大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

2021年2月版 クラウド業界アップデート 「Amazon.comのCEOにAWSトップ、アンディ・ジャシー氏が就任!」

こんにちは、大石です。

今月も忙しいビジネスマン、ビジネスウーマンの皆さまに向けて、先月(2021年2月)のクラウド関連ニュースをさくっとキャッチアップできるようにまとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

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2021年2月のクラウド関連トップニュース 〜Amazon.comのCEOに、AWSのトップであるアンディ・ジャシー氏が就任〜

  • 2月のビッグニュースはなんといってもこちらでしょう!ついにAWSのトップであるアンディ・ジャシー氏がAmazon.comのCEOに就任することが発表されました!
  • 当社の事例として、東日本大震災の際に「AWSを使って日本赤十字社のサイトをリカバリーし、その後義援金サイトも48時間で立ち上げた」というものがありますが、実はこの話にはウラがあります。当時AWSJの2号社員として在籍していた、現ソラコム社長の玉川さんに「日本赤十字社さんが困っているので、AWSの利用料を免除するなどして支えて欲しい」とお願いしたのです。すると玉川さんがジャシーさんに掛け合って「利用料については支援する。ただし、このことをマーケティングに使わないで欲しい」という条件を引き出してくれたのです。
    普通のビジネスマンの感覚であれば「事例として使うので、利用料については免除する」という回答をすると思うのですが、後から聞いた話ではそうした火事場泥棒的な振る舞いで知名度を高めるのではなく、あくまでサービスの質で社会に広めていくことが第一だという考えの下、このような条件を出されたと聞いて深い感銘を受けました。
  • 米国でもUberやWeWorkの事例から「会社や経営者の倫理観が欠如していれば、瞬間的な成長は実現できても、事業の継続的な成長は達成できない」という考えが浸透しつつあり、そうした倫理観(ethics)を大切にする流れが急速に広まっています。ジャシーさんは、事業を成長させることはもちろんのこと、上の事例から分かるように正しいethicsを持っているという点でも、Amazonの次のリーダーに相応しい人物だと思います。
  • ちなみに、私ももちろんジャシーさんから出された条件はよく理解していたので日赤さんの事例はしばらく公表していなかったのですが、逆に日赤さんから「復興には長い年月がかかる。震災の事例はちゃんと話して、サーバーワークスさんとしてちゃんと利益を出して、その利益を義援金や日赤の活動資金として寄付する流れを作って欲しい」と言われ、対外的に発表させて頂くように転換しました。
    後日AWSの日本オフィスでジャシーさんと直接お会いした際に、私からことの経緯をきちんとお話ししお詫びしたところ「ノープロブレムだ。AWSとしても懸念したようなことは起きていない。一緒にこれからも成長していこう」という力強いメッセージを頂きましたので、念のため申し添えておきます!

注目AWSトピックス

  1. AWS東京リージョンの一部AZで障害が発生
    2月20日の0時頃に東京リージョンの一部のAZ(アベイラビリティーゾーン)で障害が発生しました。今回も冷却システムのトラブルと発表されており、以前の障害との関連が懸念されます。
    今回の障害はEC2, EBSといったサービスに限定されており、AWSが推奨するMulti-AZとよばれる複数AZにまたがる構成の場合は影響を免れたようです。
    AWSといえども障害は必ず発生しますので、ベストプラクティスに基づいた設計が求められます。また、FISとよばれる「障害を擬似的に発生させるサービス」についても発表されていますので、リリースされ次第使い方などを含めご紹介して参ります。
  2. Amazon CloudFront を3割引きで利用可能となる Security Savings Bundle がリリース(当社の技術ブログ
    EC2にはSavings Plans(以下SPs)という名称の、事前にある程度の利用量をコミットすることで割引を受けられるという割引オプションがありますが、これのCloudFront版が登場しました。コロナ禍で「会社からITコストの削減を指示されている」という方は多いと思いますが、そうした方にとってもこうした「AWS調達オプション」は朗報なのではないかと思います。
    ※当社が提供しているAWSコスト最適化コンサルティングはこちら

その他クラウド関連ニュース

  1. グーグルクラウドは年間5900億円の赤字
    Forbesで報じられたこのニュースは「アマゾンのAWSに大敗」といういささか誇張気味のタイトルで報じられましたが、一方でこれは「GoogleGCPにそれだけの投資をしている」ということの証左でもあります。AmazonAWS事業単体での採算を開示するようになったのはサービス提供から何年も経ってからですし、本質的にクラウドビジネスの立ち上げには時間がかかるものですので、この時点での評価は早計でしょう。
  2. Epic Games、超リアルなデジタルヒューマン作成ツール「MetaHuman Creator」をクラウドで提供
    私が2月に最もエキサイトした新サービスはこちらです。リアルタイムにビデオカメラの映像を解析して、その動きに合わせて本物の人間そっくりのキャラクターを動かすことができるというものです。
    高校生の息子がEpicが提供しているツール(Unreal Engine)を使って趣味でゲーム開発をしているので、実際に動かすところを見せてもらったのですが、ほんの30分程度で準備して実際にグリグリ動く3Dキャラを見せつけられたときには本当に驚きました。
    3Dモデルにはよく言われる「不気味の壁」と呼ばれる現象があるのですが、この仕組みですと元々の動きが本物の人間なので、動きの自然さが3Dモデル特有の不気味さを取り払っており、写真で見る以上のリアルさを感じます。
    このレベルであれば、今後こうした3Dモデルに企業のイメージタレントをやらせたり、ファッションモデルにしてライブコマースに活用したりと、ビジネスでも活用できそうです。
    より本格的なバージョンが年内に発表予定とのことですので、続報は別途お伝えしたいと思います。
  3. 中国、話題のClubhouseを規制
    先月のCloudUpdateでもお伝えした音声SNS「Clubhouse」ですが、早速中国国内で規制がかかったようです。元々Agoraという中国のサービスを利用しており「やりとりされる情報は大丈夫なのか?」という懸念の声があがっていましたが、案の定ブロックされてしまった模様です。
    これだけなら未だよいのですが、より大きな問題として、情報そのものの漏洩よりも「Agoraを使い続けることで、中国国外のオーソリティの音声データが学習されてしまうのではないか?」というものがあります。まだまだClubhouseには落合陽一さんや古市憲寿さんをはじめ、芸能人や知識人とよばれる人が集まっていますので、こうした人々の音声データが効率的に収集され完全に模倣できるようになってしまうと、ディープフェイクを用いて「ウソのご意見番を作る」ことがより簡単になってしまうのではないか?とも懸念されます。
    いずれにしても、今後のClubhouseの対応が注目されます。

