大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

服装というプロトコル

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こんにちは、大石です。

いよいよ冬季オリンピックが始まりましたね。スポーツ観戦が大好きな私にとってはたまらないシーズンですが、国母選手が服装や態度の問題で叩かれたりしていて、折角の祭典に水を差してしまった格好です。

人それぞれいろいろな意見があってしかるべきですし、「あのような場所でどう振る舞えばよいか」という事について一般解は無いものと思いますが、このブログでも繰り返し述べている通り、「若者の問題は大人の問題だ」という認識が大人に欠落していることが、本当の問題だと思います。

はっきり言って、国母選手は「なぜ整った服装で礼儀正しく振る舞わねばならないのか、全く理解していない」のだとしか思えない。知らないのに怒っても仕方が無い。会見の様子を見て「反省していない!」という声が多かった様ですが、「悪いと思っていないことを謝りなさい」と言われて、心から謝ることができるでしょうか?極端な話、キリスト教徒がイスラム教徒に「豚肉は食べちゃだめ!」と言われても理解できないのと同じように、「なんでダメなん?結果だせばいいんだろ?」としか思っていないと思います。

私自身は、オフィシャル、パブリックな場所では「暗黙のプロトコルがある」と考えており、そのプロトコルを守ることの有用性を肌身で感じているので、そうしたプロトコルを会社や家庭で教えたり伝えたりすることが本人や家族、社会のためだと思っています。 そうした暗黙のプロトコルの一部は礼儀やマナーなどと呼ばれていて体系化されている。例えば当社では、お客様とお会いするときは必ずスーツとネクタイ着用を義務づけていますが、これもプロトコル遵守の一環です。暑くてもネクタイまで着ける。「エコ活動の結果暑いからネクタイを着けません」というのでは、「必要ないから服装なんか気にしません」という若者と同じ理路と言わざるを得ない。

技術っぽい言葉でいうと「プロトコルがあるから通信できる」わけです。そして通信ができるから、信頼関係が構築できる。技術の世界でも、プロトコルを守らないことを「お行儀が悪い」と言いますよね。

ですが、今の教育は「迷惑をかけなければ良い」という考えが主流のようです。

どこでも言われている様に、核家族化の進行、地域社会の崩壊などで、私たちの身の回りのコミュニティーが信じられない勢いで崩壊しています。先日テレビで「結婚式の友人を代行するサービスがある」ということを知り戦慄が走りました。 会社でも、非正規社員の増加、会社自体の倒産やM&Aなど、人材の流動性を高める要因には枚挙に暇がありません。ですが、それでも、周りを見渡すに「会社こそが最後のコミュニティーという想いを強くせざるを得ません。

「迷惑をかけなければ良い」というコミュニティー無視の考えは、コミュニティーに属することのメリットを全て放棄してしまうことに繋がるわけですが、そうした結末を教えられないまま「迷惑をかけなければ良い」と教えられてしまうこと自体に大きな問題があると考えています。

今回の騒動の中で「税金でオリンピックに行っているんだから、ちゃんとしろ」という意見がありました。心情的には理解できますが、順番は逆です。「お金をあげたんだから頭を下げろ」と言っても、彼はコンビニの店員ではないので、頭は下げても心は入らない。

「支援を得るためにプロトコルが必要」なのです。

若くて力のある人ほど「自分の力で成し遂げた」という錯覚を覚えてしまうものです。 そこに周り(コミュニティー)の支援があったとは気づかない。 しかし、スポーツ選手として成功するためには、周りの支援が絶対に必要です。 そして支援を得るためには、コミュニティーと通信するプロトコルが必要なのです。

彼の支援を打ち切り、(残念なことに一部そうした動きが見られるようです)報復することはできるかもしれません。ですが、そんなことをしても何も解決しない。この問題は彼だけの問題ではないからです。 この問題の核心は、私たちを含めた周りの大人、教育の問題だと確信します。

私たちに求められているのは、

  • 迷惑をかけなければ良い(プロトコルを無視して良い)という考えは、何のメリットも無いばかりか有害ですらある。
  • パブリック、オフィシャルな場所には、相応のプロトコルがあって、それがあるから信頼、支援という無形の財産を築くことができる。真の成功は、自分の力だけではなく、コミュニティーによってもたらされる。

という事実を、きちんと伝えることだと思います。

歩きタバコも、電車で化粧をする行為も、オリンピックの開会式でだらしない格好をする行為も、根は同じです。自分がそうした行為をしておいて大学生の若者に完璧を求めるのは筋が通らない。 (自分自身を含め)プロトコルの遵守ができているか確認すること、プロトコルの存在と必要性をきちんと説明することの重要性を改めて考えさせられました。

そして、国母選手にはエールを送りましょう!がんばれ!