大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

ISO20000と稲葉山城

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こんにちは、大石です。

 

昨日、某社で開催されたISO20000(ITSMS)の認証取得セミナーに行ってきました。

ISO20000は未だ一般的な規格ではありませんので簡単に概要をご説明すると、主に「ITサービスの品質を確保するための規格」というものになります。

当社はシステム開発、自社サービス提供の両方を手がけており、どちらの場合もシステムの運用が大きな比重を占めています。ですから、システム運用サービスの品質向上は、会社としての非常に重要な課題であると認識しています。

 

ISO20000自体が有名でないことから「今取得すれば差別化につながる」と思っており、本当のことを言うとセミナー前まではISO20000の認証を取得する気マンマンで受講しに行ったのですが、受講後に一緒に行った役員(鈴木)から、「とるのはやめましょう」と言われ、取得を見送ることにしました。

その時の説明が面白かったのでご紹介したいと思います。

 

当社はもともと運用に注力していたこともあり、ISO20000で求められている、障害を繰り返さない仕組みやインシデント管理、システム構成要素(ソフトウェアやハードウェアの資産)の管理など、すでに出来ているところもかなりありました。これらは誰かから教えてもらったのではなくて、お客様に鍛えて頂いたり、自社で様々な知恵をみんなで出し合うことで為し得てきたことで、未だ発展途上にあると誰もが思っています。

実際のところ、今の当社の仕組みに規格として不足しているところをチョチョっと足せば、規格の認証自体は取れてしまうかもしれないのですが、それでは私たちが今までやってきた「自分たちで考え、自分たちで改善する仕組みを作る」という良い流れが失わせてしまう、というのです。

 

そして、その話の時に鈴木が言った一言がこれ。

 

司馬遼太郎の『国盗り物語』の中で、織田信長が難攻不落と謳われた稲葉山城を攻め落とした後、その城の見事さをみてこういったそうだ。

マムシ斎藤道三)めはこの城をつくったときから、守勢の立場にまわったのではないか』

 

これを聞いてハッと振り返ったのですが、確かに私は運用改善の会議の時に「この取り組みには終わりがない。継続的な改善こそが唯一の方策だ」と繰り返し述べています。そこに突然、国際標準規格という名の「終着」がやってくれば、探求の旅が終わってしまうのは容易に想像できることです。

 

 

完璧な城を手に入れれば攻める気持ちが失われてしまうのと同様、ISOという国際的規格の認証を取得すれば「これでもう大丈夫」という慢心が生まれるのはやむを得ないことです。

 

私は、一つ決めていることがあります。それは「自社ビルを持たない」こと。

自社ビルを持つというのは、「会社の限界はここまでです」と宣言しているようなものだと思うのです。

規格も同じで、取ってしまえば「規格以上の仕組み」を作ることはできないと思います。

 

私たちは規格という城を敢えて持たないことで、柔軟かつ拡張可能で、サービス品質の向上につながる仕組みを作り続けることができると思うのです。

当社はISO20000という規格の認証は取りませんが、認証を取っている会社よりも高い品質のサービスを提供することで、私たちの考えが正しいことを証明したいと思います。