりに全く新しいSNS到来の予感です。人と人との物理的な接触の機会が制約をうけるなかで、偶然の出会いやセレブリティの話を直接聞けるなど、今までにない体験をすることができ私も非常に興奮しています。今後企業のマーケティング活動やコンサルティングサービスなど、様々な分野に適用範囲が拡がっていくと考えられるので、一度お試しになることを強く強く推薦します!
  • 内製化のワナ
    行き過ぎたITアウトソーシングの反動で、ITシステムの内製化が提唱されはじめていますが、Salesforceに限らずAWSもAzureも、現在のクラウドは自社で全てコントロールするには複雑に過ぎます。基本的な設定や設計、セキュリティの考え方といった基盤固めは、AWSならサーバーワークス、Salesforceならテラスカイといった専門的なベンダーに任せつつ、顧客に価値を提供する部分を自分たちで設計するといった適切な使い分けがベストでしょう
  • Intel復権なるか?伝説のゲルシンガー氏の手腕に期待
    このブログでもお伝えしているとおり、Intelの苦境は長い間続いてしまいそうな情勢です。ゲルシンガー氏が戻ってきたとしても、製造プロセスの改善などには複数年かかると見られており、どこまで立て直しができるのか注目です。そしてIntelの設計・製造一体化が弱みになってしまったという事実は、システムでも製造でも「内製化すればよいというものではない」という示唆に富んでいるように思われます

コロナ禍は第三波が心配されていますが、クラウドを活用することで、こうした状況でもビジネスを継続し、成長できる環境を作ることはできると思います。この情報がそのための一助になれば幸いです!