大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

2020年10月版 クラウド業界アップデート

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こんにちは、大石です。

先月に引き続きまして、クラウド業界のアップデートをまとめてお届けしたいと思います。ぜひクラウド業界についてキャッチアップしたり、様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとしてご活用下さい!

(11月16日に動画もアップしましたので、こちらも是非ご覧下さい

2020年10月のクラウド関連トピック

  1. Google独占禁止法訴訟が始まる
    GAFA首脳が公聴会に呼ばれるなど不穏な動きが続いていましたが、ついにGoogleの独占に対して司法省が提訴に踏み切りました。特に「Appleに対して巨額のリベートを支払うことで、iOSの標準検索エンジンGoogleにしている」点が大きく取り沙汰されています。Appleはこの取引が継続できなくなる可能性を考慮し、独自の検索エンジンを開発していると目されています。
  2. 東京証券取引所で取引が終日停止
    10月1日に東京証券取引所の売買システムarrowheadで障害が発生し、丸1日取引ができなくなりました。ITに携わる方であれば「システムは必ず止まる」という認識をお持ちだと思いますが、報道では「信用問題だ」「言語道断」などと厳しい論調が相次ぎ、図らずもITリテラシーのギャップが浮き彫りになりました。
    その一方、翌日に行われた東証の謝罪会見では、横山CIOの対応がエンジニアを中心に絶賛され「システムを運営する主体の説明責任」のレベルを1段階引き上げた歴史的な会見だったと見なされました。
  3. クラウドのトラブルが連続
    Microsoft 365において9/29、10/7に、AWSの東京リージョンでも10月22日にAZ(アベイラビリティーゾーン。論理的なデータセンター)間通信の障害が発生し一部サービスに影響が出ました。
    どちらも表面的には「クラウドの障害」なのですが、前者は「全世界で全サービスの停止」、後者は「部分的な停止」という違いがあります。Azureはインフラ層からActive DirectoryやTeamsといったアプリケーション層までをカバーしている点が魅力ですが、一方で一度サービス障害が起きると影響が多岐にわたってしまい、安定性に課題を残しています。

注目AWSトピックス

  1. 総務省による第二期政府共通プラットフォームがAWS上で運用開始
    以前より「クラウド・バイ・デフォルト」という宣言は出されていましたが、実際に行政サービスでAWSが使われ始めている事例が明らかになってきました。デジタル庁の新設に伴い、行政機関でもDXの加速が期待されます。
  2. Amazon Rekognitionでマスクの有無を判定可能に
    Amazon Rekognitionを使うことで人物の判定などはこれまでも実現していましたが、コロナ禍のご時世に合わせてマスクの有無なども判定できるようになりました。オフィスや店舗の入室時チェックなどにも利用できそうです。こちらの動画でも解説していますので、ぜひご覧下さい。
  3. Appleのオンラインによる新製品発表会がAWSを用いて配信
    9月、10月と2ヶ月続けてAppleの新製品発表会が行われましたが、これらがAWSを用いて配信されたと伝えられました。コロナ禍に合わせて(事前に録画された)映画仕立ての動画で新製品発表会を行っていますが、クオリティの高さもあって好意的に受け止められているようです。

AWS以外のクラウドサービス関連

  • 日本マイクロソフトがAzureの年度計画を発表
    最重要分野として「クラウドネイティブなアプリ開発と既存アプリのモダナイズ」を、また「既存アプリケーションのAzureへの移行」「クラウド導入プロセスの標準化とクラウド・センター・オブ・エクセレンス(CCoE)文化の醸成」にも引き続き注力とのこと。これらの実現のためにAzure Baseという物理的なデモ+コワーキングスペースを全国10カ所に展開。AWS Loftの対抗と思われますが、よりパートナー色を強くしている点がマイクロソフトらしく、大いに注目されます。
  • GoogleがG SuiteをGoogle Workspaceに改名
    基本的には名称変更とされていますが、プランによって最大利用可能人数が減ったり、ストレージの最大容量が減ったりするなど利用者視点では一部改悪に見える部分もあるため、注意が必要です。
  • Alibaba Cloudの売上は年7,400億円に
    Alibaba Cloudは300万の有料顧客を有しており、年間売上高は70億ドル(約7400億円)、2021年度中には事業として黒字化とのこと。米中の摩擦やコロナショックもあり国内でもAlibaba Cloudの話題が取り沙汰されるケースも減少気味の様ですが、中国内での事業は順調に伸びているようです。

 

2020年10月のサーバーワークス関連ニュース

  1.  バリュエンステクノロジーズ様のOnelogin事例を公開
    当社ではAWSだけでなく、AWSと一緒に使われるクラウドサービスの販売・技術支援も行っています。特に最近は複数のクラウドサービスを使い分けるというユースケースが増えていることもあり、シングルサインオンを実現するクラウドサービスOneLoginの技術サポートも提供しております。
  2. Gartner社のレポートにサーバーワークスが掲載
    ITの調査会社として最も権威があるGartner(ガートナー)社の調査レポート「Market Guide for Public Cloud Managed and Professional Services Providers, Asia/Pacific」に当社が掲載されました。米国ではITベンダー選定に当たって最初に参照されるものがGartner社のレポートと言われるほど意志決定に大きな影響力を有していると言われています。国内ではそうしたケースは多くないようですが、今後プロフェッショナルCIOと呼ばれるポジションの方が増えるに従い、既存ベンダーや過去の経験よりも、第三者評価を重視する傾向が強まると考えられます。

まとめ

  • GAFAによる市場の寡占を解体するのか、はたまた米中貿易戦争に備えて敢えてGAFAに力を残しておくのか。個人的には米国は後者を選択すると予想するが、今後しばらくは微妙な局面が続くことは間違いなさそう。
  • システムのトラブルが社会に与えるインパクトは拡大の一途。従来型のフォールトトレランスを追求するアプローチから、(クラウドを活用し)フェイルセーフへの転換を。
  • AWSは公共分野でも拡大中。クラウドを用いてどのように行政サービスをデジタル化していくのか、今後の取り組みに注目。

 

これを書いている11月5日は、アメリカの大統領選挙の開票が進んでいる最中です。どちらに転んでも一波乱も二波乱もありそうですし、先月からお伝えしている通り、米中貿易戦争と相まって「IT業界も対岸の火事では居られない」という状況が続いています。

私たちにできることは「正しい情報を元に、正しく備えること」だけです。このブログと動画が、みなさまの「備え」のお役に立てば幸いです!