大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

「成長」という脅迫

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こんにちは、大石です。

最近、立て続けに起業家の知り合いが

「本当に企業は成長を続けなくてはいけないのだろうか?」

「なんのために成長をめざすのだろうか?」

という自問をされていたようで、率直な悩みをfacebooktwitterで吐露していました。

私もこの件では似たような悩みを持っていたことがあるので、何となく心情は理解できるのです。

 

経営者でも、社員でも一緒だと思うのですが

「成長を目指さないヤツは論外」

みたいな風潮、ありますよね?

こういう、全てのはたらく人にかかっている「成長しなければ脱落するぞ」という暗黙のプレッシャーが、

「成長しなくてはいけない」

「会社を作った以上、大きくしなければいけない」

という強迫観念に繋がっていると思うのです。

 

実は私も、かつてはそういう風潮に異を唱えて

「成長すればイイってもんじゃないでしょう」

というスタンスを取っていたのです。

急成長を明確に戒め、「持続可能で、継続的な成長をめざそう」という方針を打ち出し、採用や育成の計画もそれに従い「採用は少なめ、育成に重点」というバランスで事業を展開していました。

これはこれでうまくいっており、10年弱に渡って(伸び率は低かったものの)継続的な成長は実現できていました。

 

ですが、そんな考えを改めざるを得ない2つのできごとがありました。

1つは、友人の突然の死。

同い年の友人の訃報に触れ、「ゆっくりしていられるほど、自分には時間が残されていない」という事実に気付いたことは、私の中でとても大きな転換点でした。

 

そしてもう一つが、友人の死のすぐ後に訪れた震災。

震災後に日赤さんのサイト復旧、義援金管理システムの構築を支援させていただいたことは何度も述べている通りですが、実は私たち、このことをしばらく外へはお話ししていませんでした。

ボランティアでやったことですし、売名行為と見られることに対する嫌悪感もありましたので、特に話しをしていなかったのです。

そうしたら、あるとき日赤さんからこんなことを言われたのです。

 

大石さん、このことはちゃんと話して下さい。

話して、儲けて、義援金を払って欲しい。

それが本当の社会貢献というものです。

 

私たちはたまたま縁があって、日赤さんの支援をすることができた。

目立った支援になったことは幸いでしたが、もっと大きな寄付や物的支援、ボランティアなど様々な形で支援している方がいらっしゃる。

今回の震災で私たちは「迅速さによる支援」を実現することができましたが、それだけではなく、物的な支援も含めた「継続的な復興支援」のためには、日頃の努力による将来への備えが必要で、実際に大きな支援をしているのは利益を上げている事業家であること。そして、その準備のためには、実はあまり時間が無いということを教えられたのです。

これが今、私を成長に駆り立てている原動力です。

 

ふだん「成長への圧力」に悩んでいる方に、私がお伝えしたいことは3つあります。

1.成長を目指すか否かは、どちらも自分の選択。周りのプレッシャーで決めたり損得で測るような類いのものではないこと

2.私自身が例になっているように、何かのきっかけでスイッチを入れたり切ったりすることもあり得るということ。一度選んだ道が絶対だったり引き返せないという類いのものではないということ。だからこそ、積極的にチャレンジする意味があるということ。

3.「成長」へ舵を切ったときに得られる最大のメリットは、成長しようという明確な意志をもって行動すると、必然的に同じ考えの人と付き合うようになるということ(これは私が「成長」へ舵を切る前には分からなかったことでした)

 

どちらの道を選択するのも、自分の気持ち一つです。

ですが、私は「成長」へ舵を切ってよかったと心の底から思います。特に成長を目指していると、周りの方が助けてくれたり、成長の手助けをしてくださったりといった不思議なご縁が拡がることを実感できます。

 

もともと強い成長意欲があった訳ではない私たちが、急に成長に舵を切った理由はこのようなものです。
(過去の自分がそうだったように)成長に対する迷いをお持ちの方が思いの外多いように見受けられたので、何かの参考になればと思いここに書き記した次第です。