大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

仕事中のヘッドフォン

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こんにちは、大石です。

エキサイトさんのニュースが元になって、ネットで「仕事中のヘッドフォンがありなのか、なしなのか」が議論になっていました。
http://www.excite.co.jp/News/society/20100109/JCast_56415.html

元ネタが「スラッシュドット」というエンジニア向けサイトへの投稿だったこともあり、比較的擁護派が多いようです。エンジニアの方にとっては使った方が自然と集中できるという気持ちがあることも理解できますが、元記事でも「モラルの問題でおすすめできない」と言っている通り、微妙な問題の様です。

職種によっても違いますし、状況にもよりますので「ネクタイorノーネクタイ」と同様、この答えに一般解を求めること自体に無理があるように思われますが、当社としては「原則は禁止だが、部分的な利用はプロジェクトマネージャーに任せる」ことにしたいと考えています。

以前当社ホームページの役員インタビュー上でも答えたことがあるのですが、仕事は「インプットとアウトプットのバランス」が大切だと考えています。ただし、総量としてのバランスは大切ですが、順番ははっきりと規定されていて「必ずインプットが先」です。技術でも、新しいサービスのアイディアでも、営業のアクションでも、どんな仕事でも例外なく「先ずインプットありき」です。「業務改革プロジェクト」が立ち上がるのも、「このままではいかん」という経営者なりのインプットが先にあってのことです。

そして、(日本のほとんどの会社がそうしているように)ある一つの場所に集まって、壁で仕切らずに業務をすることの大きなメリットとして、「インプットが得られやすい」というものがあるわけですが、ヘッドフォンでこれを遮断してしまうという行為は、「将来のアウトプットの源泉を自ら放棄している」ことに繋がってしまうわけです。
加えて言えば、自分だけがヘッドフォンをするという行為は「あなたのいうことは聞きません」という看板を自分の周りに立てていることと同義です。自分はそうは思っていないかもしれないが、周りからはそう見える。むしろそのような意識のギャップこそが問題の気もしますが、いずれにせよそういう態度の人のところに情報は集まってこない。

こうしたデメリットを考えれば、原則禁止とするのは普通の会社では良いことのように思えます。

ところが、エンジニアという職種はどうしてもアウトプットにかける時間が長い。しかも集中して業務に当たることが求められますから、下手に五月雨でやってくるインプットのせいで集中している時間を細切れにされたくない。これは効率の観点から言って当然のことです。
当社でも、可能な限りインプットの時間をまとめるために、必ずプロジェクト単位で朝会を実施しています。これは、プロジェクトマネージャーからの指示やプロジェクトの状況、顧客からのリクエストなど、プロジェクト遂行のために必要なインプットをまとめてやってしまおう、というのが狙いの一つです。
逆に言えばアウトプットの時間もまとめた方が良いわけですから、状況によっては、プロジェクトマネージャーから「今日の14時から16時は集中タイム。この間はお互いの会話をゼロにして集中。この時間帯に限りヘッドフォンを使用しても良い」などの指示があってもいいわけです。

ミソは「時間を区切って、やるならチーム全員でやる」ところです。
一人だけがアウトプットをブーストしようとすると、先に言った弊害が出てしまう。チーム全体でアウトプットをブーストするような仕掛けであれば、お互い気持ちよくやれるし、会社全体としてもハッピーになるわけです(オリジナルのアイディアは、トリンプの元社長である吉越氏のものです。著書はこちら)。

 

先日、パートナー企業の経営者と会食に行ったのですが、その席で先方から
「この前原宿に行ったら、近くの席の若い子が『あたしまた風俗ではたらこっかな~~!』と大きな声で話していて、驚きました」
というエピソードを伺いました。
これって周りの人の存在を無視しているわけですよね。電車内での化粧や座り込みなども同類でしょう。
私たちは「無視されている」感に無性に苛立ちを覚えるようです。

社内で自分のアウトプットにのみフォーカスしてヘッドフォンをする行為も、他人を無視するという意味では同じですから、周りの人が同じ苛立ちを覚えるのだと思います。
ですが、やり方によっては会社の生産性を上げる強力な武器にもなる。
私たちは、「周りの人が気分悪いからヘッドフォン全面禁止」というのではなく、小さな工夫を積み重ねて、気持ちよく仕事ができるハッピーな職場を作っていきたいと考えています。