大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

2021年8月版 クラウド業界アップデート 〜AWS東京リージョンでDiret Connectに障害〜

こんにちは、大石です。

今月も忙しいビジネスパーソンの皆さまに向けて、先月(2021年8月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

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2021年8月のクラウド関連トップニュース 〜AWS東京リージョンでDiret Connectに障害

  • 今月のトップは残念ながらこちらです。AWSの東京リージョンに専用線接続(Direct Connect = DXと略します)を行っているお客様の環境で、通信ができなくなるという障害が発生しました
  • AWSの障害は複数のリージョンを使うことで回避できるものが多いのですが、今回の障害は「仮にDXを二重化していても防げなかった」点がこれまでの障害とは性格が異なる点です。ただし、専用線VPN接続の場合は(手動でフェイルオーバーすれば)回避できたことや、複数リージョンを用いたDR構成の場合は回避できたことから「全く回避方法がない障害」というわけではなかったことに注意が必要です。実際に当社のお客様でも、このような構成で障害を回避された方はいらっしゃいました
  • 障害の内容はAWSから公式ドキュメントが出ていますが、一言で言うと「新しく開発されたプロトコルのバグ」だそうです。Publickeyの解説が非常に読みやすく、正式ドキュメントに注釈を付ける形で解説されておりますので、ご一読をお奨めします

    www.publickey1.jp

  • 当社では、この障害が発生したすぐ後からWebサイト上で状況を公開するとともに、対応策などについて(その時点での情報を元に)お客様、AWS利用ユーザーと共有して参りました。現時点での共有内容は下のリンクからご覧いただけますので、DXをご利用中の方は是非ご一読ください

    www.serverworks.co.jp

  • また、AWSをご利用中の方からは、「障害期間中に得られる情報が限定的だった」というお声も耳にしました。AWSの最上位サポートに加入すればTAMという専門サポートがつきますし、また当社との契約でも(上のペーパーの様に)必要な情報をタイムリーにご提供することができますクラウドは運用が非常に重要ですが、殆どの場合で、当社の様に多数のAWSプロジェクトを経験している企業の方が一般のユーザー企業よりも運用の知見が蓄積しています。
    AWS利用の際には、当社の様なパートナーを有効に活用し、アプリケーションをはじめとする戦略領域は内製化を、インフラの様な汎用サービスはアウトソースを有効に活用するという戦略が現実解と考えます
  • なお、このCloudUpdateでは基本的に前の月のニュースを取り上げていますが、こちらの障害は2021年9月2日に発生したもので、非常にホットなトピックであることから今月の記事として取り上げさせていただきました

注目AWSトピックス

  1. AWSNSAと1兆円の契約
    AWS国家安全保障局NSA)と1兆円規模の契約を締結したと報じられました。早速これに対してMicrosoftが抗議をしているとのこと。国防総省のプロジェクトJEDIでは約3年に渡りAWS vs Microsoft vs Oracleで熾烈な訴訟合戦を繰り広げた挙げ句、プロジェクトそのものがキャンセルになる(正確にはJWCCという別プロジェクトへ)という憂き目を見たことから、今回もすんなりと事が進むのか経緯が注目されます
  2.  EC2が15周年
    仮想コンピューターの基盤であるEC2が2006年に誕生し、先月で15周年を迎えたとのことです!EBSが2008年ですから、実に2年近くの間「インスタンスストア」と呼ばれる、仮想サーバーをシャットダウンすると中のデータが消えてしまうという仕様で使われていたことになります。
    AWSを立ち上げた現Amazon.comのCEOであるAndy Jassyさんは、最初にこの「サービスをAES(Amazon Execution Service)と名付けていた」とAWSエバンジェリストのブログで初めて明かされました。これからもAWSの基盤としての活躍が期待されます

その他クラウド関連ニュース

  1. Microsoft365が値上げ
    M365, O365の一部プランが2022年3月に値上げされるとのことです。M365は大分市場に普及した感がありますので、普及しきった後の値上げには反発も予想されますが、一方でTeamsがバンドルされたりと機能追加も行われていますので判断は分かれそうです。
個人的には、後付けでTeamsがバンドルされたことを理由に値上げされてもあまり納得感はないので、もう少しユーザーが必要サービスをきちんと取捨選択できるプライシングを期待したいところです
  2. クラウドインフラ市場は39%成長
    Synergy Researchの調べにより、2021年の4-6月期もクラウドインフラ市場は順調に成長し、売上ベースで39%成長し4.6兆円規模になったと報じられました。市場シェアはAWSが33%でトップを維持しているようですが、Microsoftも前年同期比51%成長と猛追しており市場シェアは20%に達した模様です。

    特筆すべきがCanalys社の分析で、「顧客はマルチクラウド戦略によってカーボン・フットプリントの最小化を実現するだろう」と示しており、CO2削減が国家目標となった現在、再生可能エネルギーを大規模に用いているAWSMicrosoft, Googleなどのクラウドを用いることでCO2排出量の削減が進んでいくことを示しています

先月のサーバーワークス関連ニュース

  • 合弁会社「 G-gen(ジージェン)」を設立し、Google Cloud事業へ本格参入
    韓国のクラウドインテグレーターであるBespin Global社と共同でG-genを設立し、GCPのライセンス提供やインテグレーション、保守サービスの提供を開始します。特に提供ライセンスの価格にこだわり、G-gen経由でGCPをお使いのお客様には▲5%で提供いたします!
    インフラとしてのクラウド(いわゆるIaaS)はAWSが中心になることは変わりませんが、例えばBigQueryなどの高速な大量データの解析や、ゼロトラスト環境の構築(BeyondCorp)など、AWSでのカバレッジが薄い領域で「AWSGCPを組み合わせて利用したい」というリクエストが増えつつあります。こうしたお客様が期待される、より完全なクラウド戦略の実行をサーバーワークスとG-genのタッグでサポートして参ります。ご期待下さい!