2021年2月のサーバーワークス関連ニュース

  1. リモートアクセス環境を迅速に整備できる「AWS Client VPN」のホワイトペーパーを大幅アップデート
    以前AWS Client VPNホワイトペーパーを当社のホームページで公開した際に非常に大きな反響をいただき、過去一番ダウンロードされたペーパーになったのですが、今回はそちらの大幅増補版となります。
    コロナ禍で会社のネットワークにVPN接続が必要になった方には「VPNルーターにアクセスが集中してしまい、まともに使えなかった」という方も多かった様です。AWS Client VPNを用いることで、こうした問題を回避できる可能性がありますので、今後もVPNを継続して利用されるご予定の方はご一読頂ければ幸いです。
  2. サーバーワークス、2021年版「働きがいのある会社」ランキングに4年連続で選出
    毎年、社員へのサーベイをかねてGrate Place to Workへ社内の意識調査を委託しておりますが、今年は中規模部門の部でランクインを果たすことができました。社内のカルチャーを「はたらきがい」に寄せるとブラック化し、「はたらきやすさ」に寄せると「ホワイト過ぎて成長が実感できない」というジレンマが発生します。このため、当社では「はたらきがいはたらきやすさの掛け算」を大切にしており、そうした方向性が社員からも納得感を得られているものと理解しております。
    (予断ですが、この調査結果を見ると「社員が経営陣をどう思っているか」などのスコアも如実に表れるので、経営に近い方ほどメンタルをやられると思います。鋼メンタルの方にのみオススメしたいと思います... )

まとめ

  • クラウド事業の立役者、ついに母屋の主人に
    AWSという素晴らしいサービスを立ち上げ4兆円ビジネスに仕立てた張本人がAmazonという母屋のトップになるという、特に私のように昔からAWSとビジネスを行っている人には感慨深いトップ交代劇となりました。
    Appleも天才と言われたスティーブ・ジョブズからティム・クックへ、Microsoftもサティア・ナデラに代わったことで更なる躍進を遂げています。Amazonも、アンディ・ジャシーという素晴らしいリーダーに恵まれたことで、更なる躍進が期待されます。
  • Clubhouse規制は他人事ではない。ITサービスの選定にカントリーリスクも考慮を
    先月の動画でも「Clubhouseは中国のサービスを使っていて、介入が懸念される」とお話ししましたが、残念ながら懸念は実際のものになってしまいました。中国では金盾によってClubhouseが事実上ブロックされ、日本でも「天安門のことを話していたらブロックされた」という人が出ています(ただし、関連性や真偽は全て不明。会話の内容とは関係のない、別な理由の可能性もあります)。
    私も何度もお伝えしているとおり、ITサービスの選定と米中の係争は無関係ではいられません。カントリーリスクを正しく認識し「取れるリスクと取れないリスクを判断した上で利用の可否を決める」姿勢がより強く求められます。

 

当社ではこの3月1日から新しい期に入りまして、新しい期のキックオフも全てリモートで行ったのですが、私も含め会社からの発表は事前に収録し、みんなで見ながらチャットで「ああだこうだ」言い合うというフォーマットにチャレンジしてみましたが、これが意外なほどうまく行きました。

どうしてもリモート発表だと機材トラブルなどで通常のイベントよりも遅延が発生しがちですが、全て事前に収録されているのでそうしたトラブルもなく、また言い間違いなどは事前に編集したり、撮り直したりということもできるので、聞く方としても質の高い話を効率よく聞けて良かったようです。

これで当社も「全社員YouTuber計画」が一歩前に進みました!
4月にキックオフという会社も多いと思いますので、当社の取り組みをお聞きになりたいという方がいらっしゃいましたらご遠慮なくお問い合わせください!

2021年1月版 クラウド業界アップデート 「祭りだ!乗っとけClubhouse!」

こんにちは、大石です。

先月に引き続きまして、忙しいビジネスマン、ビジネスウーマンの皆さまに向けて、先月のクラウド関連ニュースをさくっと10分でキャッチアップできるように、まとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

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2021年1月のクラウド関連トップニュース 〜話題のSNS clubhouse(クラブハウス)が日本に上陸!〜

1月のビッグニュースはなんといってもClubhouseの上陸でしょう!全く新しい音声SNSの新星との呼び声が高く、中毒者が続出中です。かくいう私もかなりの時間を費やしてしまっており、そのせいでこのブログの執筆が遅るなど各処に迷惑をかけています。申し訳ありません・・

