大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

2021年2月版 クラウド業界アップデート 「Amazon.comのCEOにAWSトップ、アンディ・ジャシー氏が就任!」

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こんにちは、大石です。

今月も忙しいビジネスマン、ビジネスウーマンの皆さまに向けて、先月(2021年2月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

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2021年2月のクラウド関連トップニュース 〜Amazon.comのCEOに、AWSのトップであるアンディ・ジャシー氏が就任〜

  • 2月のビッグニュースはなんといってもこちらでしょう!ついにAWSのトップであるアンディ・ジャシー氏がAmazon.comのCEOに就任することが発表されました!
  • 当社の事例として、東日本大震災の際に「AWSを使って日本赤十字社のサイトをリカバリーし、その後義援金サイトも48時間で立ち上げた」というものがありますが、実はこの話にはウラがあります。当時AWSJの2号社員として在籍していた、現ソラコム社長の玉川さんに「日本赤十字社さんが困っているので、AWSの利用料を免除するなどして支えて欲しい」とお願いしたのです。すると玉川さんがジャシーさんに掛け合って「利用料については支援する。ただし、このことをマーケティングに使わないで欲しい」という条件を引き出してくれたのです。
    普通のビジネスマンの感覚であれば「事例として使うので、利用料については免除する」という回答をすると思うのですが、後から聞いた話ではそうした火事場泥棒的な振る舞いで知名度を高めるのではなく、あくまでサービスの質で社会に広めていくことが第一だという考えの下、このような条件を出されたと聞いて深い感銘を受けました。
  • 米国でもUberやWeWorkの事例から「会社や経営者の倫理観が欠如していれば、瞬間的な成長は実現できても、事業の継続的な成長は達成できない」という考えが浸透しつつあり、そうした倫理観(ethics)を大切にする流れが急速に広まっています。ジャシーさんは、事業を成長させることはもちろんのこと、上の事例から分かるように正しいethicsを持っているという点でも、Amazonの次のリーダーに相応しい人物だと思います。
  • ちなみに、私ももちろんジャシーさんから出された条件はよく理解していたので日赤さんの事例はしばらく公表していなかったのですが、逆に日赤さんから「復興には長い年月がかかる。震災の事例はちゃんと話して、サーバーワークスさんとしてちゃんと利益を出して、その利益を義援金や日赤の活動資金として寄付する流れを作って欲しい」と言われ、対外的に発表させて頂くように転換しました。
    後日AWSの日本オフィスでジャシーさんと直接お会いした際に、私からことの経緯をきちんとお話ししお詫びしたところ「ノープロブレムだ。AWSとしても懸念したようなことは起きていない。一緒にこれからも成長していこう」という力強いメッセージを頂きましたので、念のため申し添えておきます!

注目AWSトピックス

  1. AWS東京リージョンの一部AZで障害が発生
    2月20日の0時頃に東京リージョンの一部のAZ(アベイラビリティーゾーン)で障害が発生しました。今回も冷却システムのトラブルと発表されており、以前の障害との関連が懸念されます。
    今回の障害はEC2, EBSといったサービスに限定されており、AWSが推奨するMulti-AZとよばれる複数AZにまたがる構成の場合は影響を免れたようです。
    AWSといえども障害は必ず発生しますので、ベストプラクティスに基づいた設計が求められます。また、FISとよばれる「障害を擬似的に発生させるサービス」についても発表されていますので、リリースされ次第使い方などを含めご紹介して参ります。
  2. Amazon CloudFront を3割引きで利用可能となる Security Savings Bundle がリリース(当社の技術ブログ
    EC2にはSavings Plans(以下SPs)という名称の、事前にある程度の利用量をコミットすることで割引を受けられるという割引オプションがありますが、これのCloudFront版が登場しました。コロナ禍で「会社からITコストの削減を指示されている」という方は多いと思いますが、そうした方にとってもこうした「AWS調達オプション」は朗報なのではないかと思います。
    ※当社が提供しているAWSコスト最適化コンサルティングはこちら

