大石蔵人之助の雲をつかむような話

株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良

2020年9月版 クラウド業界アップデート

こんにちは、大石です。

先月に引き続きまして、クラウド業界のアップデートをまとめてお届けしたいと思います。ぜひクラウド業界についてキャッチアップしたり、様々なニュースから今後の展開を読み解くヒントとしてご活用下さい!

(こちらの記事の内容は、YouTubeに解説動画があります。こちらも是非ご覧下さい)

2020年9月のクラウド関連トピック

  1. TikTokの売却が大荒れ
    米国での事業継続に期限を切られ、Microsoft陣営が買収するものという観測もありましたが、現時点ではOracle/Wallmart陣営がTikTokの米国事業を買収するという流れに。しかし中国政府は難色を示していると言われ最終決着まではまだ時間がかかりそうです。いずれにしてもこの問題、これまでITサービスは中国からの一方通行(中国のサービスは中国本土、海外両方にアクセスできのに対して、中国外のサービスは中国にアクセスできない)であったという問題に米国が明確にNoを示した形になりました。TikTok以外にも今後様々なサービスが同様の措置にあうものと見られ、残念ながらITサービスを利用する上での新しいリスクが顕在化しました。
  2. ARMがNvidiaに売却
    ソフトバンク保有していたARMがGPU最大手のNvidiaに約400億ドルで売却されることになりました。ARMはCPUの設計図を各社にライセンスするというビジネス形態のため、自社でチップを製造もしているNvidiaにARMが売却された後も、同様のライセンスビジネスが破綻なく継続できるのかが注目されます。
  3. スマホ決済口座による不正が明るみに。eKYCに注目
    ドコモ口座を狙った不正な預金引き出し犯罪が発覚。ドコモ口座に対する銀行口座の紐付け(にあった一部セキュリティ的な甘さ)が狙われた格好だが、現時点で手口の詳細は不明。いずれにしても口座振替を行うためには正確な本人確認が欠かせず、そのためにはeKYC(electronic Know Your Customer)という仕組みの実装が不可欠に。はからずも、先月ご案内した AWS Fraud Detectorの様な仕組みがあれば防げた(かもしれない)事件となりました。


注目AWSトピックス

  1. AWS Summit Tokyo 2020 がオンラインで開催
    コロナ禍のあおりで物理的な開催は中止となりましたが、代わりに9月8日〜30日の日程でオンラインでの開催となりました。物理的な開催となれば相当な人出が予想されましたが、オンラインですと在宅やオフィスに居ながら快適に視聴できるので、これはこれで情報収集の手段としては効率的だったのではないかと思います。
  2. AWS Marketplaceが日本企業にも開放
    待望のAWS Marketplaceが日本企業にも開放されました!(これまでは米国内の銀行口座が必要で、Marketplaceへの出展はかなりのハードルでした)
    国内のパッケージベンダーさんにとっては、新たな販路拡大につながることが期待されます。また、ユーザー企業にとっても、これまでアプリケーションのインストールや設定にそれなりの労力がかかっていたものが、AWS環境限定とはいえワンクリックで実装できるようになりますので、アプリのテストやインストールにかかる手間を大幅に削減できる可能性があります。
  3. AWS Graviton2プロセッサを搭載した新しい Amazon EC2 T4g インスタンスがリリース
    ARMベースのAWS謹製CPUであるGraviton2を用いたEC2インスタンスに、新しいT4gインスタンスが追加されました。今年の5月からM6gインスタンスが使えるようになり、だいぶ裾野が広がりましたが、マイクロサービスの様な比較的小さなスケールのアプリケーション向きのインスタンスが追加されたことで、大幅に適用領域が広がりました。各方面から利用レポートが出始めていて、(おおむね)IntelベースのCPUと比べてコストもパフォーマンスも優れているという高評価が多いようで大いに注目されます。

AWS以外のクラウドサービス関連

Microsoft社がIgnite 2020を開催

Microsoft社のイベント

  • Azure VMware Solution正式サービス開始
    サードパーティーに依存することなく、AzureでもVMwareとのハイブリッド環境が構築できるようになりました。
  • Azure Arc enabled servers正式サービス開始
    マルチクラウド環境のWindowsLinuxサーバをAzureで集中管理。AWSで稼働しているLinuxマシンもAzure上から管理できるようになります。Azureでは、AWS利用料の可視化も提供しており、管理機能をAzureで統合させるシナリオの様です。
  • Azure Communication Servicesプレビュー公開
    個人的にIgnite2020で最もヒットしたものがこちら。ビデオ会議やチャット機能などを組み合わせて独自の電子会議アプリなどを開発できるサービス群。Microsoftは既に協力なコミュニケーションサービスを持っているので、これらを統合して自前のアプリを作ることができれば、高機能なライブコマースの仕組みなどを簡単に作ることができるようになると期待されます。