そんなClubhouseがこれまでのSNSと違うポイントを簡単に纏めると以下の通りです。

ちがうところ
  • 情報を残さない揮発性
    これまでのSNSは「テキストや画像で情報を残すことで、再利用したり検索されやすくする」アプローチが一般的でした。ところがClubhouseでは会話の内容は保存されず、録音したり内容を書き起こししたりすることも規約で禁止されています。これによって発言のハードルが下がり、気軽なおしゃべりからセンシティブな話題まで、幅広い話題が取り扱われるようになっています
  • 限定的な双方向性
    Clubhouseでの会話は「room」と呼ばれる部屋の中で行われますが、この中でも「スピーカー」と「オーディエンス」に分かれており、オーディエンスは基本的にスピーカー同士の会話を聞いているだけです。コメントしたり何か意見を述べたりすることもできません(例外的に手を挙げて発言を求めることができますが、それを認めるかどうかはモデレーターとよばれる部屋の管理者に一任されます)。今までのSNSですとリアルタイムにコメントができたり「いいね」などで評価するという流れが一般的でしたが、Clubhouseではスピーカーとオーディエンスの関係を敢えて一方通行にすることで「評価やフィードバックを気にせずに、スピーカーが言いたいことを言う」という環境作りに成功しています。最近はYouTubeでも「高評価や閲覧数といった注目を集めたくて、過激な行動を取る」などの行為が問題視されていますが、Clubhouseではそうした評価を気にすること無く気軽に会話できることで、より面白いトークを引き出すことに一役買っています
  • できることが少ない
    これまでのSNSというと、文字による情報の共有だけで無く絵文字や写真、動画にメッセンジャーと「どんどん機能を追加していく」というスタイルでしたが、Clubhouseではかなり意識してできることを減らしているようです。機能の追加で複雑化したり、それによって得られる個人情報をSNS事業者が利用することで利益を上げている状況に反発が強まりつつある中、「機能が少ない」ことが「事業者に対して提供する情報の少なさ」にも直結しており、これがこれまでのSNSとの差別化につながっています
流行った理由
  • よく考えられたUI/UXと音声テクノロジー
    アプリが良く出来ていて、機能を絞ることで分かりやすくなっています(「引き算のUI」と呼ばれています)。このため初めての方でも10-20分も触ればなんとなく使い方が分かり、参加ハードルが低くなっています。
    更にテクノロジー面でも優位性があり、ZoomなどのWeb会議と異なり音声が被っても綺麗に聞こえることが、自然なコミュニケーションの成立に一役買っています(中国Agora社のテクノロジーを使っていると報道されています)
  • 標準で2人しか呼べない「招待制」
    Clubhouseへの参加は「参加者からのSMSによる招待」が必要で、しかも標準で2人しか招待できません。今風に言うと、基本再生算数が2ということです。これによって「流行に乗り遅れたくない」という心理に火がつき、早期の大量ユーザー獲得につながったようです(現在では、一定の活動を続けると招待枠が増えることが知られており、過熱感は一巡したようです)
  • 芸能人、セレブが初期から参入
    立ち上げのかなり初期から有名人がroomを作っておしゃべりをしています(落合陽一さんやこじはる、フワちゃん、フェンシングの太田雄貴さんやYouTuberのヒカルさん等)。有名人の突っ込んだ話や、逆にユルい話がきけるという面白さもあって、聞く専門(Clubhouseではゴーストと呼びます)でも十分に楽しめるのものになっています。
    これまでのSNSは「情報を発信すると、それに対する反応があってコミュニケーションが成立する」という順序だったので、発信が苦手な方には大きなハードルになっていましたが、自分のお気に入りの芸能人、有名人や友達・知り合いのおしゃべりを聞くだけでも十分に楽しめるという気軽さが、人気の理由の一つになっています
考えられる利用例
  • 製品のプレマーケティング
    これまでメーカーが消費者と直接コミュニケーションする方法は極めて限定的でしたが、例えば「今度YouTuber向けのカメラを作ろうと思っているんだけど意見をきかせて欲しい」といったタイトルでroomを作れば、一家言ある人たちが集まってきていろいろと意見を言ったりしてくれます。そうした活動を通じて「潜在的なニーズがありそうかどうか」といった感触を事前に掴むことができるようになります
  • 採用
    企業の採用活動にも使えそうです。これまでの採用は、企業側の「よい会社に見せよう」という努力と求職者側の「よいところを見せたい」という相互の努力によって成り立っていましたが、これはお互いに期待値を上げてしまい、いざ入社してみたら「こんなハズじゃなかった」という失望を生みかねません。Clubhouseの様に「本音で、カジュアルに話せる雰囲気」のある場であれば、企業も求職者も下手に期待値を上げることなく「自分にあっているか」という視点で活動ができるようになり、採用ミスマッチの防止が期待できそうです
  • 社外とのネットワーキング
    現在の使われ方などを見ていると、特定業務(人事やマーケティングなど)に関連するroomも多いようです。下手なセミナー等にでるよりもこうしたroomの方が勉強になりますし、またスピーカー同士の偶然の出会いも生まれやすいことから、ネットワーキングにも活用できそうです。特にコロナ禍で偶然の出会いが減っている中、社外とのネットワーキングによって会社に新しい風を持ち込む活動は重要度が増しそうです

Clubhouseの記事はあらゆるところで出ていますので詳細はそちらに譲るとして、私からの推薦はとにかく「やってみなはれ」です。

正直に申して、Clubhouseがそのまま生き残るかは分かりません。既にTwitterがSpacesという名称で似たような音声SNSのテストを始めているほか、facebookもこの流れを黙って見過ごすとも思えず、競争の激化は間違いありません。しかし、Clubhouseという音声SNSの新しいフォーマットは斬新かつ登場時点で非常に完成されており、相当長い間ネットで使われることになることは間違いありません。こうしたネットワークに後から参加して有利になることは何もなく、早く参入して早くネットワークを作った人が後々までその恩恵に浴することは、Twitterの津田さんやYouTubeのヒカキンさんなどが証明済みです。我々企業人としても早くこのネットワークに参加し、ビジネス機会を獲得することが最善手だと確信します!

その他の業界注目トピックス

  1. IntelのCEOにゲルシンガー氏が復帰
    このブログでもお伝えしているように、現在のIntelは技術面で競合に遅れを取っており「積極的にIntelを選ぶ理由がない」という状況に追いやられています。この状況を打破すべくCEOに伝説のエンジニア、ゲルシンガー氏が復帰することになりました。18歳でIntelに入り25歳で486プロセッサを作るなど、Intelを今のポジションにした立役者がCEOとして復帰することでIntelが苦境を脱することができるのか、大きな注目が集まります。
  2. Salesforceからデータ漏洩?実際は??
    楽天やPayPayで大量の個人情報漏洩があり、それに使われていたクラウドSalesforceだったと報道されました。これらはいずれも「クラウドのセキュリティが突破されたのではなく、利用者(ここでは楽天など)側の設定ミスが原因」だったと分かっています。同じ問題はAWSやAzure等でも起こりえるもので、対処としては ①利用するクラウドのセキュリティ機構について理解すること ②それらを意図通りに正しく設定すること ③それらが持続して機能するように、継続的かつタイムリーな調査を継続的に行うこと の3つが求められます。
  3. Alibaba Cloudが黒字化。世界3位に?
    Alibaba Cloudが2020年第4四半期に黒字化したと決算で発表されました。Gartner社のレポートを元に「IaaS市場でAWS, Microsoftに次いで世界3位になった」と報じられていますが、別な調査ではGCPの方が大きいとも報じられており、正確な比較は困難です。ただし3位のGCPでも年間の赤字額が5,900億円となっており、AWS vs Microsoft Azureの2強体制はしばらく続きそうな情勢です。

 

2021年1月のサーバーワークス関連ニュース

  1.  サーバーワークス、東証一部へ市場変更
    皆さまのお陰をもちまして、2021年1月15日をもって当社株式の上場市場が、東証マザーズから東証一部へ指定替えとなりました。今後も皆さまのご期待に沿えるよう、そしてよりよいサービスがご提供できるよう全力で事業に取り組んで参ります
    私からのメッセージはこちら
  2. 三越伊勢丹様との共同プレスリリース
    三越伊勢丹システム・ソリューションズ様、株式会社IM Digital Lab様とで「モード2開発基盤ガイドライン」を作成しました。特に歴史のある企業ほど必然的にレガシーなシステムが残ってしまいがちですが、そうしたシステムに対するアプローチと、現代求められている「顧客体験をアップグレードするためのIT基盤」とでは考え方、手法、アプローチなどが異なります。こうした前提に基づき共同で「モード2開発を最適化するためのエッセンス」を取りまとめたガイドを準備しました。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください

まとめ

  • Clubhouseでノリノリに!
    久しぶりに全く新しいSNS到来の予感です。人と人との物理的な接触の機会が制約をうけるなかで、偶然の出会いやセレブリティの話を直接聞けるなど、今までにない体験をすることができ私も非常に興奮しています。今後企業のマーケティング活動やコンサルティングサービスなど、様々な分野に適用範囲が拡がっていくと考えられるので、一度お試しになることを強く強く推薦します!
  • 内製化のワナ
    行き過ぎたITアウトソーシングの反動で、ITシステムの内製化が提唱されはじめていますが、Salesforceに限らずAWSもAzureも、現在のクラウドは自社で全てコントロールするには複雑に過ぎます。基本的な設定や設計、セキュリティの考え方といった基盤固めは、AWSならサーバーワークス、Salesforceならテラスカイといった専門的なベンダーに任せつつ、顧客に価値を提供する部分を自分たちで設計するといった適切な使い分けがベストでしょう
  • Intel復権なるか?伝説のゲルシンガー氏の手腕に期待
    このブログでもお伝えしているとおり、Intelの苦境は長い間続いてしまいそうな情勢です。ゲルシンガー氏が戻ってきたとしても、製造プロセスの改善などには複数年かかると見られており、どこまで立て直しができるのか注目です。そしてIntelの設計・製造一体化が弱みになってしまったという事実は、システムでも製造でも「内製化すればよいというものではない」という示唆に富んでいるように思われます

コロナ禍は第三波が心配されていますが、クラウドを活用することで、こうした状況でもビジネスを継続し、成長できる環境を作ることはできると思います。この情報がそのための一助になれば幸いです!

 

 

2020年12月版 クラウド業界アップデート 「AWS re:Inventで新サービスが続々発表!!」

みなさま、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします!

年はまたいでしまいましたが、忙しいビジネスマン、ビジネスウーマンの皆さまに向けて、先月(2020年12月)のクラウド関連ニュースをさくっと10分でキャッチアップできるように、まとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

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2020年12月のクラウド関連トピック

  • Google大規模障害
    12月14日にGoogleの各種サービス(GCP, Google Workspace, YouTube等)で大規模な障害が発生し、約45分に渡り多数のサービスが利用できなくなりました。既に原因も対策も公表されていますが、2020年は想定外の事象でクラウドサービスへの依存が高くなった反面、トラブルの大きさが際立つ年になってしまいました。なお、AWSはこうした事態への回答も用意してきましたので、下の「注目AWSトピックス」もご覧下さい。
  • facebook独占禁止法で提訴
    2020年10月のGoogleに続き、facebook独占禁止法で提訴されました。特にInstagram, WhatsAppの買収とその後のオペレーションに問題があったと報道されています。CiscoOracleに代表されるように「潜在的な競合を買収することで競争優位を持続する」というスタイルは一般的だと認識されていましたので、個人的にも「その容疑で訴えられる」というのは意外でもありました。
  • Zoomの会議内容がZoom社員によって監視されていた!
    Zoomの社員がWeb会議を監視し、天安門事件に関する会議を強制的に遮断したり、個人情報を中国政府に渡していたという容疑でFBIに指名手配されました。Zoomについては「暗号化している」はずがされていなかったり、鍵が中国を経由したりするなど不穏な動きが報じられていましたが、米中の衝突が決定的になる中でこのような事件が明るみに出ることで、一層の信用低下は避けられそうにありません。今後も動きがあればお伝えします。

注目AWSトピックス

  1. re:Invent 2020がオンラインで開催
    先月はなんと言ってもこれでしょう!AWSの年次カンファレンスre:Inventがオンラインで開催されました。昨年は日本人だけで1,800人もの方がラスベガスに一堂に会してクラウドについて学ぶという熱気に溢れたイベントだっただけに、オンラインでの開催をさみしく思っていらっしゃる方も多いと思いますが、これはこれで効率的に情報収集ができて便利な側面もありました。re:Inventのアップデートは当社のウェビナーでもご紹介しています。
  2. AWSの障害がテストできるように!
    re:Inventからエンタープライズ用途での皆さまにお知らせしておきたいアップデートを1つ。2020年はクラウドのトラブルが目立つ年になってしまいましたが、東証のトラブルでも分かる通り「絶対に止まらない、を目指すのでは無く、何か障害が起きても対処できる」ことがクラウドに限らずシステムのデザインには有効です。これまでAWS上でシステムを構築する際に、残念ながらAWSの障害をテストすることは難しかったのですが、今回発表されたFIS(Fault Injection Simulator)を用いれば障害をシミュレーションし、事前に「AWSの特定サービスが止まった場合のシステムの挙動」を設計することが可能になります。
    正式サービスは未だ先ですが、リリースされればAWSをお使いの方は事前のテストに組み込むことは必須になるものと思われますので、ぜひお見知りおき下さい!
  3. AWS再生可能エネルギー原発6基分使っていることを明らかに
    Amazonは「2040年までにカーボンニュートラルを実現する」という宣言をしていますが、実際にAWSでどのような取り組みがなされているのかが示されました。特に再生可能エネルギーの利用が6ギガワットを超えており、この利用量は「単独の企業として世界最大」とのこと。また、昨年発表されたAWS謹製のCPU "Graviton" の利用も、電源効率の改善につながっているとのこと(逆に言えば、IntelのCPUを使うとそれだけ熱で電力が無駄になってしまう、ということでもあります)

2020年12月のサーバーワークス関連ニュース

  1. re:inventのふりかえりウェビナーを実施
    私とサーバーワークスのコメンテーター松本、毎日AWSのアップデート情報をお届けしているエンジニアの加藤の3人で、re:Inventの内容のまとめをウェビナーでお届けしました。ご好評につき再演も予定していますので、ぜひこちらからウェビナーのご予定をチェックしてみて下さい!
  2. 2020年 日本テクノロジーFAST50にランクイン
    デロイト トーマツ グループが発表したテクノロジー・メディア・テレコミュニケーション業界の売上高に基づく成長率のランキング「デロイト トウシュ トーマツ リミテッド 2020年 日本テクノジーFast 50」において、当社が23位を受賞しました!
  3. 佐賀県産業スマート化センターのサポーティングカンパニーに参画

    佐賀県産業スマート化センターでは、事業をスマート化したい県内企業に対し、AIやIoTといった先進技術によるソリューションやこれらの導入を支援できる企業を紹介しておりますが、当社もこれに加わりました。

    サーバーワークスでは、佐賀県をはじめとした九州でのAWS導入、活用支援拡大を目指し、佐賀県内企業様のビジネスに貢献できるようご支援をしてまいります!