その他クラウド関連ニュース

  1. グーグルクラウドは年間5900億円の赤字
    Forbesで報じられたこのニュースは「アマゾンのAWSに大敗」といういささか誇張気味のタイトルで報じられましたが、一方でこれは「GoogleGCPにそれだけの投資をしている」ということの証左でもあります。AmazonAWS事業単体での採算を開示するようになったのはサービス提供から何年も経ってからですし、本質的にクラウドビジネスの立ち上げには時間がかかるものですので、この時点での評価は早計でしょう。
  2. Epic Games、超リアルなデジタルヒューマン作成ツール「MetaHuman Creator」をクラウドで提供
    私が2月に最もエキサイトした新サービスはこちらです。リアルタイムにビデオカメラの映像を解析して、その動きに合わせて本物の人間そっくりのキャラクターを動かすことができるというものです。
    高校生の息子がEpicが提供しているツール(Unreal Engine)を使って趣味でゲーム開発をしているので、実際に動かすところを見せてもらったのですが、ほんの30分程度で準備して実際にグリグリ動く3Dキャラを見せつけられたときには本当に驚きました。
    3Dモデルにはよく言われる「不気味の壁」と呼ばれる現象があるのですが、この仕組みですと元々の動きが本物の人間なので、動きの自然さが3Dモデル特有の不気味さを取り払っており、写真で見る以上のリアルさを感じます。
    このレベルであれば、今後こうした3Dモデルに企業のイメージタレントをやらせたり、ファッションモデルにしてライブコマースに活用したりと、ビジネスでも活用できそうです。
    より本格的なバージョンが年内に発表予定とのことですので、続報は別途お伝えしたいと思います。
  3. 中国、話題のClubhouseを規制
    先月のCloudUpdateでもお伝えした音声SNS「Clubhouse」ですが、早速中国国内で規制がかかったようです。元々Agoraという中国のサービスを利用しており「やりとりされる情報は大丈夫なのか?」という懸念の声があがっていましたが、案の定ブロックされてしまった模様です。
    これだけなら未だよいのですが、より大きな問題として、情報そのものの漏洩よりも「Agoraを使い続けることで、中国国外のオーソリティの音声データが学習されてしまうのではないか?」というものがあります。まだまだClubhouseには落合陽一さんや古市憲寿さんをはじめ、芸能人や知識人とよばれる人が集まっていますので、こうした人々の音声データが効率的に収集され完全に模倣できるようになってしまうと、ディープフェイクを用いて「ウソのご意見番を作る」ことがより簡単になってしまうのではないか?とも懸念されます。
    いずれにしても、今後のClubhouseの対応が注目されます。

2021年2月のサーバーワークス関連ニュース

  1. リモートアクセス環境を迅速に整備できる「AWS Client VPN」のホワイトペーパーを大幅アップデート
    以前AWS Client VPNホワイトペーパーを当社のホームページで公開した際に非常に大きな反響をいただき、過去一番ダウンロードされたペーパーになったのですが、今回はそちらの大幅増補版となります。
    コロナ禍で会社のネットワークにVPN接続が必要になった方には「VPNルーターにアクセスが集中してしまい、まともに使えなかった」という方も多かった様です。AWS Client VPNを用いることで、こうした問題を回避できる可能性がありますので、今後もVPNを継続して利用されるご予定の方はご一読頂ければ幸いです。
  2. サーバーワークス、2021年版「働きがいのある会社」ランキングに4年連続で選出
    毎年、社員へのサーベイをかねてGrate Place to Workへ社内の意識調査を委託しておりますが、今年は中規模部門の部でランクインを果たすことができました。社内のカルチャーを「はたらきがい」に寄せるとブラック化し、「はたらきやすさ」に寄せると「ホワイト過ぎて成長が実感できない」というジレンマが発生します。このため、当社では「はたらきがいはたらきやすさの掛け算」を大切にしており、そうした方向性が社員からも納得感を得られているものと理解しております。
    (予断ですが、この調査結果を見ると「社員が経営陣をどう思っているか」などのスコアも如実に表れるので、経営に近い方ほどメンタルをやられると思います。鋼メンタルの方にのみオススメしたいと思います... )

まとめ

  • クラウド事業の立役者、ついに母屋の主人に
    AWSという素晴らしいサービスを立ち上げ4兆円ビジネスに仕立てた張本人がAmazonという母屋のトップになるという、特に私のように昔からAWSとビジネスを行っている人には感慨深いトップ交代劇となりました。
    Appleも天才と言われたスティーブ・ジョブズからティム・クックへ、Microsoftもサティア・ナデラに代わったことで更なる躍進を遂げています。Amazonも、アンディ・ジャシーという素晴らしいリーダーに恵まれたことで、更なる躍進が期待されます。
  • Clubhouse規制は他人事ではない。ITサービスの選定にカントリーリスクも考慮を
    先月の動画でも「Clubhouseは中国のサービスを使っていて、介入が懸念される」とお話ししましたが、残念ながら懸念は実際のものになってしまいました。中国では金盾によってClubhouseが事実上ブロックされ、日本でも「天安門のことを話していたらブロックされた」という人が出ています(ただし、関連性や真偽は全て不明。会話の内容とは関係のない、別な理由の可能性もあります)。
    私も何度もお伝えしているとおり、ITサービスの選定と米中の係争は無関係ではいられません。カントリーリスクを正しく認識し「取れるリスクと取れないリスクを判断した上で利用の可否を決める」姿勢がより強く求められます。

 

当社ではこの3月1日から新しい期に入りまして、新しい期のキックオフも全てリモートで行ったのですが、私も含め会社からの発表は事前に収録し、みんなで見ながらチャットで「ああだこうだ」言い合うというフォーマットにチャレンジしてみましたが、これが意外なほどうまく行きました。

どうしてもリモート発表だと機材トラブルなどで通常のイベントよりも遅延が発生しがちですが、全て事前に収録されているのでそうしたトラブルもなく、また言い間違いなどは事前に編集したり、撮り直したりということもできるので、聞く方としても質の高い話を効率よく聞けて良かったようです。

これで当社も「全社員YouTuber計画」が一歩前に進みました!
4月にキックオフという会社も多いと思いますので、当社の取り組みをお聞きになりたいという方がいらっしゃいましたらご遠慮なくお問い合わせください!