まとめ

  • クラウドの利用に障害はつきもの

    このブログでも幾度となくお伝えしている通り、クラウドでもオンプレでも、コンピューターに障害はつきものです。クラウドの利用にあたっては、当社の様な専門家をうまく使い、想定されるトラブルとその対処法を十分に吟味し、「トラブルが起きないシステム」ではなく「何が起きても素早く対応できるシステム」を目指すのが良い選択だと考えます
  • マルチクラウドは進むが、目的ではなく「手段」
    
当社も子会社を通じてGCPの提供を始めますが、当社は「マルチクラウドをゴールにしている」わけではありません。多くの方がマルチクラウドというとこのようなイメージ

    f:id:swx-ooishi:20210914202407p:plain

    を持たれるようですが、これはAWS以外のベンダーによる「AWS以外のクラウドも使ってくれ、というマーケティングメッセージ」と認識した方が正確です。
実際の現場で起きているマルチクラウドのニーズはこのようなイメージで、

    f:id:swx-ooishi:20210914202444p:plain


    あくまでビジネス目標に対して必要なサービスを組み合わせていった結果、「たまたまAWSGCPを組み合わせる形になった」というのが本当のところです。

    クラウドがどれだけ優れた道具であっても、ITは本質的に「手段」です。皆さまが達成したいビジネス目標やお客様へのサービス向上のために、手段として有効に活用頂ければと思います!

2021年7月版 クラウド業界アップデート 〜(ウマ娘は動かなくても)本命のWindows 365登場〜

こんにちは、大石です。

今月も忙しいビジネスパーソンの皆さまに向けて、先月(2021年7月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

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youtu.be

 

2021年7月のクラウド関連トップニュース 〜Microsoftが仮想デスクトップサービス Windows 365を発表

7月に発表され、8月2日には実際に利用できるようになっていましたので、早速私も使ってみました。

実際の使用感は動画でご確認いただきたいと思いますが、さすがにMS謹製だけあって快適です。利用者側のネットワーク環境にもよりますが、ネットワークさえよければ端末のスペックに関わらずどこからでも自分のWindows環境にアクセスできるのはかなり便利です。

これまで仮想デスクトップサービスを利用する場合、比較的大規模な環境でAzure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)を用いるケースは多く見受けられましたが、転送量やストレージによって料金が変動したり、仮想マシンのサイズ変更が若干難しいなどの制約もあって大規模導入が中心だったように見受けられます。それに対してWindows 365では、テンプレートから選ぶだけで簡単に仮想マシンを起動でき、料金もわかりやすいため、中小規模での導入に最適化されている印象です。

ブラウザ(Chrome)でもそれなりに快適に動作しますが、やはりRemote Desktopアプリの方が快適です。なお、私の環境(M1 iMac)でRDP接続を選択するとなぜか.rdpwという拡張子でRDPファイルがダウンロードされますが、そのままでは開けなかったので、拡張子を.rdpにリネームしたところ接続することができました(ご利用は自己責任でお願いします)。

大注目のW365ですが、残念な点を2つ。

  • 8/6現在、無料提供枠が売り切れてしまったとのことで無償トライアルはできませんが、また復活の予定とのこと。ご興味のある方はこちらからお試しになることをお奨めします!
  • ウマ娘は動きません!GPUがないので当たり前ですが)「これでどこでも育成可能」と期待されていた方は、Windows 11のAndroidアプリ対応を待ちましょう

注目AWSトピックス

  • JEDIプロジェクトがキャンセルに。AWSとAzureの痛み分けか?
    以前よりクラウド界隈で話題になっていた、1兆円とも言われる巨額を投じて米国防総省が実行しようとしていたクラウド移行プロジェクト「JEDI」が、数年にわたる訴訟合戦の末に最終的にはキャンセルされることになりました。国防総省は新たにJWCCというマルチベンダー型のプロジェクトをスタートし、これはAWSMicrosoftの両社に提案を求めていると報道されており、時勢に従った判断になったように思われます。
  • AWSの決算が発表に
    2Qの売上は1兆6,300億円・前年同期比で37%成長とのことで、この規模に至っても30%を超える成長を続けていることが驚きをもって迎えられているようです。7月からはAmazon.comのトップがAWS生みの親であるAndy Jassy氏に替わることもあり、よい置き土産ができたのではないでしょうか?

その他クラウド関連ニュース

  • Googleが国内でもモバイル決済サービスを開始へ
    Google社が日本国内でpringという資金移動を手がけるメタップス傘下のベンチャーを買収し、国内で資金移動業に参入すると報じられました。既にApple Cardの発行を手がけるゴールドマン・サックスが国内で銀行免許を取得し「Apple Cardの来日か?」と囁かれていたり、来年にはLINE PayとPayPayの統合が予定されていたりと、モバイル決済が非常にホットな市場になってきました。

    市場シェアはPayPayが取り切ると思いますが、個人的にはApple Cardを使ってみたいところです。
  • Slackが音声のみのコミュニケーション機能「Huddle」をリリース
    Clubhouseの登場などで注目を浴びる音声によるコミュニケーションですが、Slackでも音声で「ちょっとした会話」を実現する「Huddle」という機能がリリースされました。カメラを付けなくてよいので、家からテレワークをしている人などでも気楽に雑談や「ちょっといい?」を実現できる、ユニークなソリューションになっています。
    裏側はAmazon Chimeのテクノロジーを使っているとのことで、2020年8月に発表されたSlackとAWSとの協業が具体化したものと見られています。当社でも試用中ですので、追ってレポートする予定です。

