大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

「もったいない」は悪

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こんにちは、大石です。
 
当社では、会社をきれいに保つため、またメンバー間のコミュニケーションを円滑にするために、頻繁な席替えを行っています。
で、今回の席替えはレイアウトの変更も一緒に行ったのですが、現場に任せたレイアウトに私が苦言を呈するということがあったので、備忘録を兼ねて私の考えを述べておきたいと思います。
 
私が「これはいけないよ」といったのはこんなレイアウト。
 
 
 
一見、何も悪くなさそうですよね?
同じ社内の別なチームはこんな感じです。
 
 
ご覧頂いておわかりの通り、上のチームの方がスペースが広くなっています。
 
なぜ広くなっているのか?
「空いたスペースを使っている」からです。
私が言ったのは、「空いたスペースを使ってはいけないよ!」
「空いたスペースは、空いたままにしておいて下さい」ということを申し上げた。
 
なぜか?
 
理由は2つあります。
 
 
1つ目は、新しい人が入ってきたときに「狭くなった」と感じてしまうから。
 
内外でお伝えしていますが、当社は明確に「実の伴った成長」を指向しており、新しいメンバーが入ってくると言うのは「喜ぶべきこと」であるはずです。
ところが、「人数が少ない時は広くて、人が入ってきたら狭くなった」という具合に「少ない人数で居ることのメリット」を最大限に享受してしまうと、後から新しいメンバーが入ってきたときに「少ないときはよかった」ということになってしまい、成長に対して負のインセンティブになってしまうわけです。
 
今まで当社は2回引っ越しをしているのですが、全く同じ理由で、いずれも「前よりは少しだけ良いけど、良すぎない物件」をわざわざ選んで選択しています。
これは、「次に引っ越した時に、必ず『アップグレードした感じ』を実感したい」からです。
折角成長して引っ越したのに、「前のオフィスの方がよかった」とみんなが思うようなオフィスでは、モチベーションもあがりません。
継続的に成長するためには、「成長が実感できる」仕組み作りを、意識的に行う必要がある、
これが1点目です。
 
 
2つ目は「余っているものを使うことは悪いことである」ことを徹底したかったから。
 
普通の感覚では「余っているものを使う」ことは善ですが、企業では絶対に違う。
企業はいつでも最小限のリソースで最大の成果を上げることが求められています。
 
予算が100万円余っていたら、使うのは悪。残すのが善。
10日で終わる仕事に対して納期が1ヶ月あったら、1ヶ月まるまる使うのは悪。納期よりも早く終わらせるのが善。
スペースも同じです。余っているからといって使うのは悪。有事の為に空けておくのが善です。
 
予算も、納期も、スペースも、余ったものは即ち「ムダ」です。これはちゃんと見えるようにしておいて、意識して排除していかなくてはいけない。これを理由をつけて使ってしまうと、ムダが見えなくなってしまいます。
個人レベルでは善となる「もったいない」精神が、企業になると「ムダが見えなくなる弊害を招く」という、合成の誤謬が起こるわけです。
 
ムダを徹底的に排除し、よりよい商品・サービスを、より早く、より安価に提供することは、サービスに携わる企業の大原則です。
このことを全員に理解してもらうべく、
「余っているものを使ってはいけない」
ということを申し上げました。
 
 
実はこれ、私たちが推し進めているクラウドコンピューティングの精神とも全く合致します。
ハードを買えば、必ず「ムダ」が生じます。CPUもハードディスクも、ずっと100%使い続けるということは発生しえないからです。必ず使わない分、つまりムダが発生する。こうしたムダをとって、「使うときに、使う分だけ利用しよう」という理念をコンピューターの世界で実現したのが、AWSをはじめとするクラウドコンピューティングというわけです。
 
クラウドを進めている企業だからこそ、「ムダを省いて最適化」という精神を徹底すべく、小さなことですがレイアウトについて注意喚起した次第です。