まとめ

  • クラウドサービスが政治的な影響を顕著に受けるように
    クラウドの影響力が増すにつれ、facebook独禁法訴訟に見られるように政治の影響を受けるレベルになってきました。既にHAUWEIの排除などははじまっていますが、今後はZoomの様な「会社のエンティティとしては欧米だが、実際の開発など一分のオペレーションは中国で行われているサービス」がどのようになっていくのか注視が必要です(私個人としては、ネガティブな方向に進むのではないかと悲観的に見ています)
  • IT業界もCO2削減に貢献すべき
    re:InventではAWSのCO2削減に関する取り組みが多数語られました。その中で「(451 researchによると)ワークロードをクラウドに移行することで、CO2排出量を88%削減できる」という様な具体的な言及もなされました。先月はAppleシリコン(M1)の驚異的な効率について言及しましたが、デスクトップもサーバーもIntel製からARM製に切り替えることによって、IT部門としてもCO2削減に貢献できる可能性が見えてきました。CO2の排出量削減が企業の社会的責任と認識されつつある今、IT部門としても積極的な行動が求められます


都下では緊急事態宣言が再発され、しばらくStay homeが続きそうですが、クラウドを活用することで、こうした状況でもビジネスを継続し成長できる環境を作ることはできると思います。この情報がそのための一助になれば幸いです。

今年もどうぞよろしくお願いいたします! 

2021年 年頭挨拶

新年あけましておめでとうございます。

2020年は歴史に残る大変な一年になりましたが、当社の事業はお陰様をもちまして堅調に推移することができました。これも、日頃より当社をご愛顧くださっているお客様、パートナーのみなさま、素晴らしいサービスを提供してくれているアマゾンウェブサービスジャパンの皆さま、そして成長を支えてくれている社員、パートナーの皆さまとそのご家族の皆さまのお陰と深く感謝致しております。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

昨年末、年頭共にこのような状況で、直接皆さまとお目にかかってご挨拶することがかえってご迷惑になる可能性もありますので、年頭のご挨拶は別途動画にしてお届けしたいと思います。

www.youtube.com


(最初は動画プロデューサーから「↓こんなサムネにしたらどうか?」というアイディアをもらったのですが、内容が少し堅めだったので日和っておとなしいサムネにしてしまいました・・・)

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動画でもお伝えした通り、昨年は大変な一年だった一方で非常に多くの学びもありました。特に新入社員から聞いた話は新鮮で、「若者の方が今の状況に素早く対応できている」という私の仮説を裏付けることになりました。

「テレワークでは細かいニュアンスが伝わらない。クリエイティブなことができない」という愚痴っぽい話を聞くことが増えましたが(私もそういうグチをいう側ですが・・)そういう言い訳をするのではなく、この状況でどうやって成長していくのか、状況にどうやって適合していくのか、企業の底力が試される一年になるものと理解しております。

感染症も第三波の到来が確実で、まだまだ自分の身を自分で守る行動が求められております。当社でも「Survive and Revive」というアクションプランを設けて今の事態に立ち向かう行動指針としていますが、残念ながらまだまだ「Survive」が必要な時期であることは明白です。

どうぞ皆さまも健康にはご留意いただくとともに、このような状況でもよい一年になりますようお祈り申し上げております。

今年も一年、どうぞよろしくお願いいたします!

2020年11月版 クラウド業界アップデート 「SalesforceがSlackを約3兆円で買収!?」

こんにちは、大石です。

先月に引き続きまして、忙しいビジネスマン、ビジネスウーマンの皆さまに向けて、先月のクラウド関連ニュースをさくっと10分でキャッチアップできるように、まとめてお届けしたいと思います。様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとして、IT戦略の一助にご活用下さい!

 

動画でご覧になりたい方はこちら

 

2020年11月のクラウド関連トピック SalesforceがSlackを2兆8,900億円で買収!!〜

11月のビッグニュースはなんといってもこちらでしょう
Cloud Update for Businessでもお伝えしているように、競争という点でSlackはMicrosoft Teamsに負け始めていて、今年9月のSlackの決算発表後には株価が20%下落するなど、単独で成長を続けられるのか市場からも疑問視されはじめていました。そうした中でのこのニュースは、米国IT産業のダイナミズムを象徴する案件として大きく報道されました。

当社も2012年からSalesforceを、2014年からSlackを使い続けている一企業として発表通りに統合されれば最高の環境になると期待しています。正直にいってChatterは使い勝手の点でSlackに見劣りがしていましたが、一方で「商談や顧客などに関連したトピックをまとめて会話できる」という他に替えの効かない機能があります。Slackの買収によってこれらがSlackに統合されれば、顧客管理+社内の情報管理という点で非常に強力なタッグになるものと大いに期待しています。

ユーザーとしては期待大の一方、AWSを事業の中心に据える私たちにとっては手痛い買収になりました。前述の通りMicrosoftはTeamsに加えSharePoint、メール(Exchange)、無敵のOfficeを束ねるMicrosoft 365があり、これらのIDを管理する基盤としてオンプレミスのActive DirectoryからAzure ADに移行する。Azure ADを使うのであればそのままインフラもAzureを使い始める、という明確かつ強力なシナリオがありました。
それに対してAWSには生産性ソリューションが事実上存在せず、上のようなAzureの導入シナリオに対抗する手段を欠いています。これに対抗するためにはネットワーク効果が非常に高いオフィスワーカー向けのソリューションを提供する必要があり、Slackはその中でも市場に残っている最後の砦とも言うべきサービスでした。これを獲得する可能性が失われたことで、AWSには「オフィスワーカーのIDをAWS上に統合する」材料が失われたと私は見ています。
もちろん、それ以外のシナリオでは依然圧倒的にAWSが有利であることに違いはありませんので、この買収によって今すぐAWSの優位が揺らぐという類いの話ではありませんが、Azureにとっては一つ優位なシナリオが強化されたとは言えると思います。

もう一つ、私が注目しているのが「イノベーションの手段としての買収」です。
GAFAイノベーションによって現在の地位を築いたことに異論はないと思いますが、重要なイノベーションのいくつかは買収によって実現されていることはあまり注目されていません。例えばGoogleYouTubeAndroid囲碁で人間を破ったAI(DeepMind)などは全て買収の成果ですし、iPhoneのSiriも買収した企業の名前です。AWSもRedshiftやAWS IoT、QuickSightなどは全て企業買収によって得た技術やサービスをAWSブランドに変えて提供しているものです。
日本企業のイノベーションというと「ベンチャーとの人材交流」とか「R&Dセンターの設立」の様に「どうやって社員に新しいことを考えてもらうのか」という方向に話が行きがちですが、普通に考えて社員が新しいことを発明・発見する可能性よりも、市場でそれが起きる可能性の方が圧倒的に高いわけですから、それらをできる限り早く発見して獲得する方が、イノベーションの成果を早く取り入れるという観点では有用といえます。
今回のSalesforceによるSlackの買収は、「それらがSlackの様に単独で3兆円近い企業であっても起きえることだ」という点で非常に興味深いだけでなく、日本のIT企業が成長を継続するためにM&AやA&Dをどうやって戦略に組み込むのか?という視点でも、非常に示唆に富んでいると考えます。

