大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

なぜエンジニアにはミュージシャンが多いのか

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こんにちは、大石です。

先日BacklogCacooでおなじみヌーラボの橋本社長と話していたら、ヌーラボさんでも元ミュージシャンやバンドマンが多いとのこと。 当社にも「ミュージシャンを目指していたが途中でくじけて(やむを得ず)エンジニアになった人」とか「今でも趣味でバンドをやっている人」が数多く在籍していますが、これは決して偶然ではないように思います。 自分も多少音楽をかじっていたので確信があるのですが、音楽もITも使う頭の機能が似ているんです。

音楽そのものは「瞬間的」「流動的」で「形がなく」「あいまい」で「人によって捉え方が違う」という右脳的なものですが、「楽譜」という共通ルールで符号化するという左脳的作業によって、「ロジカル」で、「あいまいさを排除」し、厳密なものにして「再現可能にする」なものになっていきます。 もちろん、これは一方通行ではなくて、楽譜に落とし込んだあとに「演奏して当初の意図通りか検証」したり「現実に合わせてアレンジ」したりといった、楽譜と実際の音とをいったりきたりする工程が必要です。

エンジニアの仕事も酷似していて「業務」とか「要件」という、形がなくてあいまいで人によって捉え方が異なるものを、「コード」という共通言語で符号化することによって「厳密」かつ「再現可能」にすることが求められます。そして、音楽と同じように「コード化したものが現実に即しているのか」を検証して、それを修正したり、またコード化したりと、現実とコードをいったりきたりすることを繰り返し、現実世界を精緻に反映したコードができていくわけです。

素晴らしい音楽家の音楽を聞くと、作り手の感情や情景といった「あいまい」なものが鮮やかに聞き手の頭に再現されるように、優れたエンジニアが書いたコードやシステムは、業務や課題といったあいまいなものが鮮やかに解決されるわけです。よいエンジニアにミュージシャンが多いのは決して偶然ではなく、こんな共通点があるからなのではないかと思います。

 


 

ところで、このエントリを読んで「右脳とか左脳とか間違いだから、本稿の議論は意味がない」と感じた方へ。 本稿で述べたいことは「優秀なエンジニアと音楽家に共通する能力は、現実世界を知覚する能力と、厳密に符号化する能力との架け橋にある」ということです。そして現実問題として「イメージは右脳、ロジカルな思考は左脳が処理する」と認識している人が多いわけなので、比喩として出したわけです。ここで言っている「右脳」とか「左脳」というのは現実世界をざっくりと切り取るためのメタファーで、「形がなく」「あいまい」なものです。現実の「あいまいさ」と「科学的な厳密さ」とをブリッジして読んで頂ければ幸いです ;-)