先月のサーバーワークス関連ニュース

  • ガートナー社 「パブリック・クラウド・インフラストラクチャの実装∕運⽤サービスのマーケット・ガイド」に掲載
    米調査会社のガートナーは、CIOに対する影響力の高いリサーチ/コンサルティング会社として知られていますが、同社のレポートに当社も昨年に引き続き掲載されることになりました。特に米国では「ガートナーのレポートに載らなければ調達の候補に入らない」と言われるほど影響力のあるもので、私どもとしても光栄に感じつつ、より高い評価を得られるようサービスの内容・質の向上に努めて参ります。
  • エクレクトと協業しAWSとZendeskによる次世代型コンタクトセンターサービスを拡充
    エクレクト社は、コンタクトセンターを提供するためのクラウドサービスを提供する、アジアNo.1のZenDesk専業インテグレーターです。同社と協業することで、複数チャネル(主にZenDeskとAmazon Connectを想定)による顧客接点の運用効率化からコスト削減まで一括提案できる体制を整えます。
    コロナ禍で、これまでのような三密型コールセンターの継続が難しくなる中、同社との協業で新しい形のコンタクトセンターを国内に拡げていきたいと思います。

まとめ

  • Windows 365の登場でようやく仮想デスクトップが本格化か
    W365にはMicrosoft謹製の強みが、またAWSのWorkSpacesも安定性やGPU性能などに一日の長があり、PCの入手が予定通り進まない状況が継続しそうな中、企業のクライアント戦略がどう変化するのか注目されます(ちなみに著者はSun Ray 170時代からの筋金入りのシンクライアント信者です)
  • 社内SNSでも「ちょっといい?」
    テレワークの継続によってあたらしい働き方が模索される中、Huddleの様な「社内での音声によるちょっとした会話」が、コミュニケーションの隙間を埋める存在になり得るのか期待されます。

デルタ株の蔓延で、これまでで最も酷い勢いで感染が拡がりそうな状況です。
ITに携わる方であれば比較的テレワークを継続しやすいものと思いますので、医療従事者の皆さまやエッセンシャルワーカーの方に感謝しつつ、クラウドを効果的に用いて「物理的な接触がなくても、事業は続けられる」ことを実証して参りましょう!

2021年6月版 クラウド業界アップデート 「10は最後のWindows」ではなかった!Windows11が発表

こんにちは、大石です。

今月も忙しいビジネスパーソンの皆さまに向けて、先月(2021年6月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

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2021年6月のクラウド関連トップニュース 〜

  • Windows 10は最後のWindowsではなかった!Windows 11がリリースへ!「Windowsは10が最後のバージョン」という話を聞いた方も多かったと思いますが、どうも真実はこちらの記事に書かれていることのようで「Microsoftが否定しなかったためにそうした認識が拡がった」というのが本当のところのようです。

    新しいバージョンのWindowsが出てくると言うことで、企業の情報システムとしては以下のような検討が必要になりそうです。
    ①端末の買い換え:新しいWindowsは要求スペックがかなり上がっている様です(残念ながら今のPCがWindows 11に対応しているかどうかをチェックするアプリは公開が中止されてしまいました)。Androidアプリの対応など、より高いスペックが求められるため、場合によってはPCの買い換えなどの検討が必要です
    Androidアプリの利活用Windows 11の目玉はAndroidアプリ対応です。企業内でモバイル向けに作成されたアプリケーションを展開することもできるようですので(.apkファイルも展開可能と発表されています)、社内の業務アプリをAndroid向けに作成すれば、スマホでもデスクトップ(Windows 11)でも使えるということが実現できそうです。アプリケーション開発戦略にも見直しが求められます
    Microsoft Teamsの検討:企業でWindows 11にアップグレードする大きなメリットとして「WindowsとTeamsの統合」があります。タスクバーから直接Teamsにアクセスできるようになると説明されています。未だメールなどのコミュニケーションに頼っている企業は、これを機にTeamsの検討が求められそうです

注目AWSトピックス

  1. AWSがWickrを買収。ビデオ会議サービスを拡充へ
    AWSは2020年6月にSlackとの提携を発表していましたが、目立った効果のないままSlackがSalesforceに買収されてしまったため、メッセージングサービスの戦略を練り直す必要に迫られていたものと推察されます。拡大に成功しているとはいえないChime、セキュリティに不安を抱えるZoomに対抗して、セキュリティに提供のあるWickrを買収することで、ビジネス用途のメッセージングサービスを拡充し、MicrosoftGoogleに対抗する戦略と考えられます
  2. AWS Bug Bustがリリース
    ソフトウェアのバグの発見して修正するコンペティションを、自分たちで簡単に実施するサービスがリリースされました。元々「ソフトウェアのバグを発見した人に賞金を出す」という取り組みは私の知る限りNetscapeが最初に始めたものだと思いますが、こうした取り組みをより簡単に実行できるようになることが期待されます。

その他クラウド関連ニュース

  1. Fastly, Akamaiの障害
    6月8日にCDN(Content Delivery Network)大手であるFastly社のサービスに障害が発生し、これらを使っていたサービスも接続できないなどの影響が出ました(国内では日経新聞、メルカリ、TVer、AbemaTV等。米国ではThe New York Times, Reddit, Twitch, PayPal等)。米AmazonもFastlyを用いていた様ですが、Amazonは複数のCDNを用いる構成になっており影響を受けた時間が短かったようです。一方でFastlyに頼っていたサービスは長時間に渡って影響を受けてしまったようです。
    また、6月17日にはCDN大手のAkamaiでも障害が発生し、American Airlines, Delta航空など米国の大手サイトを中心に影響が発生したようです。
    いずれもソフトウェアのバグが原因と発表されており、クラウドサービスの影響が
  2. Appleの開発者向けイベントWWDCで、Zoom対抗機能が発表に
    MicrosoftがTeamsを伸ばす中、AppleiOS標準のFaceTimeを「iOS以外のユーザーでも参加可能」とすることでビジネス用途にも拡げる計画の様です。TeamsはOSとの統合も計画されていたり、PowerPointの資料を共有したりする体験が非常に良く出来ている一方、FaceTimeは画像/音声のクオリティが非常に高く、どのように使わけられるのか注目されます。