そのほかにも、絶好調なTeamsへの様々な機能追加が発表され、Slackを一気に追い越し追いつけないレベルにしようとする強い意志を感じました。

Google
  • Google Tables発表
    新しいノーコード開発ツール「Tables」が発表されました。複数人でタスクを共有するプロジェクトマネジメントや、簡単な顧客台帳などが作れるという触れ込みでExcelの置き換えが当面のターゲットの様です。
    Googleは今年初めにAppSheetというローコード開発ツールを買収しており、この分野での集中的な投資が目立ちます。

 

2020年9月のサーバーワークス関連ニュース

  1. ファミリーマート様(ファミペイ)事例を公開
    2019年にリリースされたファミペイのインフラにAWSが採用され、導入パートナーとして当社が選ばれた理由についてお客様からの声と共に発表させていただきました
  2. pieCe Liteリリース。AWS利用料金が▲5%に
    コロナ禍でコスト削減の優先度が高まる中、AWS利用料も削減したいというお声を元に、各種付帯サービスを取る代わりにAWSコストに最適化された、AWS利用料の請求代行サービス pieCe Liteをリリースしました。詳しくはこちらをご覧ください
  3. テレワーク実践ガイドブックを公開
    コロナ禍で急遽テレワーク、リモートワークを実施する必要がでてきた皆さまにとっては、様々なつまづきポイントがあると認識しています。当社では2012年からテレワークを実践してきましたが、こうしたつまづきを回避するためのITや経営上の施策についてポイントをまとめたガイドブックを公開いたしました。こちらから無料でダウンロードできますので、ぜひご利用ください

まとめ

  • 米中貿易戦争の余波がITにも押し寄せつつある。製品選定やIT戦略を描く上で無視できないレベルになりつつあることを念頭におく必要あり
  • CPUの勢力図が確実に書き換わりつつある。サーバーサイドでもARM系が有力な選択肢に。アプリケーションの購入や自社アプリケーションのアーキテクチャー選定時に考慮を
  • 各社ノーコード製品がますます充実。汎用品はクラウドSaaS)を。自社特有の業務については、ノーコード開発を最優先に検討すべき

 

今月は以上となります。まだまだクラウド業界からは目が離せませんね〜。来月もお楽しみに!

2020年8月版 クラウド業界アップデート

こんにちは、大石です。

第2波とおぼしき新型コロナウイルスの流行も少し落ち着きを見せ始めているようですが、まだまだ余談は許さない状況です。人出が少し戻ってきたとはいえ、こうした中でなかなか「お客様と直接お話ができない」「情報がタイムリーに入ってこなくなった」という方もいらっしゃるのではないでしょうか? かくいう私も、先日とある大企業のCIOをお会いした際に「御社を含め、今まで日参してくれていたベンダーさんが来てくれなくなって情報収集に難儀している」というお声を頂戴し「これはいかん」と思いまして、今月からしばらくの間、ブログとYouTube(動画はこちら)で、主に企業でITの意思決定に携わる方々に向けて「今月のクラウド業界アップデート」を間お送りしたいと思います。 ※YouTube動画とこのブログとは基本的に同じ情報になりますので、どちらでもお好きなソースをご利用ください

2020年8月のクラウド業界アップデート

  • リモートワーク関連サービスが賑やか。Microsoft Teamsの躍進
    • もともとチャットベースのコラボレーションツールとしてはSlackが先発で、2019年のIPO時には時価総額が2兆円を超えるという破竹の勢いでしたが、Microsoft TeamsはOffice 365へのバンドル効果もあってあっという間にユーザー数でSlackを追い抜き、最新の発表では7,500万ユーザーと報じられています(対するSlackは2019年10月の発表時で1,200万ユーザー。以後はユーザー数の発表なし)
    • Slackはこの販売方法は独禁法違反だとして、EUに提訴中。訴訟の行方はともかく、クラウドサービスが充実することで逆に企業のIT管理が複雑性を増す中、SlackやBoxといった「その分野におけるベストな製品を組み合わせる、ベストオブブリード」という使い方から、Microsoft 365の様に「統合されたスイート」を求める声が高まっている様に見受けられます
  • Zoom大躍進。ZoomがOracle Cloudで動いている?

