大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

働き方改革 < 関係性改革

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こんにちは、大石です。

最近、いろいろな場面で「働き方改革」についてお話する機会が増えてきました。 私達自身、過去6年に渡り様々なチャレンジを進めてきたので、トランアンドエラーの結果をお伝えすることは簡単にできるのですが、一方で「自分たちでは、働き方改革というキーワードは使わなかった」という事実とのギャップに戸惑ってもいます。 この戸惑い・違和感の正体はなんだろうか?と疑問に思っていたのですが、先日ある方のインタビューを受けていてようやく謎がとけました。

当社は13部署中6部署のマネージャーが女性なのですが、社内で「女性活用」というキーワードは出てきたことはありません。 ですが、インタビュワーの方に 「女性マネージャーがそんなにいらっしゃるなんてすごいですね。女性活用とかに取り組まれてきたんでしょうか?」 と聞かれたときにハッと気づいたんです。

よく日本語は「主語を省略する言語だ」といいますが、「女性活用」という言葉は、主語が「男性」なんですよね。 「男性が女性を活用する」と。 私達の会社で女性マネージャーが活躍しているのは、恐らくそういう視点が皆無で、純粋に能力・適性・動機・経験等を勘案してフェアに決めた結果だから、「女性にゲタを履かせる」ようなこともなく、みんな活躍できているんだと思うのです。

同じように、「働き方改革」というのも暗黙の主語が「会社」なんだと思います。 でも、別に今の若い人は(仕事を選びさえしなければ)いくらでも働き口はありますし、「会社が潰れたら転職すればいいじゃん」というのが普通の感覚なんではないかと思います。 つまり、「働き方を変えて生産性を上げてほしいのは、(今まで若手をこき使って利益を捻出してきた手法が使えなくなって)困っている会社側」なのであって、社員視点でみればサイボウズさんの広告のキャッチコピー

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が本音なのではないかと思うんです。

これから人口、特に若い人が減って、人手に頼るオペレーションはほとんど不可能になります。人手不足で苦しんでいる会社が「人手が十分に足りている」という状況はもう二度と来ないわけです。 そう考えると、今変えるべきは「働き方」なのではなくて、「社員と会社の関係性」なのではないかと思うのです。

今までは、相対的に会社よりも若者の数が多かったので、若者が選ばれる側だった。だから入った会社に忠誠も誓うし、理不尽な命令でも従っていたわけです。 ところが、これからは若者の数が減って、若者に選ばれない会社は、老衰で死を迎えるしかなくなる。まさに死活問題になるわけです。

これは本当に本質的な変化です。 今まで業者だと思っていた会社が顧客になる。 弟子だと思っていた人が先生になる。 それと同等の大きな変化です。

だからといって「甘やかしてお客様扱い」するわけではありません。会社が潰れない約束など誰もできない世の中ですから、会社が社員に約束できる最大の報酬は「どんな会社にも転職できる能力をどこよりも早く身につける」ことだと思うのです。そのためにはお客様扱いするのではなく、きちんと機会とサポートを提供しなければいけません。これはこれからの日本企業の義務です。

一方で、理不尽な下積みや、ふるい落とし型の教育・育成はもう機能しません。あえて厳しい下積み・業務を経験させて「這い上がってきた奴を使おう」というスタンスでいると、若者の母数が多いうちは何人か残ってくれて会社に貢献してくれたのかもしれませんが、これからの社会では「そして誰も居なくなった」的なシャレにならない未来が待ち構えています。 私達でも、実際こんなことがありました。

当社では毎週月曜日に「朝会」と称して、私がとても「ありがたい」話を会社でするというとても「ありがたい」会があるのですが、その場に居なかった人でも私の話を聞けるように、新入社員が持ち回りでテキストに起こして社内Wiki掲示する、というとても「ありがたい」仕事があったのです。 いわゆる「下積み」に近い業務ですが、一方で私の話を新入社員が耳ダンボで聞く羽目になりますので、私の想いを早く浸透させることができる、という効果を狙った「下積み」だったわけです。 ところが、新入社員にとってこれは苦痛以外の何者でもなかったらしく、ある日優秀な新入社員の一人から「この業務をお願いだからやめてくれ」という声が上がったのです。 昔の会社だったら「うるさい!いいからやれ!」で良かったのかもしれませんが、これから若手のパワーが何より重要になる社会において、若手の生産性よりも貴重は資源はありません。というわけで、今ではBox Captureで音声をそのままBoxに上げるというオペレーションに変えて、生産性と優秀な社員の動機づけ(どちらかというと離職の防止ですがw)につながった、ということがあったのです。

私たちはこのように考え、できるだけ「当社でしか通用しない業務」を排除しようと様々な工夫をしていますし、また「AWSの様な世界最先端のサービスを使い続ける」ことで、技術・営業スキル・人脈含め、自分の能力と経験を伸ばすために最高の環境を準備しようと努めています。

つまり、私達のはたらき方改革は、会社が命令してやってきたわけではなく、社員と会社との関係性を改革しようとして対話を続けてきた中で、結果として本気のリモートワーク活用やお昼寝スペースの設置、理不尽下積みの排除など、イマドキの働きかたになってきたというのが本当のところなのです。

私が、変えるべきは「はたらき方」よりも「社員と会社の関係性」と考える意図がみなさんに伝われば幸いです!