大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

コミュニケーション能力重視という愚行

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こんにちは、大石です。

先日、IT系専門学校の先生とお話ししている時に、先生から 「すごくいい技術を持っている子でも、口べただったりコミュニケーションが下手だというだけで採用されない子がいるんですよ」 という様なお話しを伺いました。 IT企業が技術のある子を採用しなくて誰をとるんだ?と思いますが、実際にIT企業の採用ページを見るとほとんど条件の最初に「コミュニケーション能力の高い方」と書いてあって、これは経団連の調査でも裏付けられています。 先日、IBMのマーティン・イェッター社長が来日した際に「世界の経営者は技術力を重視しているが、日本の経営者はコミュニケーション能力に偏重しており危険だ」という考えを示し、ニュースにもなりました。

そもそも、本当にコミュニケーション能力が高い人は、「あいつはコミュニケーション能力がない」とは言いません。なぜなら、そのような人は相手がどんな人であれ上手にコミュニケートし、相手の意見を引き出し、自分の意図を伝えることができるからです。つまり「コミュニケーション能力がない」ことを揶揄する人は自分自身にコミュニケーション能力が無いことを暴露してしまっているようなものです。 恐ろしいことに、これが国全体で起きている。 どの会社の採用ページを見ても「コミュニケーション能力のある方」などという言い方をしている。これは国レベルで「コミュニケーション能力が退化している」ことの証左と危惧します。

赤ん坊に「おまえはコミュニケーション能力が無い」などという人がいるでしょうか? 赤ん坊がコミュニケーションを上手にできないのは、単にどうすればよいか知らないだけです。 今時の若者も同様です。 私たちは、組織的に、若年層が様々な世代の人と接する機会を奪っている。これだけ核家族化・都市化が進めば、親戚やご近所と言った「年の離れた人々と接する機会」が激減するのは当然です。 私たち大人の世代は、それに代わる機会を提供してきたでしょうか? 今の若者が「年の離れた人々とコミュニケーションがとれない」ように見えるのは、そうした機会を奪い、そして自分自身も異なる考えや異なる世代とコミュニケーションが取れなくなりつつある、大人の問題です。

私たちは、はっきり「コミュニケーション能力は後天的に習得できるので、あった方がよいが就職時に必須の条件ではない」と明言しています。 それよりも技術や興味、謙虚さ、学ぶ力など、後天的に学習できない素養を重視します。

もしどこかで、採用担当の方がこのブログをご覧になっていらっしゃったら、お願いがあります。 ぜひ採用ページから「コミュニケーション能力が高い方募集」という文言を外して頂きたい。 そのようなメッセージは、「私の会社はコミュニケーション能力の高い大人がいません」と言っているようなものです。 ぜひ一人の大人として、大人のあるべき姿勢を一緒に示したいと考えます。

そして、一人でも多くの若者が「技術力があることがクールだ!」と思えるような環境を、社会を作っていきたいと、心から願っています。