先月のサーバーワークス関連ニュース

  1. 導入実績が900社、10,000プロジェクトを突破
    お陰様で記念すべき10,000プロジェクト目を受注させていただきました。平均で1社のお客様から11プロジェクトの受注がある計算となり、多くのお客様が「クラウドの適用範囲を増やしている」ことがおわかりになると思います。
    特にテレワーク需要で「Amazon WorkSpaces」は169%、リモートアクセスVPNAWS Client VPN」は15,690%利用増加致しました。
  2. 大伸社様のSAP ERPのAWS移行事例を公開
    B2B広告に実績のある大阪のマーケティング会社であるテスト大伸社様が、基幹システムSAP ERPAWSへ移行されました。

まとめ

  • コンピューターの利用シーンが複雑化するにつれ「統合」が再度キーワードに
    AppleがCPU,OS,モバイル,アプリストアを統合して成功しているように、MicrosoftもOS,モバイルアプリ,クラウドサービス等を統合する方向に。「ロックインは悪」と決めつけるのでは無く、ロックインによる負の影響と統合によって得られるメリットを公平に判断すべき
  • クラウドを用いたシステムの障害耐性を設計するのは利用者自身
    可用性99%のクラウドサービスであっても、直列に5つ並べば99%^5 ≒ 95%まで可用性は低下。直列配置を避け分散配置するか、障害発生時に別な対応を取るなど、基本的な考え方はこれまでと同様。「クラウドは安定性が低い」のではなく、「適した使い方を学ぶ必要がある」と認識すべき

 

 

2021年5月版 クラウド業界アップデート AWS Summitでネコに嫉妬・・!ネコを出すなんて反則!!

こんにちは、大石です。

今月も忙しいビジネスマン、ビジネスウーマンの皆さまに向けて、先月(2021年5月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

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2021年5月のクラウド関連トップニュース 〜AWS Summit Onlineが開催〜

  • 5月のメイントピックスは「AWS Summit Onlineの開催」です。残念ながらコロナ禍で物理的な開催は今年も見送られましたが、オンラインでの開催にも関わらず特に初日の基調講演は多くの方が視聴されたようで、SNSでも大きな話題となっていました。以下、初日の基調講演の一部をお伝えします
  • AWSJ長崎社長からはAWSの堅調な業績が発表されました。AWSの年間売上は2020年会計年度で約4.9兆円、成長率は2021年3月期の前年同期比で32.1%増であること。またAWSのパートナーは国内で345社に上ることが伝えられました
  • DeNAの南場社長からは、同社がAWSを用いて、1日50億リクエスト/3000台にも上る物理サーバーからなるシステムを全てクラウドに移行したことが告げられました(なお、これ以前に南場社長はGCPのイベントに登壇してGCPにも移行していることを公開していることから、全部AWSというわけではないようです)
    クラウドによってエンジニアにより付加価値の高い業務に携わってもらうという強いメッセージは、多くの共感を呼びました
  • Catlogというネコの見守りサービスを提供している、RABO社の伊豫社長が登壇されたのですが、正直、伊豫社長が全て持って行ってしまいました。「ネコさま」と称してネコの生活をIoTデバイスで見守るというコンセプトのサービスは、キャッチーなプレゼンも相まって抜群のインパクトでした

注目AWSトピックス

 

  • AWSのCEOにAdam Selipsky氏が就任決定
    AWSのCEOだったAndy Jassy氏がAmazon.comのCEOに就任することになり、AWSの後任CEO人事が注目されていましたが、元AWSのVPで、現TableauのCEOでもあるAdam Selipsky氏が就任することが発表されました。
    Adam Selipsky氏は2005年から2016年の間、営業活動等で複数回来日してAWSのパートナーや顧客との接点も作っていたので、ご存じの方も多いのではないでしょうか?
    ちなみにAdamさんは大学こそハーバードですが、5歳から12歳まで、ビル・ゲイツも通ったシアトルのプライベートスクールに通っていたそうで、シアトルのフットボールチーム、シーホークスの大ファンでもあるんだとか。

 

その他クラウド関連ニュース

  1. GCP上に実装されたネット銀行「みんなの銀行」がサービス開始
    ふくおかFGがアクセンチュアと組んでGCP上で銀行サービスを提供すると以前よりアナウンスされていましたが、いよいよ5/28に正式サービスインしました。
    非常にわかりやすく、かつモバイルに特化したユーザーインターフェースと、eKYCをスマホのカメラを使って行うという新しい取り組みが注目されています。
    現状はユーザーのメリットが限定的で、口座振替ができないなどの制限もあるため利用は限定的になるものと思われますが、既存のシステムよりもフットワーク良く機能の追加ができそうですので、今後のサービス展開が大いに期待されます。
  2. Salesforceが大規模障害
    5月12日AM、Salesforceの複数のサービスが利用できなくなるという障害が発生しました。残念ながらワクチン接種予約システムにも影響がでてしまい、影響の大きさがうかがい知れます(残念ながら当社のシステムにも一部影響がでてしまいました)。
  3. Zoom Eventsを始め、オンラインイベント向けSaaSが続々登場
    Web会議最大手のZoomが、オンラインイベントを実現するためのZoom Eventsを発表しました(正確には、以前から提供していたOn Zoomを統合)。近々正式リリースとのことで、今年中にはZoom Eventsを用いたバーチャルカンファレンスが世界中で開催されそうです。
    国内でもEventHubやoViceなど、オンラインイベント、バーチャルイベントを実現するSaaSが続々と登場しており、物理一本足だったカンファレンス市場に一石を投じています(ただし、ワクチン接種が一巡した後にどうなるのかはしばらく様子見となりそうです)。

