大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

ZOZOSUITをレモンスカッシュにしたのは大英断だと思う理由

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こんにちは、大石です。

みなさん、もうZOZOSUITはオーダーされましたでしょうか? 無料で自分の身体のサイズを正確に測定できると言うことに加え、全身にセンサーが埋め込まれた近未来的なデザインということも話題になり、普段ZOZOTOWNのユーザーでない方でもオーダーされた方は結構いらっしゃったのではないでしょうか? かくいう私もその口で、発表されるや否やすぐ登録して到着を今か今かと待ち望んでいましたが、結局半年経っても届くことはなく半ば諦めムードが漂っていたところに「センサーはやっぱりやめます。今度はドットが書かれたピチピチタイツにしますー」というニュースが飛び込んできた、というのが現在の状況です。

  元々発表時のデザインが f:id:swx-ceoblog:20200803143340j:plain 近未来的でサイバーなデザインに加え、ビジネス的にも「ザ・IoT」というコンセプトが興味をそそるもので、非常に期待が高かったわけですが、これが

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こうなってしまったのは残念、という感覚は理解できます。 ネットでは「レモンスカッシュ」という声があがっているようです。 f:id:swx-ceoblog:20200803143348j:plain 言い得て妙ですね・・・

ですが、これは以下3つのポイントから、非常に素晴らしい、イノベーションともいえる大英断だと私は考えました。

ZOZOTOWNのビジネスとして

当たり前ですが、センサーとバッテリーが埋め込まれた衣類を大量に配布するというのは、普通に考えて悪夢です。故障や異常、バッテリー切れ、スマホとの接続サポートなど、考慮すべきことが信じられないほど多く「ユーザーの身体のサイズを正確に測定する」という目的に対して合理的な選択なのか、傍目で見ても疑問が残りました。 それに対して、今回配布するものがドットがプリントされただけの衣類になりますので、大量に生産でき、コストも大幅に削減でき、かつアプリのバージョンアップによってできることも増えます(センサー内蔵の場合、センサーの性能や場所以上のことはできません)。ソフトウェアのバージョンアップでユーザー体験が継続的によくなる、という点でも、センサーを廃したことはZOZOTOWNのビジネスにとって大きなプラス要因になりそうです。

ITの潮流として「センサー < 画像解析」

そもそもITの潮流として、「センサーで分かることもあるけど、今は画像で分かることが増えてきたので、できるだけ画像から分析することを優先しよう」という流れになってきていると感じます。 実際、昨年のAWSカンファレンス re:Inventでも、IoT事例よりも「画像解析」による事例の方が大きなウェイトを占めていました。例えばNFLでは、全てのゲームのイベント分析(パスキャッチ/インコンプリートの判別や、どの選手がどのように動いたのかの分析等)に、AWS+動画解析を使っているそうです。従来は、ボールとフィールドにセンサーを仕込んで、そこから得られたデータを元に分析、という流れが多かったように思えますが、今はリアルタイムに動画を解析することも(AWSの様なクラウドを利用すれば)実現可能なので、そちらに寄せているとのこと。他にも、JFK空港で顔認証によるゲート通過を実装している事例や、キックボクシングでの応用例など、画像・動画の解析で分かることはそちらでやる事例が増えているようです。 ZOZOSUITの仕様変更も、こうした流れに沿ったものと言えます。

エコシステムの拡大

もう一点、「レモンスカッシュアプローチ」が画期的だと思う点として、これを使えば「身体のサイズ測定だけでなく、身体の動きも正確に測定できる」という点にあります。 例えば(想像すると若干滑稽ですが)100m走のランナーがこれを着て走れば、筋肉の収縮と動作が同時に測定できますので、より速く走るためのフォーム改造と筋肉量の変化が効率よく測定できそうです。ゴルフのスイング改善にも効果的でしょうから、このスーツを着させて専用アプリでスイング計測を行うゴルフスクールなんかも出てきそうです。フィットネスクラブでは「ZOZOSUITのお腹のドットが楕円→円になることをコミットします!」なんてこともできそうです。 もちろん、身体のサイズはプライバシーの中でも非常にセンシティブな情報ですから取扱は注意が必要ですが、敢えてスーツとアプリを分離することで、ZOZOSUITを中心としたエコシステムの形成も期待できます。これは非常に大きなイノベーションになりそうです。

 

普通に考えるとここまで準備してきたものを全てキャンセルして(報道によると、ZOZOSUITの前バージョンのキャンセルのために40億円もの特損を計上するようです)、しかもネガティブなデザイン変更で消費者の拒否反応があることは明らかだったにも関わらず、ビジネスがスケールする方向に舵を切るという判断は、並大抵のことではないように思います。 トルコのことわざで「間違えたと思ったら、どれだけ遠くへ行っても引き返せ」というものがあるそうですが、まさにこれを地で行く判断に感服せざるを得ません。

イノベーションには反対意見や拒否反応がつきものです。ですが、レモンスカッシュアプローチはZOZOTOWNの未来にも、日本のITにも非常に大きなプラスの効果をもたらすものと思います。これからのITの行方を占う上でも、スタートトゥデイの英断に拍手を送り応援したいと思います。

 

 

 

ですが、剛力彩芽さんの件は許せません!!!