注目AWSトピックス

  1. re:Invent 2020がオンラインで開催
    11/30より、AWSの年次カンファレンス re:inventがスタートしました。毎年米国ラスベガスで開催されており、日本からも昨年は約1,800名もの方が参加されるIT業界の一大イベントであったため、楽しみにしていた方も多かったのではないでしょうか?残念ながらコロナ禍でオンライン開催になりましたが、セッションの見やすさなどはむしろ向上しており、情報収集という点では以前よりも効率が良くなったようにも思えます。こちらのリンクから登録ができますので、お時間が許す方はご参加をオススメします!
  2. AWSの売上は前年同期比29%増
    Amazonの決算が発表され、2020年第3四半期のAWS売上高が116億ドル、前年同期比29%増であることが発表されました。同時期におけるMicrosoft Azureの成長率が48%と報じられており成長率はAzureが上とみられていますが、そもそもAWSの方が売上高の絶対額が大きいため、成長率だけで比較するのはフェアではなさそうです。また私が確認した限りMicrosoftの決算発表では「Intelligent Cloud」といって、AzureだけでなくWindows ServerやSQL Serverを含めた状態で130億ドルという発表になっておりAWSとのapple to appleの比較は困難です(なぜ報道各社が48%成長と報じているのか、ソースを確認することはできませんでした)。純粋にAzureのみでの表記が待たれるところです。
  3. AWSMacが動く!
    なんとAWS上でMac OSを動かすことができるという驚きのニュースが飛び込んできました。Mac OSiOS向けのアプリ開発にはMac OS+Xcodeの環境が必須のため、iOSアプリの開発をされている方や、FileMakerのようにMac OSでのみサポートされるアプリケーションをお使いの方にとっても新しいオプションが出てきたことになります。
    (注:もちろん、直接ディスプレイをつなぐことはできませんので、Macの画面を使うためにはVNCという別なアプリケーションを用いてネットワーク経由で接続することになります)
    後述しますが、Appleシリコン(Apple製CPU)搭載Macの登場によって、もしかしたらWindows一辺倒の企業PCにも風穴が空くかも知れないという雰囲気が漂っています。そうした中で「企業内PCをMacに移行できるかどうか、事前にAWSでテストできる環境が提供された」という点においても非常に興味深いリリースだと思います。2021年にはM1チップ搭載のBig Sur(Mac OSの最新バージョン)も提供されるとのこと。楽しみに待ちましょう!
    ※正確には12月のニュースなのですが、速報の意味もこめて記載しました

AWS以外のニュース

  • Googleフォトが有料化
    2015年以来人気を博してきたGoogleフォトですが、2021年6月からアップロードされる分については有料化されることになりました。クラウドサービスは便利な反面、値上げのリスクは以前から指摘されていましたが、はからずもそれが現実のものになってしまいました。
    AWSは継続的な値下げをしている一方でGoogleは個人・法人サービス問わず価格戦略が場当たり的に見え(BigQueryやG Suite等)これが、Googleが法人向けクラウドの分野で覇権を握るに至っていない理由の一つになっているものと考えられます。
  • M1チップを搭載したMacが発売
    Appleシリコンと呼ばれる、Apple謹製のCPU(M1)を搭載したMacが発売になりました。これが驚きのパフォーマンスで、Intel CPUを積んだ過去のMacを大幅に超えるパフォーマンスと低消費電力を達成していると話題になっています。
    ここまで圧倒的なパフォーマンス差があると、同じコストを払ってもWindowsよりMacの方が快適でバッテリーの持ちもよく処理できる作業量が多い、という具合に優劣が明確になりそうです。そうなると「社内PCでもWindowsではなくMacを選択する」企業も今後増えるものと思われます。
    当然、その場合使い勝手の問題がでてきますが、新しいMacではiPhone, iPadアプリも一部動作することや、ブラウザ経由で各種クラウドサービスを利用するケースが増えていること。さらに前述の通りAWS上で事前にテストができる環境が整ったことなどを考えると、以前よりもWindowsからMac OSへの乗り換えハードルは下がっているものと思われます。

 

2020年11月のサーバーワークス関連ニュース

  1. 金融機関向けホワイトペーパーを公開
    当社でも琉球銀行様など一部先進的な金融機関でのAWS導入は始まっていましたが、三菱UFJ銀行などメガバンクが本格的にAWSを使い始めたという報道を受けて、金融機関でのAWS利用検討は大きく拡がり始めています。ところがいざAWSを使い始めようとしても、セキュリティに対する社内の説得材料、事業計画の書き方のポイントなど実務面におけるハードルが高く、クラウドの導入は「総論賛成、各論反対」で進まないという事態が散見されておりました。
    当社ではこうした状況を打破すべく、実際にメガバンクでクラウド導入を主導したスペシャルチームが、メガバンクでの経験をベースに社内手続き・説得材料に特化したホワイトペーパーを準備しました。これにより、より社内での合意形成が円滑に進むことになると期待しています。
  2. re:Invent 2020向け特設サイトを公開
    今年のAWSの年次カンファレンスre:Inventはオンラインでの開催となりましたが、当社でもこちらで発表されたニュースや付帯する情報など、当社が発信する情報を集めたサイトを公開いたしました。
  3. サーバーワークス、クラウド導入を支援するGoToクラウドキャンペーンを開始
    これからAWSを使い始める方や新しくAWSアカウントを開設する方向けにAWS利用料が30%引きになるGoToクラウドキャンペーンをスタートしました。国のGoToは見直しが始まっていますが、当社のGoToキャンペーンは継続しますので安心して(?)ご相談下さい!

まとめ

  • イノベーション ≒ 戦略的M&A
    SalesforceによるSlackの買収は、イノベーションを起こす手法としてのM&Aに注目すべき好例と言えそうです
  • Appleシリコンに注目
    Intel製CPUよりもARMベースのCPUに分がありそうだとお伝えしてきましたが、いよいよデスクトップの分野でも優勝劣敗が明らかになり、企業PCにもMac OSを検討すべき時期が到来
  • re:Inventに注目
    AWSの年次カンファレンスre:Inventで今年も注目のサービスが続々と発表されています。続報をお待ちください

コロナ禍は第三波が心配されていますが、クラウドを活用することで、こうした状況でもビジネスを継続し、成長できる環境を作ることはできると思います。この情報がそのための一助になれば幸いです!