先月のサーバーワークス関連ニュース

  1. 当社所属のエンジニアが 2021 APN Ambassador / Top Engineers / ALL AWS Certifications Engineers に選出
    アンバサダーには2名、トップエンジニアには3名、All Certificationsには7名のエンジニアが選出されました!
  2. コールセンターのアウトバウンドコールを自動化する「オートコール導入サービス for Amazon Connect」をリリース
    自動的に与えられたリストに対して電話をかけて、繋がった場合だけ通話できるようにする、というソリューションを提供します。これによって、特定の業務(注文の確認や督促、選挙活動など)における電話の効率的な運用を可能にします
  3. 「Cloud Automator」に「日付スキップ機能」を追加
    特定の日のみ例外的にジョブの実行をスキップさせることができるようにすることで、従来のタイマートリガーでは実現できなかった「土日・祝日ではない、店舗独自の休業日にEC2インスタンスを起動ジョブを実行しない」といったきめの細かい運用が出来るようになります。

まとめ

  • トップのメッセージが示す「ITの課題は70%以上が非技術的なもの」という現実
    AWSの長崎社長やDeNAの南場社長が示した通り、ITを経営に取り込んで事業を成長させるという方針はトップが示すもので、それがIT(クラウド)を成長ドライバーにできるかどうかの分かれ目になっているということが示されました。
    DXにはこれまで以上にトップの関与が求められそうです。
  • クラウドがいよいよ金融機関でも稼働開始
    みんなの銀行はGCPを中心に複数のクラウドを用いていると報道されていますが、5月には北國銀行がAzure上で勘定系システムが稼働開始と表明するなど、いよいよ金融機関での稼働が始まっています。金融サービスの充実にはクラウドサービスの利用が待ったなしの状態ですが、フィンテック系のベンチャーが間隙を縫ってこの市場を取り切るのか、それともみんなの銀行の様に既存の金融機関がDXを通じてサービスを拡充するのか、市場動向が大いに注目されます。

AWS Summitは「ネコ様」に全て持って行かれてしまいましたね・・。
サイバーコミュニケーションズの2020年調査によれば、YouTube視聴における全世代でのトップカテゴリーは「音楽」ですが、40代以降に限って言うと2位が「動物」なんだとか。ようはネコです。ネコを出しておけばおっさんが釣れるワケです。これは非常に悔しい結果です。私たちがいくら頑張ってクラウドのコンテンツを用意しても、ネコ様にはかなわないワケです・・・。これには嫉妬がとまりません。
来月からCloud UpdateではなくCat Updateになってしまうかもしれませんが、その際は「ネコの魅力に抗えなかったんだなぁ」と暖かく見守って頂ければ幸いです。。

2021年4月版 クラウド業界アップデート 「Appleがモノの位置を特定するAirTagを投入」

こんにちは、大石です。

みなさま、緊急事態宣言下でのゴールデンウィークはいかがでしたでしょうか?報道では行楽地の混雑などが報じられておりましたが、距離を保ってみなさまで一緒に感染症の流行を抑えて参りましょう。

今月も忙しいビジネスマン、ビジネスウーマンの皆さまに向けて、先月(2021年4月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

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2021年4月のクラウド関連トップニュース 〜Appleがモノの位置を特定するAirTagを投入〜

  • 4月はちょっと変わったニュースをトップに取り上げました。Appleが500円玉サイズで、位置を特定することができるAirTagを市場に投入したというニュースです
  • このタグ、持ち主のiPhoneと連携するだけでなく、持ち主以外のiPhoneとも連携して、持ち主に場所を教えてくれることが特徴です(持ち主以外の人がタグを取得しても、持ち主の場所などが特定されることはありません)。これは累計で20億台も出荷されているiPhoneだからこそ実現できるアプリケーションで、iPhoneの新たなキラーアプリケーションになる可能性を秘めています。
  • これまで、このような広範なネットワークをカバーするIoTデバイスのためには広域をカバーする通信機能が必要でしたが、AirTagではBluetoothUWBを利用するため、電池持ちも良い(公称では約1年)とされています。更にこのネットワークは解放されており、既に自転車やワイヤレスイヤホンのメーカーが参加を表明しています。今後は盗まれても場所を特定できる「AirTag対応自転車」や、置き忘れ防止機能付きの「AirTagカバン」なども登場しそうです(AirTag内蔵ゴルフボールなどが出てきたら、ロストボールも怖くありませんね)
  • 更に日本は世界と比べても突出してiPhoneの比率が高く(2020年の出荷台数ベースで50%超え)、かつ東京・大阪のような人口密集都市が多いため、特に有用性が発揮できる可能性が高く、みなさまのビジネスを考える上でのご参考になる可能性が高いと思われます。

注目AWSトピックス

  1. Amazon Lex が日本語に対応
    チャットボット向けの会話型AIを実現するLexがいよいよ日本語に対応し、東京リージョンでも利用できるようになりました!チャットによる会話はもちろん、Alexaの様な言語によるチャットもできるようになりますので、スマートスピーカーや電話による音声応答が新しい段階を迎えそうです。
  2. クラウド移行の計画立案段階を支援する新サービス
    ITシステムを本格的にクラウド環境へ移行し活用していく状況にある企業や組織向けに、ITXパッケージという名称で提供される様々なプログラムのパッケージです。もともとMAP(Migration Acceleration Program)という名称で大規模移行を支援するプログラムがあり、当社も複数のお客様に提供して参りましたが、これに日本独自のノウハウをバンドルして強化したという形になります。お客様にとっても、私たちのようなパートナーにとっても、大規模移行をスムーズに進めるためのベストプラクティスとして活用が期待されます。

