大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

ファストSIとアーティスティックSI

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こんにちは、大石です。

先日、この業界で知らない人はいないだろう超有名SI企業「チームラボ」さんと合同の勉強会を開催しました。

チームラボさんと言えば猪子社長の強烈キャラでも有名ですが、アウトプットもすごい。東急ハンズさんの「コレカモネット」をはじめ、私も買ったiPadアプリのteamLabBodyとか、teamLabHangerとか、とにかく尖っています。しかもその尖り方がハンパでなく、本当にアートの域。猪子社長も「これから創るモノはアートの領域でないと生き残れない」と方々で発言されていますが、本当にその域と感嘆せざるを得ません。

私も「作るならアート」という見立ては正しいと感じていて、お客様も中途半端なアウトプットを嫌うようになってきていると感じています。私たちは、徹底して「作らない」ことを標榜していますが、作るモノはアートに達するまで作る。そのメリハリが求められつつあると感じています。

 

私たちは「作らないSI」をこの様な図で説明しています。

そして、この「作らないSI」というビジョンを、以下のように説明しています。

今まではお客さんの『のどが渇いた』という要求に対して、なんでもかんでもチームを作ってバケツを買わせてドキュメントを書いてその分までお金をとって、挙げ句に水はちょっとだけ、なんてことがまかり通っていたが、これからは違う。Amazon工場からHx2個とOx1個を買ってくれば、つなげてあっという間に水になる。こういうスピード感でのデリバリーになる。このときに必要になるのが、作る技術では無く『組み合わせて、どうやって作らずにデリバリーするか』という知識だ

 

そして、このビジョンを実現するために実際に自分たちでも

2008年に社内サーバー購入禁止令を出して、サーバーを買わないインフラを実践
・2009年からAWS専業でSIサービスのデリバリーを開始
・2012年には、社内システムを全クラウド化し、社内サーバーがほぼ無い状態でISMSを取得

など、どれだけ作らず、買わずに、ITによる価値を実現できるか、徹底的に突き詰めようとしています。

 

私たちがやろうとしていることは、ITインフラのユニクロ化の様なもので、ファストファッションならぬ
ファストSI
とも言えるものです。安くて品質の高いものは爆発的に流行る可能性がありますが、世の中これだけで回る訳ではありません。ファストファッションが流行っても、徹底的にデザインされ、憧れをもって見られるブランドファッションが廃れないことと同様、アートの域まで作り込まれたプロダクト、ソフトウェアも同じように重要だと考えます。

個人の消費動向も二極化していると言われます。インナーにはユニクロ、でもカバンはヴィトンというアンバランスが、むしろ合理的な消費行動と認識されている。実はITシステムも同じで、インフラやメール、カレンダーなどのコモディティは、徹底的に安くあげる。その代わりモバイルアプリやUI/UXにはちゃんとお金を掛けるというメリハリが、高い効果を上げるIT投資のベストプラクティスと認識されつつあるようです。

 

よく、「サーバーワークスさんはAWSのインフラ部分と、アプリケーション開発案件を一緒に取られているんですよね?」と聞かれますが、答えはNoです。最近の新規案件は、ほとんどがインフラ部分に集中しています。
これは、上で説明した通り「中途半端なモノを作ることは、ファストSIという私たちのポリシーに反する」からです。作るであれば徹底的に、どこよりも良いモノを作るべきだと考えます。AWSによってインフラをデリバリーする能力は国内屈指と自負していますが、作ってしまってはその強みが活かせません。そして私たちは、過去6年の経験から、「ファストファッションの会社が高級ブランドの会社を買ってもうまくいかないのと同様、ファストSIの会社がアートを実現するチームを抱え込むことは難しい」と感じています。

私たちも作るチームは残りますが、それは「ファストSIを体現するための、製品やサービスを作るチーム」として残り、お客様のために手組みで0からシステムを作るという「高級ブランド品をつくる職人チーム」ではありません。

 

このことをイメージした図が、下になります。

※緑線はプロジェクト数

社会全体が成長していたり、極端な競争に晒されていなかった環境では、中道が好まれます。ですから、極端なファストSI、芸術的SIといったカテゴリはそもそも必要とされていなかった。システムのスケールも大きくなり、資本と組織を持つ企業が中心的プレイヤーだったわけです。

それが、国際的な競争の激化や震災をはじめとする不確実性への対応という、外圧がかかってくることによって、事なかれシステムの出番が減りつつある。作るモノは「作ることによって競争優位が実現できるまで」作り込むし、作らないモノは徹底的にありものを使う。こういうメリハリが、ユーザー企業にとって不可欠になりつつあり、結果として私たちの様に極端な戦略を採っているSIサービスへの需要が高まっているのだと理解しています。

(私が言うアートの領域には、チームラボさんのような工業デザインを突き詰めるアプローチもあれば、UI/UX、モバイルアプリの企業さんなんかも含まれる。もっというと、ビッグデータの領域なんかは、統計と行動心理学を熟知した第2の鈴木敏文さんが求められる、完全なアートの領域だと認識しています。)

チームラボさんのアウトプットを拝見し、アプローチは真逆だけど非常にシンパシーを感じたのは、やろうとしていることは違うのですが、見ている未来が一緒だからなのだと感じました。

 

 

「ファストSIで日本を救う!」

こんな想いで、今日も少しでも多くのお客様に価値を提供できるよう社員一丸となって頑張っています。

 

チームラボのみなさん、ありがとうございました。また勉強会やりましょう!