 

 

2020年10月版 クラウド業界アップデート

こんにちは、大石です。

先月に引き続きまして、クラウド業界のアップデートをまとめてお届けしたいと思います。ぜひクラウド業界についてキャッチアップしたり、様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとしてご活用下さい!

(11月16日に動画もアップしましたので、こちらも是非ご覧下さい 

2020年10月のクラウド関連トピック

  1. Google独占禁止法訴訟が始まる
    GAFA首脳が公聴会に呼ばれるなど不穏な動きが続いていましたが、ついにGoogleの独占に対して司法省が提訴に踏み切りました。特に「Appleに対して巨額のリベートを支払うことで、iOSの標準検索エンジンGoogleにしている」点が大きく取り沙汰されています。Appleはこの取引が継続できなくなる可能性を考慮し、独自の検索エンジンを開発していると目されています。
  2. 東京証券取引所で取引が終日停止
    10月1日に東京証券取引所の売買システムarrowheadで障害が発生し、丸1日取引ができなくなりました。ITに携わる方であれば「システムは必ず止まる」という認識をお持ちだと思いますが、報道では「信用問題だ」「言語道断」などと厳しい論調が相次ぎ、図らずもITリテラシーのギャップが浮き彫りになりました。
    その一方、翌日に行われた東証の謝罪会見では、横山CIOの対応がエンジニアを中心に絶賛され「システムを運営する主体の説明責任」のレベルを1段階引き上げた歴史的な会見だったと見なされました。
  3. クラウドのトラブルが連続
    Microsoft 365において9/29、10/7に、AWSの東京リージョンでも10月22日にAZ(アベイラビリティーゾーン。論理的なデータセンター)間通信の障害が発生し一部サービスに影響が出ました。
    どちらも表面的には「クラウドの障害」なのですが、前者は「全世界で全サービスの停止」、後者は「部分的な停止」という違いがあります。Azureはインフラ層からActive DirectoryやTeamsといったアプリケーション層までをカバーしている点が魅力ですが、一方で一度サービス障害が起きると影響が多岐にわたってしまい、安定性に課題を残しています。

注目AWSトピックス

  1. 総務省による第二期政府共通プラットフォームがAWS上で運用開始
    以前より「クラウド・バイ・デフォルト」という宣言は出されていましたが、実際に行政サービスでAWSが使われ始めている事例が明らかになってきました。デジタル庁の新設に伴い、行政機関でもDXの加速が期待されます。
  2. Amazon Rekognitionでマスクの有無を判定可能に
    Amazon Rekognitionを使うことで人物の判定などはこれまでも実現していましたが、コロナ禍のご時世に合わせてマスクの有無なども判定できるようになりました。オフィスや店舗の入室時チェックなどにも利用できそうです。こちらの動画でも解説していますので、ぜひご覧下さい。
  3. Appleのオンラインによる新製品発表会がAWSを用いて配信
    9月、10月と2ヶ月続けてAppleの新製品発表会が行われましたが、これらがAWSを用いて配信されたと伝えられました。コロナ禍に合わせて(事前に録画された)映画仕立ての動画で新製品発表会を行っていますが、クオリティの高さもあって好意的に受け止められているようです。

AWS以外のクラウドサービス関連

  • 日本マイクロソフトがAzureの年度計画を発表
    最重要分野として「クラウドネイティブなアプリ開発と既存アプリのモダナイズ」を、また「既存アプリケーションのAzureへの移行」「クラウド導入プロセスの標準化とクラウド・センター・オブ・エクセレンス(CCoE)文化の醸成」にも引き続き注力とのこと。これらの実現のためにAzure Baseという物理的なデモ+コワーキングスペースを全国10カ所に展開。AWS Loftの対抗と思われますが、よりパートナー色を強くしている点がマイクロソフトらしく、大いに注目されます。
  • GoogleがG SuiteをGoogle Workspaceに改名
    基本的には名称変更とされていますが、プランによって最大利用可能人数が減ったり、ストレージの最大容量が減ったりするなど利用者視点では一部改悪に見える部分もあるため、注意が必要です。
  • Alibaba Cloudの売上は年7,400億円に
    Alibaba Cloudは300万の有料顧客を有しており、年間売上高は70億ドル(約7400億円)、2021年度中には事業として黒字化とのこと。米中の摩擦やコロナショックもあり国内でもAlibaba Cloudの話題が取り沙汰されるケースも減少気味の様ですが、中国内での事業は順調に伸びているようです。

 

2020年10月のサーバーワークス関連ニュース

  1.  バリュエンステクノロジーズ様のOnelogin事例を公開
    当社ではAWSだけでなく、AWSと一緒に使われるクラウドサービスの販売・技術支援も行っています。特に最近は複数のクラウドサービスを使い分けるというユースケースが増えていることもあり、シングルサインオンを実現するクラウドサービスOneLoginの技術サポートも提供しております。
  2. Gartner社のレポートにサーバーワークスが掲載
    ITの調査会社として最も権威があるGartner(ガートナー)社の調査レポート「Market Guide for Public Cloud Managed and Professional Services Providers, Asia/Pacific」に当社が掲載されました。米国ではITベンダー選定に当たって最初に参照されるものがGartner社のレポートと言われるほど意志決定に大きな影響力を有していると言われています。国内ではそうしたケースは多くないようですが、今後プロフェッショナルCIOと呼ばれるポジションの方が増えるに従い、既存ベンダーや過去の経験よりも、第三者評価を重視する傾向が強まると考えられます。

まとめ

  • GAFAによる市場の寡占を解体するのか、はたまた米中貿易戦争に備えて敢えてGAFAに力を残しておくのか。個人的には米国は後者を選択すると予想するが、今後しばらくは微妙な局面が続くことは間違いなさそう。
  • システムのトラブルが社会に与えるインパクトは拡大の一途。従来型のフォールトトレランスを追求するアプローチから、(クラウドを活用し)フェイルセーフへの転換を。
  • AWSは公共分野でも拡大中。クラウドを用いてどのように行政サービスをデジタル化していくのか、今後の取り組みに注目。

 

これを書いている11月5日は、アメリカの大統領選挙の開票が進んでいる最中です。どちらに転んでも一波乱も二波乱もありそうですし、先月からお伝えしている通り、米中貿易戦争と相まって「IT業界も対岸の火事では居られない」という状況が続いています。

私たちにできることは「正しい情報を元に、正しく備えること」だけです。このブログと動画が、みなさまの「備え」のお役に立てば幸いです!

2020年9月版 クラウド業界アップデート

こんにちは、大石です。

先月に引き続きまして、クラウド業界のアップデートをまとめてお届けしたいと思います。ぜひクラウド業界についてキャッチアップしたり、様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとしてご活用下さい!

