大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

2020年8月版 クラウド業界アップデート

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こんにちは、大石です。

第2波とおぼしき新型コロナウイルスの流行も少し落ち着きを見せ始めているようですが、まだまだ余談は許さない状況です。人出が少し戻ってきたとはいえ、こうした中でなかなか「お客様と直接お話ができない」「情報がタイムリーに入ってこなくなった」という方もいらっしゃるのではないでしょうか? かくいう私も、先日とある大企業のCIOをお会いした際に「御社を含め、今まで日参してくれていたベンダーさんが来てくれなくなって情報収集に難儀している」というお声を頂戴し「これはいかん」と思いまして、今月からしばらくの間、ブログとYouTube(動画はこちら)で、主に企業でITの意思決定に携わる方々に向けて「今月のクラウド業界アップデート」を間お送りしたいと思います。 ※YouTube動画とこのブログとは基本的に同じ情報になりますので、どちらでもお好きなソースをご利用ください

2020年8月のクラウド業界アップデート

  • リモートワーク関連サービスが賑やか。Microsoft Teamsの躍進
    • もともとチャットベースのコラボレーションツールとしてはSlackが先発で、2019年のIPO時には時価総額が2兆円を超えるという破竹の勢いでしたが、Microsoft TeamsはOffice 365へのバンドル効果もあってあっという間にユーザー数でSlackを追い抜き、最新の発表では7,500万ユーザーと報じられています(対するSlackは2019年10月の発表時で1,200万ユーザー。以後はユーザー数の発表なし)
    • Slackはこの販売方法は独禁法違反だとして、EUに提訴中。訴訟の行方はともかく、クラウドサービスが充実することで逆に企業のIT管理が複雑性を増す中、SlackやBoxといった「その分野におけるベストな製品を組み合わせる、ベストオブブリード」という使い方から、Microsoft 365の様に「統合されたスイート」を求める声が高まっている様に見受けられます
  • Zoom大躍進。ZoomがOracle Cloudで動いている?

    • このコロナ禍で躍進したクラウドサービスといえば、Microsoft Teamsともう一つが「Zoom」。Oracle Cloudが「ZoomはOracle Cloudを選んだ」というリリースを出したことでクラウド業界の注目を集めましたが、実態は少し異なりそうです。
    • AWSから反論が出ていて、大半はAWSを利用しているとZoomのCEOも認めています
  • CPU業界に大変革。AWSAppleもCPUはIntel製から自作へ

    • CPU業界に大変革時代の到来です。今までCPUといえばIntel一強の時代が長く続いていましたが、自作PC業界では1−2年程前からAMD優勢が確定的に。IntelがCPUの歩留りで苦戦しており、国内でもパソコンやサーバーの入手に時間がかかっている状況が生まれていましたが、そうした苦戦をよそにARMアーキテクチャー勢やAMDなどがIntel製よりも高精細(≒高性能かつ低消費電力)なチップの量産に成功しており、業界の地図を塗り替えようとしています
    • AWSもチップを自作していることを昨年の年次カンファレンス「re:Invent」の中で発表しています。それらのインスタンスの方がコストパフォーマンス上有利だと認識されており、特にサーバーではIntel製一強だった時代に終わりが近づいています
    • また、今年行われたApple社の開発者向けカンファレンスでも「今後はIntel製をやめ、自社開発のCPUに切り替えていく」と発表されており、CPUの勢力図は今後数年で大幅に書き換えられることが予想されます
  • Apple税は許せない?世界を揺るがすゲーム「フォートナイト」とは

    • これもIT業界の大きなニュースです。まずはフォートナイトというゲームについて説明する必要があり、これがまた長くなりそうですので別なブログ記事でご紹介したいと思います。

AWSの注目アップデート

  • AWS Fraud Detectorが正式リリース
    • オンラインでの購買やアカウント作成などにおける不正を検出することができるサービスです。Amazon.comが過去20年にわたって培ってきたノウハウが投入されていることをウリにしています。
    • コロナ禍で様々な
  • Amazon Connect CTI Adapter for Salesforce v5がリリース
    • Amazon Connectをご存じでしょうか?簡単に言えば「コールセンターのような電話の仕組みを、AWS上で簡単につくることができる」というサービスです。
    • 電話イベントをトリガーとして、セールスフォースのデータ操作や画面表示を制御できます
    • たとえば、電話着信時に電話番号で顧客情報を検索し、該当ページをポップアップ表示するような機能を自由に実装できます
    • もちろんこれ以外にも様々なアップデートがありました。特に開発者向けのサービスが精力的にアップデートされており、AWSを用いた開発環境がますます充実しています(もちろん、GitHubというソースコード管理サービスをMicrosoft社に買収されたので、これに対抗していく必要性を感じている、という背景もあるものと思います)

AWS以外のクラウドサービスにおけるトピックス

  • Microsoftのパートナーに向けて、Inspire 2020が開催されました(正確には7月開催)
    • Azure Well-Architected Framework:元々提供されていたが、再度プッシュされた。AWSにも同様のフレームワークがあるが、
    • Azure Stack HCI (Preview)
      • 第二世代のハイブリッドクラウドソリューションがでてきました。AWSAWS Outpostsという名称でこうしたサービスを提供していますが、キャリアや金融などより大規模なインフラをクラウド化するためのソリューションが出揃ってきたという印象です
    • そのほかにも様々な事例や新サービスの発表がありましたが、やはりTeamsの伸びと各種サービスとの統合について多くの時間が割かれていたのが印象的でした。AWSとの健全な競争を通じて、クラウド市場が正常進化していくことを期待しています

サーバーワークスのアップデート

2020年8月版は以上です。今回のアップデートは少し時間がかかってしまいましたが、来月9月分以降はタイムリーに情報をご提供する予定です。ご期待下さい!