大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

クラウド時代だからこそ必要とされるSI

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こんにちは、大石です。

 

先日、翔泳社主催の開発者向け祭典 Developers Summit 2013 でスピーカーとして招かれる機会があり、「SIerの未来ってどうなのよ?」と題して、AWS専業というポジションから思うところを述べさせて頂きました。

 

お陰様で多くの方にご賛同頂けたようで、オーディエンス満足度部門1位の栄誉に浴することができました。4月下旬に、Rubyの開発者まつもとゆきひろさんらと一緒に再演の場をいただくことになりましたので、追ってご案内させて頂きます。

 

私たちがAWSにコミットして5年が経ちますが、分かったことは

SIは必要とされている

ということ。

よく「SIは終わった」とか「SIに未来は無い」という意見を見聞きしますが、不思議なことにこうした意見を表明する方は全て「SI側の人」なのです。SIが不必要かどうかはユーザーが決めることなのに、ダメだダメだと大騒ぎするのは中の人ばかりで、ユーザー側から「SIは不必要だ」という話は聞いたことがありません。

実際、昨年11月にラスベガスで行われたAWSのカンファレンス「re:Invent」でも、「顧客がクラウド利用に際して必要とするサービスの1位がインテグレーションサービスだ」というガートナーの調査結果が発表されていました。

私たちの常識は「米国ではユーザー企業がITの責任を負うので、SIerは存在しない」というものだったため、調査結果はその常識を覆すものでしたが、一方で個人的な実感にも近いものでした。

実際のケースを考えればイメージできる通り、ユーザー企業ではクラウド事業者が提供する広範なサービスを使い、組み合わせ、実証し、そしてベストプラクティスを自分で探し出す時間的な余裕も人的なリソースもないケースが殆どだと思われます。そもそも、時間とお金を投下してそのようなベストプラクティスを見つけ出しても、そうした知識がコアコンピタンスになることはありませんし、更に別なサービスの登場でそれが瞬間的に無価値になったりすることもあり、投資に見合うリターンが得られないというケースも充分に予見されます(たとえば、EC2, SQS, SNSを組み合わせて動画のエンコードを行う分散システムを上手に作っていたとしても、Amazon Elastic Transcoderの登場でそれらが突如無価値になったりする訳です)。

こうした時代にあっては、私たちの様に会社の全リソースを投入してクラウドの周辺知識、クラウドの組み合わせ知識を徹底的に学習し、最新のナレッジをサービスとして提供するインテグレーターを利用した方が、効果的にAWSをはじめとするクラウドを安く上手に使えるという現象が起きているのだと思います。

実際に私たちのお客様で、月に3万ドルを超えるコストをAWSに払いながらも、システムのパフォーマンスが出ず苦しんでいるお客様がいらっしゃいましたが、私たちがアドバイザーで入ることで、コストは30%カットでき、さらにサイトのパフォーマンスも上がるという劇的な改善を実現した実例もあります。

 

AWSに限らず、クラウドのメリットは「所有」ではなく「使う」ということ。

ITインフラに関するナレッジも、所有するためには多くの時間とお金の投資が必要です。所有にまつわる問題をヘッジしつつ、優れたノウハウを取り入れるために、ユーザー企業側にも「クラウドインテグレーターを使うスキル」が必要になってくるのだと考えます。