    • このコロナ禍で躍進したクラウドサービスといえば、Microsoft Teamsともう一つが「Zoom」。Oracle Cloudが「ZoomはOracle Cloudを選んだ」というリリースを出したことでクラウド業界の注目を集めましたが、実態は少し異なりそうです。
    • AWSから反論が出ていて、大半はAWSを利用しているとZoomのCEOも認めています
  • CPU業界に大変革。AWSAppleもCPUはIntel製から自作へ

    • CPU業界に大変革時代の到来です。今までCPUといえばIntel一強の時代が長く続いていましたが、自作PC業界では1−2年程前からAMD優勢が確定的に。IntelがCPUの歩留りで苦戦しており、国内でもパソコンやサーバーの入手に時間がかかっている状況が生まれていましたが、そうした苦戦をよそにARMアーキテクチャー勢やAMDなどがIntel製よりも高精細(≒高性能かつ低消費電力)なチップの量産に成功しており、業界の地図を塗り替えようとしています
    • AWSもチップを自作していることを昨年の年次カンファレンス「re:Invent」の中で発表しています。それらのインスタンスの方がコストパフォーマンス上有利だと認識されており、特にサーバーではIntel製一強だった時代に終わりが近づいています
    • また、今年行われたApple社の開発者向けカンファレンスでも「今後はIntel製をやめ、自社開発のCPUに切り替えていく」と発表されており、CPUの勢力図は今後数年で大幅に書き換えられることが予想されます
  • Apple税は許せない?世界を揺るがすゲーム「フォートナイト」とは

    • これもIT業界の大きなニュースです。まずはフォートナイトというゲームについて説明する必要があり、これがまた長くなりそうですので別なブログ記事でご紹介したいと思います。

AWSの注目アップデート

  • AWS Fraud Detectorが正式リリース
    • オンラインでの購買やアカウント作成などにおける不正を検出することができるサービスです。Amazon.comが過去20年にわたって培ってきたノウハウが投入されていることをウリにしています。
    • コロナ禍で様々な
  • Amazon Connect CTI Adapter for Salesforce v5がリリース
    • Amazon Connectをご存じでしょうか?簡単に言えば「コールセンターのような電話の仕組みを、AWS上で簡単につくることができる」というサービスです。
    • 電話イベントをトリガーとして、セールスフォースのデータ操作や画面表示を制御できます
    • たとえば、電話着信時に電話番号で顧客情報を検索し、該当ページをポップアップ表示するような機能を自由に実装できます
    • もちろんこれ以外にも様々なアップデートがありました。特に開発者向けのサービスが精力的にアップデートされており、AWSを用いた開発環境がますます充実しています(もちろん、GitHubというソースコード管理サービスをMicrosoft社に買収されたので、これに対抗していく必要性を感じている、という背景もあるものと思います)

AWS以外のクラウドサービスにおけるトピックス

  • Microsoftのパートナーに向けて、Inspire 2020が開催されました(正確には7月開催)
    • Azure Well-Architected Framework:元々提供されていたが、再度プッシュされた。AWSにも同様のフレームワークがあるが、
    • Azure Stack HCI (Preview)
      • 第二世代のハイブリッドクラウドソリューションがでてきました。AWSAWS Outpostsという名称でこうしたサービスを提供していますが、キャリアや金融などより大規模なインフラをクラウド化するためのソリューションが出揃ってきたという印象です
    • そのほかにも様々な事例や新サービスの発表がありましたが、やはりTeamsの伸びと各種サービスとの統合について多くの時間が割かれていたのが印象的でした。AWSとの健全な競争を通じて、クラウド市場が正常進化していくことを期待しています

サーバーワークスのアップデート

2020年8月版は以上です。今回のアップデートは少し時間がかかってしまいましたが、来月9月分以降はタイムリーに情報をご提供する予定です。ご期待下さい!

「その仕事、全部やめてみよう」はとりあえず読んどけ

こんにちは、大石です。

 

エンタープライズIT業界には私が勝手に三銃士と呼んでいる人たちがいて、

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ソラコムの玉川さん、HENNGEの小椋さん、クレディセゾンの小野さんという40代3人の経営者を「これから日本のエンタープライズIT業界を変えていく3人」として、いろんなところで紹介させて頂いているのですが、そんな小野さんが「本を書いた」とのことだったので早速読んでみました。

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結論を先に言うと、

「IT業界の人はとりあえず全員読んどけ」

です。

 

こういう情報過多の時代ですから「DX」だの「シリコンバレーの流儀」だの「2ピザルール」だのを断片的に見聞きすることは多いと思うのですが、「それがどういう理由で大切なのか」「それを自分たちのチームで実践するためにはどういう方法をとるとよいのか」ということを知る機会はそれほど多くありません。本書ではこうしたTipsの背景まで丁寧に、体系的に教えてくれます。

周りを見渡してみても「シリコンバレー、日本のベンチャー、日本の大企業」でそれぞれ仕事をしてちゃんと結果を出している人って数えるほどしかいないと思うんですよね。そんな奇特なキャリアをお持ちだからこそこういう本が書け、そして受け手にとっても納得感を持って腹落ちして読めるんじゃないかと思います。

 