(こちらの記事の内容は、YouTubeに解説動画があります。こちらも是非ご覧下さい)

2020年9月のクラウド関連トピック

  1. TikTokの売却が大荒れ
    米国での事業継続に期限を切られ、Microsoft陣営が買収するものという観測もありましたが、現時点ではOracle/Wallmart陣営がTikTokの米国事業を買収するという流れに。しかし中国政府は難色を示していると言われ最終決着まではまだ時間がかかりそうです。いずれにしてもこの問題、これまでITサービスは中国からの一方通行(中国のサービスは中国本土、海外両方にアクセスできのに対して、中国外のサービスは中国にアクセスできない)であったという問題に米国が明確にNoを示した形になりました。TikTok以外にも今後様々なサービスが同様の措置にあうものと見られ、残念ながらITサービスを利用する上での新しいリスクが顕在化しました。
  2. ARMがNvidiaに売却
    ソフトバンク保有していたARMがGPU最大手のNvidiaに約400億ドルで売却されることになりました。ARMはCPUの設計図を各社にライセンスするというビジネス形態のため、自社でチップを製造もしているNvidiaにARMが売却された後も、同様のライセンスビジネスが破綻なく継続できるのかが注目されます。
  3. スマホ決済口座による不正が明るみに。eKYCに注目
    ドコモ口座を狙った不正な預金引き出し犯罪が発覚。ドコモ口座に対する銀行口座の紐付け(にあった一部セキュリティ的な甘さ)が狙われた格好だが、現時点で手口の詳細は不明。いずれにしても口座振替を行うためには正確な本人確認が欠かせず、そのためにはeKYC(electronic Know Your Customer)という仕組みの実装が不可欠に。はからずも、先月ご案内した AWS Fraud Detectorの様な仕組みがあれば防げた(かもしれない)事件となりました。


注目AWSトピックス

  1. AWS Summit Tokyo 2020 がオンラインで開催
    コロナ禍のあおりで物理的な開催は中止となりましたが、代わりに9月8日〜30日の日程でオンラインでの開催となりました。物理的な開催となれば相当な人出が予想されましたが、オンラインですと在宅やオフィスに居ながら快適に視聴できるので、これはこれで情報収集の手段としては効率的だったのではないかと思います。
  2. AWS Marketplaceが日本企業にも開放
    待望のAWS Marketplaceが日本企業にも開放されました!(これまでは米国内の銀行口座が必要で、Marketplaceへの出展はかなりのハードルでした)
    国内のパッケージベンダーさんにとっては、新たな販路拡大につながることが期待されます。また、ユーザー企業にとっても、これまでアプリケーションのインストールや設定にそれなりの労力がかかっていたものが、AWS環境限定とはいえワンクリックで実装できるようになりますので、アプリのテストやインストールにかかる手間を大幅に削減できる可能性があります。
  3. AWS Graviton2プロセッサを搭載した新しい Amazon EC2 T4g インスタンスがリリース
    ARMベースのAWS謹製CPUであるGraviton2を用いたEC2インスタンスに、新しいT4gインスタンスが追加されました。今年の5月からM6gインスタンスが使えるようになり、だいぶ裾野が広がりましたが、マイクロサービスの様な比較的小さなスケールのアプリケーション向きのインスタンスが追加されたことで、大幅に適用領域が広がりました。各方面から利用レポートが出始めていて、(おおむね)IntelベースのCPUと比べてコストもパフォーマンスも優れているという高評価が多いようで大いに注目されます。

AWS以外のクラウドサービス関連

Microsoft社がIgnite 2020を開催

Microsoft社のイベント

  • Azure VMware Solution正式サービス開始
    サードパーティーに依存することなく、AzureでもVMwareとのハイブリッド環境が構築できるようになりました。
  • Azure Arc enabled servers正式サービス開始
    マルチクラウド環境のWindowsLinuxサーバをAzureで集中管理。AWSで稼働しているLinuxマシンもAzure上から管理できるようになります。Azureでは、AWS利用料の可視化も提供しており、管理機能をAzureで統合させるシナリオの様です。
  • Azure Communication Servicesプレビュー公開
    個人的にIgnite2020で最もヒットしたものがこちら。ビデオ会議やチャット機能などを組み合わせて独自の電子会議アプリなどを開発できるサービス群。Microsoftは既に協力なコミュニケーションサービスを持っているので、これらを統合して自前のアプリを作ることができれば、高機能なライブコマースの仕組みなどを簡単に作ることができるようになると期待されます。

そのほかにも、絶好調なTeamsへの様々な機能追加が発表され、Slackを一気に追い越し追いつけないレベルにしようとする強い意志を感じました。

Google
  • Google Tables発表
    新しいノーコード開発ツール「Tables」が発表されました。複数人でタスクを共有するプロジェクトマネジメントや、簡単な顧客台帳などが作れるという触れ込みでExcelの置き換えが当面のターゲットの様です。
    Googleは今年初めにAppSheetというローコード開発ツールを買収しており、この分野での集中的な投資が目立ちます。

 

2020年9月のサーバーワークス関連ニュース

  1. ファミリーマート様(ファミペイ)事例を公開
    2019年にリリースされたファミペイのインフラにAWSが採用され、導入パートナーとして当社が選ばれた理由についてお客様からの声と共に発表させていただきました
  2. pieCe Liteリリース。AWS利用料金が▲5%に
    コロナ禍でコスト削減の優先度が高まる中、AWS利用料も削減したいというお声を元に、各種付帯サービスを取る代わりにAWSコストに最適化された、AWS利用料の請求代行サービス pieCe Liteをリリースしました。詳しくはこちらをご覧ください
  3. テレワーク実践ガイドブックを公開
    コロナ禍で急遽テレワーク、リモートワークを実施する必要がでてきた皆さまにとっては、様々なつまづきポイントがあると認識しています。当社では2012年からテレワークを実践してきましたが、こうしたつまづきを回避するためのITや経営上の施策についてポイントをまとめたガイドブックを公開いたしました。こちらから無料でダウンロードできますので、ぜひご利用ください

まとめ

  • 米中貿易戦争の余波がITにも押し寄せつつある。製品選定やIT戦略を描く上で無視できないレベルになりつつあることを念頭におく必要あり
  • CPUの勢力図が確実に書き換わりつつある。サーバーサイドでもARM系が有力な選択肢に。アプリケーションの購入や自社アプリケーションのアーキテクチャー選定時に考慮を
  • 各社ノーコード製品がますます充実。汎用品はクラウドSaaS)を。自社特有の業務については、ノーコード開発を最優先に検討すべき

 

今月は以上となります。まだまだクラウド業界からは目が離せませんね〜。来月もお楽しみに!