泣きました。。
まさかビジネス書で泣くとは。。。
心を動かされたエピソードもあれば、最初に稲盛和夫翁のことばに触れたときに感じた「この人はすごい、すごすぎる。ほとんど神だ。とてつもなく尊敬できるけど、ここまで無私に徹することは小人の自分にはできない」という諦めに似た気持ち、まだまだ経営者としての自分に足りないものの自覚、素晴らしい会社への憧れ、そういった複雑な感情が一挙に去来して、より一層心を揺さぶられました。
「会社は社員の幸福のためにある」
という著者の一貫した主張は、この恐慌の引き金ともいえる過剰な株主至上主義へのアンチテーゼであり、社会の一員としての企業の在り方を見つめ直すきっかけを与えています。
エピソードが中心ですぐに読めてしまいますので、どなたにでもおすすめできる一冊です。
ただ、会社に不満をお持ちの方はあまり読まれない方がよろしいかと。。経営者に対する不満が爆発しかねない危険もあります。とりあえず社内の朝会で「みんなは読まないでね」とお願いしておきましたww
ところで、Amazonのレビューで「内容が薄い」や「主観が入りすぎ」といった批判がありました。
私もそれはその通りだと思います。5社の内2社がハンディキャッパーの方々に関係するものでサンプルの選択に恣意的なものを感じたり、ソーシャルビジネスを一方的に礼賛して、車の部品ビジネスを「構造的に価格競争が避けられない業種だからやめてしまえ」などという乱暴な主張も垣間見え、議論としてはアンフェアだと思いました。 (車の製造に関わっている企業は、多大な雇用の創出と多額の納税という立派な社会貢献をされていますが、著者はこの点について全く触れていません)
また、本書で挙げられた以外にも「真に社員のことを想って経営していたが、倒産してしまった」という企業もあるはずで、そうした企業のことも取り上げなければ「企業経営者は無条件に社員の幸福を追求すればよい」という極端な議論になってしまいかねない危険も孕んでいると感じました。
しかし、それでもなお、この本に取り上げられた企業の価値を落とすものでは全く無く、本書で紹介された企業の経営者が目指しているもの、経営の拠り所としている価値観を、エピソードを交えて分かりやすく伝えるという意味では一読の価値があると思います。
本書にもありましたが、「社員の幸福のためにも、会社の継続が必要条件」です。
まずは、経営者としてやるべきことをやり、会社の継続的な発展と社員の幸せを両立させる。
当たり前のことですが、その当たり前を見直し、襟を正す、よい機会になりました。