その他クラウド関連ニュース

  1. Microsoft音声認識のNuanceを262億ドル(約2兆円)で買収すると正式発表(ただしDiscordの買収はキャンセル)
    Siriの元となった音声認識技術を作ったNuanceがMicrosoftに買収されました。車好きの方には「ハロー、ドラゴン」とか「ハロー、メルセデス」と呼びかけたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?最近のNuanceは車載よりも医療向けに特化していましたので、Nuanceの買収もMicrosoft Cloud for Healthcareの強化に使われると報道されています。
    なお、このニュースに先立って音声ネットワークのDiscordを1兆円で買収との観測が流れていましたが、この取引は打ち切られた模様で、ソニーが100億円超を出資しIPOを目指すという流れのようです。Clubhouseしかり、世界中でソーシャルディスタンスが求められる中で音声ネットワークの重要性が今まで以上に高まっていると言えそうです。
  2. Trelloで個人情報漏洩相次ぐ パスワードやカード情報、就活生の評価まで
    Trelloを使って選考状況の管理をしていた会社で、意図せずボード全体が公開状態になっており、応募者の個人情報を含めた情報全体が(複数の企業で)閲覧可能になっていた、という報道がなされました。かくいう当社も新卒の選考管理をTrelloでやっておりますが、同じような企業は多いとみられ「ヒヤッ」とされた方は多いのではないでしょうか?
    Trelloはまだ設定が簡単ですから良い方ですが、AWSSalesforceなど高度なクラウドになれば、「多少詳しい」レベルの人では既に太刀打ちできないレベルです実際【米企業クラウド「難解で手に負えず」、ペイペイも楽天も神戸市も…設定ミスで情報流出か】というショッキングなタイトルの記事が出ている通り、クラウドを利用する上でのセキュリティ設定は今後大きな課題になってきそうです。
    もちろん、AWSをご利用の場合は当社にご相談ください!

先月のサーバーワークス関連ニュース

  1. オンライン学習プラットフォーム「Udemy」にてAWS初心者向けコースを提供開始
    Udemyという、4,000万人の受講者、15万の講座を誇るオンライン学習サービス向けに、AWS初心者コースを開設しました。上の記事の通り、AWSを本格的に利用しようと考える場合、抜け漏れなく知識を身につける必要がありますので、そうした方にも最適なコースになっているのではないかと思います。
  2. インサイトテクノロジーと協業し、金融機関に特化したデータベースのクラウド化支援・運用に関するサービスを提供開始
    データベースの証跡管理などに強みをもつインサイトテクノロジー社と協業し、金融機関向けにデータベースをクラウドマイグレーションしたり、クラウド上のデータベースでもオンプレミスと同等の証跡管理を実現するソリューションを提供します。当社では既に金融機関向けクラウド導入コンサルティングサービスを提供しておりますが、これを補完するものとなります。
  3. 国内スタートアップ企業に向けた支援プログラムの提供を開始
    国内でもスタートアップ市場が活況になりつつありますが、一方で社内のメンバーがどうしてもアプリ開発に寄ってしまい、インフラに詳しい人が居ない(採れない)という課題がありました。当社としてもこうした声に対応する形で、AWS設計のレビューと、AWS料金の5%割引をバンドルして「pieCe for Startup」という名称で提供するものです。

まとめ

  • AWSAppleなど、強力なプラットフォームは乗る+使いこなす
    AWSの強力なネットワークはいわずもがな、Appleのような「これまでビジネスとは少し距離のあった」プラットフォームにも乗る機会が生まれてきました。残念ながら国内の企業がこれからAppleと同等のプラットフォームを作ることは現実的ではありません。AirTagやLexなどを使うことで、プラットフォームに依存するデメリット以上のメリットがあるものと考えられます。
  • クラウドの利活用、セキュリティ設定などは専門家をうまく使い「健康的な内製化」を
    昨今多発しているクラウドのセキュリティ設定ミスは、自社で誤った設定を放置していたことに起因するケースが多いようです。これは「内製化信仰」の弊害ともいえます。
    たとえば、「自分の健康は自分で作るんだ!医者には頼らない!」という方は健康に対する認識を完全に間違っています。健康的な日常を作るのは自分でも、健康診断という名目でレビューを受けたり、時には治療を必要とすることもあります。「自分の体は自分が一番分かっている」と思い込むのではなく「沢山の症例を見ている医者の方が、病気についてよく理解している」と考えるのが合理的です。
    クラウドを利用するときも同様に、健康的に使うための習慣や基礎体力は自分で培いつつ、「かかりつけ医」よろしく困ったときに相談できるパートナーを伴走させることも「健康的な内製化」の為には必須と考えます。

ゴールデンウィークもあけて休みボケになられた方もいらっしゃるかもしれませんが、こうしている間にも世界は着々と動いています。歩みを止めること無く最新の動向を捕まえて、難しい時代を一緒にサバイブしていきましょう!

2021年3月版 クラウド業界アップデート「LINEの情報が中国からアクセス可能な状態に」

こんにちは、大石です。

今月も忙しいビジネスマン、ビジネスウーマンの皆さまに向けて、先月(2021年3月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

動画でご覧になりたい方はこちら

info.serverworks.co.jp

 

