大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

インフルエンザワクチンとクラウドコンピューティング

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こんにちは、大石です。

流行りモノ大好きな私は既にチャレンジ済みですが、みなさん新型インフルは試されましたか?
そんなに物好きでない(というか普通の)方は、予防接種などで予防に努められたことと拝察いたしますが、実際のところ1,500万人くらいが罹患したと言われているそうで、その方々は予防接種が必要なく、かつ「最初2回と思われていた接種が、1回でもOKだった」ことが後からわかったりしたこともあり、大量のワクチンが余っているそうです。

最初は「ワクチンが不足するぞ」「誰が数量を決めたんだ」「何で国内の中堅どころに発注したんだ」などとマスコミが騒ぎ立てていた訳ですが、蓋を開けてみれば大量に余っている。
実はこれ、システムでも全く同じことが起こるというのが今回のネタです。

システムを設計される方は、「ピーク時にどの程度のアクセスがくるか想定して設計し」「想定通りのアクセスの場合に処理が滞りなくできるかどうかテストをする」ということを必ずやると思います。
ところが、この「想定」が曲者です。
結局「カン」でやるしかないわけです。
ですが上司やお客様に「カンに頼りました」とは言えないから、「負荷テスト」なるものをやるわけです。
これは「nのアクセスが来ても大丈夫か?」ということを事前に調べるというものです。
ところが、少し考えれば分かる通り、こうしたテストをやっても「nまでだったら大丈夫です」という事は言えますが、nという数字の根拠にはなりません。nを大幅に超えたら、やっぱり止まってしまうわけです。
証券取引所や空港の発券システム、ECなど様々なシステムが過負荷で止まっていますが、これらは殆どの場合「予測不能だった」というのが本当の所だと思います。

私たちも、比較的長い期間この問題に悩まされてきました。一生懸命に「想定」するわけですが、最後は博打になってしまう。

 

ところが、クラウドコンピューティングは、この問題から私たちを解放してくれます。
「どうせどの程度のアクセスが来るかなんて誰にもわからない。だったら、どの程度のアクセスでも良いシステムにすればよい」ということが本当にできるわけです。
アクセスが多ければ、(クラウドの向こう側にある)サーバーを増やせば良いし、アクセスが少なくなればサーバーを減らせばよいのです。そのスピードが、クラウドを使えば本当に5分10分という単位でサーバーを追加したり、削減したりできるわけです。

「想定よりアクセスが多くてサーバーがパンクした」とか「想定よりアクセス数が少なくて過剰投資が問題になった」というトラブルは、クラウドでは消滅します。
「コストの最適化」と「キャパシティの最適化」が両方いっぺんに実現できるわけです。

いかがでしょうか?
この例はクラウドコンピューティングの数あるメリットのたった一つでしかありませんが、どうしてこんなにクラウドがもてはやされているのかをご理解頂ける一助にはなると思います。

 

残念ながらインフルエンザワクチンをクラウド化することはできないので、今回の余剰ワクチンは来年に持ち越したり、期限が切れたものは廃棄することになるそうですが、コンピューターは違います。
必要な分を、必要なだけ、必要な時に使える。
本当にそういう時代がやってきたのです。