大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

2020年9月版 クラウド業界アップデート

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こんにちは、大石です。

先月に引き続きまして、クラウド業界のアップデートをまとめてお届けしたいと思います。ぜひクラウド業界についてキャッチアップしたり、様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとしてご活用下さい!

(こちらの記事の内容は、YouTubeに解説動画があります。こちらも是非ご覧下さい)

2020年9月のクラウド関連トピック

  1. TikTokの売却が大荒れ
    米国での事業継続に期限を切られ、Microsoft陣営が買収するものという観測もありましたが、現時点ではOracle/Wallmart陣営がTikTokの米国事業を買収するという流れに。しかし中国政府は難色を示していると言われ最終決着まではまだ時間がかかりそうです。いずれにしてもこの問題、これまでITサービスは中国からの一方通行(中国のサービスは中国本土、海外両方にアクセスできのに対して、中国外のサービスは中国にアクセスできない)であったという問題に米国が明確にNoを示した形になりました。TikTok以外にも今後様々なサービスが同様の措置にあうものと見られ、残念ながらITサービスを利用する上での新しいリスクが顕在化しました。
  2. ARMがNvidiaに売却
    ソフトバンク保有していたARMがGPU最大手のNvidiaに約400億ドルで売却されることになりました。ARMはCPUの設計図を各社にライセンスするというビジネス形態のため、自社でチップを製造もしているNvidiaにARMが売却された後も、同様のライセンスビジネスが破綻なく継続できるのかが注目されます。
  3. スマホ決済口座による不正が明るみに。eKYCに注目
    ドコモ口座を狙った不正な預金引き出し犯罪が発覚。ドコモ口座に対する銀行口座の紐付け(にあった一部セキュリティ的な甘さ)が狙われた格好だが、現時点で手口の詳細は不明。いずれにしても口座振替を行うためには正確な本人確認が欠かせず、そのためにはeKYC(electronic Know Your Customer)という仕組みの実装が不可欠に。はからずも、先月ご案内した AWS Fraud Detectorの様な仕組みがあれば防げた(かもしれない)事件となりました。


注目AWSトピックス

  1. AWS Summit Tokyo 2020 がオンラインで開催
    コロナ禍のあおりで物理的な開催は中止となりましたが、代わりに9月8日〜30日の日程でオンラインでの開催となりました。物理的な開催となれば相当な人出が予想されましたが、オンラインですと在宅やオフィスに居ながら快適に視聴できるので、これはこれで情報収集の手段としては効率的だったのではないかと思います。
  2. AWS Marketplaceが日本企業にも開放
    待望のAWS Marketplaceが日本企業にも開放されました!(これまでは米国内の銀行口座が必要で、Marketplaceへの出展はかなりのハードルでした)
    国内のパッケージベンダーさんにとっては、新たな販路拡大につながることが期待されます。また、ユーザー企業にとっても、これまでアプリケーションのインストールや設定にそれなりの労力がかかっていたものが、AWS環境限定とはいえワンクリックで実装できるようになりますので、アプリのテストやインストールにかかる手間を大幅に削減できる可能性があります。
  3. AWS Graviton2プロセッサを搭載した新しい Amazon EC2 T4g インスタンスがリリース
    ARMベースのAWS謹製CPUであるGraviton2を用いたEC2インスタンスに、新しいT4gインスタンスが追加されました。今年の5月からM6gインスタンスが使えるようになり、だいぶ裾野が広がりましたが、マイクロサービスの様な比較的小さなスケールのアプリケーション向きのインスタンスが追加されたことで、大幅に適用領域が広がりました。各方面から利用レポートが出始めていて、(おおむね)IntelベースのCPUと比べてコストもパフォーマンスも優れているという高評価が多いようで大いに注目されます。

AWS以外のクラウドサービス関連

Microsoft社がIgnite 2020を開催

Microsoft社のイベント

  • Azure VMware Solution正式サービス開始
    サードパーティーに依存することなく、AzureでもVMwareとのハイブリッド環境が構築できるようになりました。
  • Azure Arc enabled servers正式サービス開始
    マルチクラウド環境のWindowsLinuxサーバをAzureで集中管理。AWSで稼働しているLinuxマシンもAzure上から管理できるようになります。Azureでは、AWS利用料の可視化も提供しており、管理機能をAzureで統合させるシナリオの様です。
  • Azure Communication Servicesプレビュー公開
    個人的にIgnite2020で最もヒットしたものがこちら。ビデオ会議やチャット機能などを組み合わせて独自の電子会議アプリなどを開発できるサービス群。Microsoftは既に協力なコミュニケーションサービスを持っているので、これらを統合して自前のアプリを作ることができれば、高機能なライブコマースの仕組みなどを簡単に作ることができるようになると期待されます。

そのほかにも、絶好調なTeamsへの様々な機能追加が発表され、Slackを一気に追い越し追いつけないレベルにしようとする強い意志を感じました。

Google
  • Google Tables発表
    新しいノーコード開発ツール「Tables」が発表されました。複数人でタスクを共有するプロジェクトマネジメントや、簡単な顧客台帳などが作れるという触れ込みでExcelの置き換えが当面のターゲットの様です。
    Googleは今年初めにAppSheetというローコード開発ツールを買収しており、この分野での集中的な投資が目立ちます。

 

2020年9月のサーバーワークス関連ニュース

  1. ファミリーマート様(ファミペイ)事例を公開
    2019年にリリースされたファミペイのインフラにAWSが採用され、導入パートナーとして当社が選ばれた理由についてお客様からの声と共に発表させていただきました
  2. pieCe Liteリリース。AWS利用料金が▲5%に
    コロナ禍でコスト削減の優先度が高まる中、AWS利用料も削減したいというお声を元に、各種付帯サービスを取る代わりにAWSコストに最適化された、AWS利用料の請求代行サービス pieCe Liteをリリースしました。詳しくはこちらをご覧ください
  3. テレワーク実践ガイドブックを公開
    コロナ禍で急遽テレワーク、リモートワークを実施する必要がでてきた皆さまにとっては、様々なつまづきポイントがあると認識しています。当社では2012年からテレワークを実践してきましたが、こうしたつまづきを回避するためのITや経営上の施策についてポイントをまとめたガイドブックを公開いたしました。こちらから無料でダウンロードできますので、ぜひご利用ください

まとめ

  • 米中貿易戦争の余波がITにも押し寄せつつある。製品選定やIT戦略を描く上で無視できないレベルになりつつあることを念頭におく必要あり
  • CPUの勢力図が確実に書き換わりつつある。サーバーサイドでもARM系が有力な選択肢に。アプリケーションの購入や自社アプリケーションのアーキテクチャー選定時に考慮を
  • 各社ノーコード製品がますます充実。汎用品はクラウドSaaS)を。自社特有の業務については、ノーコード開発を最優先に検討すべき

 

今月は以上となります。まだまだクラウド業界からは目が離せませんね〜。来月もお楽しみに!