大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

評価制度に付随する残酷な質問

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こんにちは、大石です。

現在当社では、社員の増加に伴い役員のマンツーマン評価だけでは細かいフォローが難しくなりつつあることから、「人事制度」なるものを作成中です。
そして、制度を作る中で、評価対象者に対してこういう問いが出てきました。

「あなたは、サーバーワークスという会社を通じて、どういう人になりたいのか?」

わたしは、この質問をさして
「非常に残酷な質問だけど、あえて問います」
という宣言をしました。
なぜ残酷か?この質問の裏には、「どういう人になりたいのか、その答えのない人は評価対象外です」という、非常に排他的な、暗黙のメッセージが込められているからです。

実際のところ、平均年齢が30歳という比較的若いメンバーで構成されている当社にとって、全員が「どういう人物になりたいか、明確にイメージできている」という状態は未だ遠い彼方です。私も「今、明確な答えを持っていなくても良い。イチローだって、生まれたときからプロ野球選手を目指していたわけではない。年齢とともに形成されていくものだ。」という話をしました。
ですが、少しずつではあっても、方向性は定めていかなければいけない。そのことを理解してもらうために、ドラッカーの著作「プロフェッショナルの条件」で紹介されているドラッカー自身のエピソードを紹介しました。

私が13歳のとき、宗教のすばらしい先生がいた。教室の中を歩きながら、「何によって憶えられたいかね」と聞いた。誰も答えられなかった。先生は笑いながらこういった。「今答えられるとは思わない。でも、50歳になっても答えられなければ、人生を無駄にしたことになるよ」

じゃあどうするか?
私の答えは、「仮決めでいいんじゃないか?」というものです。
はじめに立てる目標やゴールは、決して遠大で崇高なものでなくてもよい。
達成可能で、自分が「これなら」と思えるゴールを設定できるかどうかが重要だと思っています。

米GEの元CEO ジャック・ウェルチがこんなことを言っています。

自信の貯金を始める必要がある。最初に仕事でも家庭のことでもかまわないから、現実的な目標を立てる。この目標は達成可能なハードルの低いものにしておくこと。最初に期待を膨らませすぎてはいけない。その目標を達成するといい気分になるはずだ。次に、もう少しだけ大きな目標を立てる。少し大胆で、ちょっと努力が必要なくらいがベストだ。その目標を達成するともっといい気分になる。こうした具合にゆっくりと着実に前進し、一歩ずつ自信を築くことができる。

 

では、仮に決めた目標が違っていたら?

あのマイケル・ジョーダンですら、一時は「オレのゴールは野球かも?」と思ったときがあったのです。それは結果的に違っていたにせよ、むしろ違うことがわかったからこそ、バスケットボールで2回目のスリーピートという偉大な成功を収めることができた。

偉大な人物ですら、目標に最短距離でたどり着くことはむしろ少ないと感じています。目標を達成する能力とは、ショートカットをする小手先のテクではなく、自分で仮説を立て、目標を設定し、失敗を重ねることに他ならない。失敗によって自分のゴールと違う方向を排除していくからこそ、自分の能力を活かした仕事に集中し、結果として大きな目標を達成することができるのだと考えます。

最近の教育では「キミの可能性は無限だ」と教えるそうですが、詭弁という他ない。誰もがなりたい自分になれることが担保されているわけではない。可能性は無限でも、時間は有限です。選択肢を排除していくことでしか、卓越性の追及はできません。

制度を活用し、成長し続けるためには、会社だけでなく個人も「何によって憶えられたいか?という目標」を設定しなくてはいけない。そういうステージに来たということを社員のみなさんにも理解してもらうべく、冒頭の「残酷な質問」に至ったわけです。


人事制度の精神として、こんな話をしたのですが、実はこの話、自分に対しても言っています。
口に出すことで、自分へのプレッシャーになる。
みなさんに、偉そうな自説を述べさせていただく機会が豊富にあることに感謝しつつ、まずは2011年の目標を見据え、前進していきたいと思います。