2021年3月のクラウド関連トップニュース 〜LINEの情報が中国からアクセス可能に

  • 先月最もインパクトのあったニュースにはこちらを取り上げました。残念ながらLINEの個人情報が中国の事業者からアクセス可能な状態になっており、実際に30回以上のアクセスがあっただけでなく、ユーザーのコンテンツも明示のないまま韓国のサーバーに保管されていたことなどが問題視されています。実際に政府でも機微な情報の取り扱いは一時中止するなど波紋が拡がっています。
  • 中国政府のインテリジェンスによる脅威が現実のものとして広く認識されるようになったのはこの2−3年の話ですから、おそらくそれよりも前から進めていたこの取り組みが問題視されるのは、LINEさんにとって「気の毒」と言えなくもありませんが、一方でほぼ日本国内のインフラにまで育った状況にあって、中国との関係性を考慮したオペレーションにしていなかったことについては、無理解の誹りを受けても致し方ないでしょう。
  • 実際にLINEの情報が中国政府に渡ったかどうかは今後の調査・報告を待ちたいと思いますが、少なくとも私たちは「中国が国益の為に、あらゆる手段を講じてこうした情報収集に向けたチャレンジをしている」ことを理解し、リスクとリターンを十分に勘案した上で、製品選定、オペレーションや協業体制の構築を検討する必要があると考えます。

注目AWSトピックス

  1. AWSのトップに現Tableau CEOのAdam Selipsky氏が指名
    AWSの現CEOであるAndy Jassy氏がAmazon.comのトップになることから後任人事が注目されていましたが、なんと元AWSで現TableauのCEOであるAdam SelipskyさんがAWSに復帰しCEOを務めることが発表されました!古くからAWSに携わっている方であれば、日本のパートナーミーティングなどにも出席されていたので「懐かしい」という感覚を抱くかたもいらっしゃるのではないでしょうか?AWSのこともクラウド業界のことも十分に理解のあるAdamさんの復帰を、まずは歓迎したいと思います!
  2. 大阪リージョンが正式オープン
    ついに大阪が正式なリージョンとして立ち上がりました!これまでも制約のある使い方をすることはできましたが、今後は東京リージョンと同様3つのAZ(アベイラビリティゾーン)を有する通常のリージョンとして利用可能になります。
    東京・大阪間は400kmほど離れていますので、金融機関の方など内規で「災害対策拠点は250km以上離れていること」が上限になっていた組織にも対応できるようになります。金融機関・公的機関などでの活用が進むことが期待されます。
  3. FISが正式サービスイン
    過去何回か、私が興奮気味にお伝えしてきたAWSの「障害をシミュレーションできるサービス」であるFIS(Fault Injection Simulator)がいよいよサービスインしました!
    まだ対応しているサービスがEC2やRDSなど限定的なため、実用までにはもう少し時間がかかりそうですが、多くの方が悩まれているマネージドサービスの障害試験ができるようになれば、利用の幅は大きく拡がりそうです(LambdaとSQSの対応を心待ちにしています!!)

その他クラウド関連ニュース

  1. マイクロソフト、無料RPA「Power Automate Desktop」をWindows 10ユーザーに提供
    AWS以外のクラウド関連でもっとも影響があったニュースはこちらではないでしょうか?まさかのMicrosoftが無料でRPAを出してきたということで「プラットフォーマーのエコシステム潰しがここまで来たか」という感想をお持ちになった方も多くいらっしゃったのではないかと思います。このような無償バンドル戦略はNetscapeInternet Explorerの対決を彷彿とさせるものであり、B2B市場でこの戦略がどこまで許容されるのかは予断を許しませんが、一方でRPAの裾野が広がるという意味ではユーザーにとって歓迎すべき一歩とも思われます。
  2. ISMAP(イスマップ)クラウドサービスリストが公開
    ISMAPという、内閣サイバーセキュリティセンター・情報通信技術(IT)総合戦略室・総務省経済産業省が運営する、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度があるのですが、これに適合するクラウドサービスのリスト第一弾が発表になりました。AWSGCPはリストされている一方でAzureがリストに掲載されていませんが、Microsoftさんから「申請中である旨」が表明されており、掲載は時間の問題と思われます。こうした取り組みで、いよいよクラウドを用いたデジタル政府も実現に向けた歩みが加速しそうです。

先月のサーバーワークス関連ニュース

 

  • サーバーワークス、内製化支援推進AWSパートナー
    国内の10社と協同で、AWSが推進する「内製化支援推進AWSパートナー」への取り組みを表明しました。
    DX推進の為に「内製化」が標榜されるケースが増えておりますが、当然私たちもお客様のそうしたニーズを理解した上で、AWSを用いた内製化の支援を推進しております(AGC様の事例当社のサービス
    当社のスタンスとして、AWSの中でも「インフラ領域のような非競争領域は当社の様な専門会社へのアウトソースを、競争優位性を確保すべき領域は内製化」をオススメしております。

 

まとめ

  • ITのカントリーリスクは「実害」以前に「可能性を排除する」というステージに
    こちらのブログでも何度もお伝えしているように、IT製品やITプロセスにおけるカントリーリスクは、既に「実害があるかどうか」ではなく「可能性の有無」という段階にレベルがあがっています。大変残念ではありますが、イデオロギーの対立というものはそういうものだと歴史は教えています(さながら1942年に、アメリカ在住の日系人が強制収容されたようなものでしょうか・・)。
    本稿ではイデオロギーの是非を論じるつもりはなく、あくまで「IT戦略立案のお手伝い」を目指しています。その点から言えば、この事例は「こうしたリスクが自社にも起こりえる」ことを教えてくれる良いケースになったと思います。
  • モード1でもクラウドを利用する環境が急速に充実
    ISMAPによるクラウドのお墨付き、AWSによる大阪リージョンの拡充、そしてFISによる「クラウドの障害試験」など、コロナ禍でクラウドの重要性が高まる中クラウドを公共・金融などこれまで本格的な利用が進んでいなかった領域でも利用できる環境が急速に整ってきました。
    給付金の支給でも、諸外国に比べIT化の遅れが支給の遅れに直結してしまい、改めてIT化の重要性が再認識されました。ISMAPの様な取り組みが、こうした遅れの挽回に繋がることを期待しています。

 

いよいよ4月になって、皆さまの会社でも新しい期に移られたり、新入社員を迎えられた方も多くいらっしゃるのではないかと思います。若手に「IT業界は楽しい。入って良かった」と思って貰えるよう、クラウドなどの新しい取り組みを進めて、一緒に夢のある職場を作って参りましょう!

