大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

会津大学訪問:目的と手段の逆転

記事タイトルとURLをコピーする

こんにちは、大石です。

先日、2012年新卒採用活動の一環として、会津大学まで出向いてキャリア教育授業の一つに、パネリストとして参加して参りました。

ご存じない方の為にご説明しておくと、会津大学は創立1993年という比較的若い県立大学で、コンピューター専門の4大として非常に高い知名度を誇っています。2010年9月のPRESIDENTで、卒業生の平均年収がもっとも高い理系大学として紹介された実績もあるそうです。また、卒業が非常に難しいそうで、英語が必修科目であるにもかかわらず、教授によっては50%程度しか単位を出さないコマもあるなど、かなり高度な授業が行われているそうです。

最初に私が行ったときには「休校ですか?」と思うほど学内が静まりかえっており、人の姿がまったく見当たらなかったのですが、後から聞くと「授業中だから」とのこと。普通の(?)大学に行っていた人にはショッキングな話ですが、高校と同じイメージらしくサボったりコマの空き時間にダベったりという姿は全く見当たりません。「勉強するのが当たり前」という環境なんだそうです。

会津大学

そんな会津大学ですが、就職課へ行ったときに、こんなことがありました。

一般的な就職活動の話をしている際に

私「今年はさすがに貴校でも就職が厳しい状況ですか?」 就職課「そうですねー。今年は厳しいですね。95%前後になってしまいそうです」 ※厚生労働省の調査によると、2010年10月時点で、全体の内定率は57.6%だそうです。 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000weq7.html

本学がどれだけ高い内定率を誇っているかわかるエピソードだと思うのですが、私が注目したのは「会津大学が特別な就職支援活動を行っているわけではない」ということです。

大学が手取り足取りキャリア支援をしたり、SPIの模擬試験をやったりといった手厚い支援があるわけではない。 言い回しの是非はともかく「ただ勉強しているだけ」なのです。

企業としては、優秀な学生が欲しい。 当たり前のことです。 そしてほとんどの企業にとっての「優秀」という基準とは、「就職活動」というイベントを小手先のテクで乗り切ることよりも 「自分の興味があることに情熱をもって打ち込めるか」 「社会人になっても、自分の能力を自分で開発できる基礎体力がついているか」 ということだと思うのです。

そして、私がみる限り、会津大学は愚直なほどこの道を全うしている。そのことが、皮肉なことに、キャリア教育や就職支援に熱心な学校より、魅力的な学生を輩出することにつながっているわけです。

「就職したい」という情熱も、目的意識も、そのために必要な(面接やSPIなどの)知識も、すべての面で就職活動に熱心な学生の方が上回っていることはよくあります。 ですが、それによって学業の時間が割かれ、結果的に「企業が欲する人材像からどんどんかけ離れていく」というジレンマが生まれているわけです。

就職活動が学生の時間を削っているという事実に関しては、(小さいながらも)私たちもその加害者です。そして、どうすれば学生が本分を全うしながら満足のいく就職活動ができるのかについて、真剣に考え実践していかなければいけない。大学は浪人が当然なのに就職は浪人が許されないという不条理は排除していかなければいけないと、真剣に考えています。

私たちも、気づかないうちに目的と手段が逆行していることはないか?と自問自答する良い機会を得ることができた会津出張でした。

p.s. 東山温泉に泊まったのですが、リーズナブルだし市内から近いし眺めもよくお風呂はステキで最高でした!オススメです。