 

完全リモート環境におけるキックオフのノウハウ集(2021年4月版)

こんにちは、大石です。

先月のCloud Update for Businessの動画の中で「年度キックオフを完全なリモート環境で行ったが、意外と一体感があって良かった」という話をしたところ、これをご覧になっていたお客様から「どういうやり方をやったのか教えて欲しい」というお問い合わせを頂きましたので、現時点におけるサーバーワークスのキックオフのフォーマットと、そこに至る経緯を共有させていただきます。皆さまの会社でのキックオフ等イベント運営のご参考になれば幸いです!

 

2021年4月時点でのリモートキックオフのフォーマット

  • 前半(事業戦略パート)
    • 司会が進行を務めるが、発表は事前に収録された動画を配信
    • 1スピーカーは10分〜15分くらいで、部署長が発表
    • 時間は2時間半くらいだが、こまめに5分程度の休憩を挟む
  • 後半(コミュニケーションパート)
    • リモート環境で社員同士のコミュニケーションが減っているため、様々な会社の取り組みやプロジェクトを紹介し、誰がどんなことをやっているのか理解を深めるための時間とした
このフォーマットの良いところ
  • タイムキーピングが正確になる。リモート環境だと物理イベントよりも時間の遅延などにイライラしてしまうが、このフォーマットの場合話者が時間を守らない、配信トラブルで待たされるといったことがなくなり、運営が円滑になるだけでなく、参加者のストレスも大幅に削減できた
  • みなが同じタイミングで同じコンテンツを見つつ、チャットでもコミュニケーションできるので、一体感が出る。当社の場合、事前にSlack上に「キックオフでリアルタイムに会話をするためのチャンネル」を用意しておいたので、みんながそこに集まってニコ生の様に盛り上がることができた
  • 時間を短縮できる。リアルタイムにプレゼンをすると、どうしても情報以外の話や間などがあり時間を余計に使ってしまうが、事前に収録することで情報の密度を高めることができ、必要な情報をインプットするための効率を高めることができる

 

このフォーマットに至る経緯
  • 最初のリモートキックオフは、スピーカーが物理的に配信設備のある場所に集まって、オーディエンスは全員リモートというやり方を試したが、これはイマイチだった。まず「スピーカー」が「あちら側」、オーディエンスが「こちら側」といった感じで、どうしても距離を感じてしまう。かつ配信も(相当な機材や準備をすれば別だが)音声や映像の質、コンテンツの見せ方などのクオリティが上がらず、伝えたい情報に対してノイズが多くなってしまう
  • こうした反省を踏まえ、その次のキックオフはスピーカーも全員リモートにしたが、これはこれで新たな課題が見つかった。特に全員リモート環境だと配信トラブルやスピーカーの切替に時間がかかり、タイムキーピングが難しくなる。リモートによるリアルタイムのプレゼンだと身振り手振りで熱量を伝えることも難しいので、熱量も伝わりにくい
  • そこで今回は「スピーカーのプレゼンを事前収録する」こととして、「全員で同じ時間に同じコンテンツを見る」とした。これでタイムキーピングや配信の問題が解決できるだけでなく、動画で一部編集もできるので、自分で動画を編集したり、字幕を入れたりして、表現力を向上させることができた。全部のコンテンツをAlexa(正確にはAmazon Polly)で読み上げさせてプレゼンした部長もいた(!)こうしたチャレンジが出来るのも、事前収録のよい点だと思われる

 

その他の工夫
  • キックオフの目的を明確にして、全員必ず参加してもらうということを徹底する。オープンな会社ほどよくある「キックオフはやる意味があるのかという議論」がおきないよう、参加の目的と意義を明確にしておく
  • タイムテーブルを作って事前に共有しておく
  • 事前にSlackのキックオフ専用チャンネルを用意して、参加者を招待しておく
  • 質問はSlackでリアルタイムに聞く。回答も(できるものは)その場で答える。回答に時間がかかりそうだと思った質問はスピーカーが「あとで答える」というリアクションを押すと、自動的にそのコメントがストックされ、後ほどQ&Aタイムで答えることができるようにした
  • 動画はBoxで共有して、後からも見られるようにする(後から入社する人でも見られるようにという配慮)
  • 発表後は、各スピーカーのプレゼンの内容をパワポ1枚に纏めたダイジェスト版を用意して、社内Wiki(Confluence)の「キックオフ資料」ページに貼り付けておくこととした。これによって、いつでもこのページを見ればダイジェスト版を見ることができ、内容の振り返りにかかる手間を最小限にした(動画の見直しだと時間がかかるため)
  • キックオフの司会は2名体制で。一人だけで話しているよりも「会社のイベントとして掛け合いをしながら進行する」ことで、より一体感が生まれた
  • キックオフの開始と終了時にはかっこよい動画を流したことで、より一体感・面白さが増した(エンドロールは全社員の名前が入るというサプライズ付き!)また休憩中もBGMに加え「あと何分で再開」というタイマーを映像で配信したため、休憩も取りやすかった
  • 開催時間も変更した。物理的に集まっていた時は午後〜夕方にかけておこない、そのまま立食パーティーをしていたが、今は立食パーティーがないことに加え、全体の時間も圧縮できたので、午前中から実施した。これによって、フレッシュな状態で効果的なインプットが実現できた

 

私たちも「完全なリモートワーク体制」はまだ2年目で、このフォーマットがベストかどうか断言はできません。ですが、既に2回ほど実施してみて「これは今後のフォーマットになり得る」という感触を得ています。

もし皆さまの会社でも面白いアイディアやノウハウなどがあれば、twitterで教えて頂ければ幸いです!