私が代表をしているサーバーワークスという会社でも、大切にしている価値観やオペレーションがあるのですが、本書にもそうしたやり方や考え方に対して思想的な裏付けがなされており、「既にやっていること」に対する見方が深まった点も強調しておきたいと思います。

  • 「顧客視点」(P.24)
    • 私たちが「行動指針」と呼んで大切にしている価値観の中に「顧客視点」というものがあるのですが、これが意外と難しいんです。みんな顧客視点で考えよう、行動しようとは思っていても、いざ製品開発やプロジェクトの現場で「その価値観を具体的な行動にする」際に本書でいう「谷を埋める」アプローチになりがちです。そういうワナの存在や「真に顧客視点なアプローチ」について再考する良いきっかけになります
  • 障害から改善のやり方(P.145)
    • 私たちは過去20年にわたってITインフラの運用をやってきているので、障害を改善する仕組みを大切にしているのですが、改善のアプローチを考える際に必ず「その仕事そのものを辞められないか?」ということを最優先に考えるようにしています。歴史があったり改善を重視する組織ほどムダな仕事が増える傾向にあると思いますが、そうした組織にも「To Stop」リストの考え方は非常に有益だと思います
  • 「称え合う文化」(P.214)
    • これは本当に大切ですね。私たちもをお互いに称え合い、感謝を伝えるピアボーナスの仕組みを導入していますが、これは本当によかったと思います


その他にもエンジニアのピープルマネジメント、チームマネジメント、組織マネジメントについて具体的なアプローチと共に詳解されているだけでなく、個人のキャリアマネジメントについても非常に実践的なアドバイスが示されており、ITに携わる人であればどんな方が読んでもためになる、将来の指針になる何某か得られるのではないかと思います(早速私も課長、部長陣に読んでおくようにお願いし始めたところです)。

 

そんな本書ですが、気持ちよく読み終わるためにほんのちょっとだけ注意すべき点もありますので、 最後にその注意点を述べて書評の締めとさせていただきます。

 

注意点

  • この本を一読すれば分かるように、小野さんは本物のハッカーです。ハッキングを広義に「最小の労力でシステムへのアクセスを獲得し、得られる便益を最大化すること」と捕らえるなら、この本は「みんなに優しくIT業界で生き抜く方法を体系的に教えるよ〜」という羊の顔をしつつ、あなたの心をハッキングしバックドアを仕掛けられ、ブログやツイッターをフォローしたりクレジットカードをセゾンに切り替えたりして、二度と小野教から抜けられなくなる可能性を秘めています。いや、もしかしたらこの本の存在は、我々小野フォロワーやIT業界に対して仕掛けられた壮大なソーシャルハッキング行為なのかもしれません・・・
  • この本はIT業界で生き抜くための知恵と、知恵の背後にある考え方を体系的に伝えてくれるまぎれもない良著で相当数売れることになると思いますが、これらの印税はもれなく小野さんのワイン代になります。例え印税がムサンヌになっても、「小野さんが美味しいワインを買ってまた本書の様な良著を書いてくれればいいや」というパトロンヌ的な、海のように広い心が不可欠です
    ※ムサンヌとパトロンヌについてはこちら
  • 後書きが反則的にズルいです・・。あれ?目から汗が・・・

月2万円のリモートワーク手当について

こんにちは、大石です。

既報の通り新型コロナウイルスが猛威を振るっております。罹患された皆様にはお見舞いを申し上げるとともに、こうした状況に立ち向かってくださっている医療関係の皆様、私たちの生活インフラを支えてくださっている皆様にこの場をお借りして御礼を申し上げたいと思います。

感染症対策には「3密を防ぐ」という認識はみなさま共通だと思いますが、会社というのがこの「3密」の条件に怖いほど当てはまっております。 もともと私たちは社員が7人の時に6人がインフルエンザにかかってしまい、会社が潰れかけたという苦い経験があったため、感染症にはかなり気を遣っておりました(インフルエンザワクチンは会社補助で毎年全員が接種したり、会社で咳をしていたら帰ってもらう、etc)。 さらにリモートワーク(テレワーク)についても2012年から本格的な制度化を進めてきた結果、日常的に9割の社員が利用している状況であったため、2月下旬には早々と原則リモートワークへ移行を始めておりました。

私たちはクラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」というビジョンを掲げていますが、そのために「社員に、はたらく環境についての選択肢があること」を重要視しています。 物理的に出社するのでもテレワークでも、どちらでも「ケース・バイ・ケースで生産性が上がるやり方を自分で選んでください」というスタンスこそが働きやすさにつながる、という考えの下で、選択肢の提供を大切にしてきました。 ところが、現在の様に緊急事態宣言がでている状況において選択肢はありません。当社も2週間前から出社停止としており、事実上選択肢は除外された状況です。

この未曾有の危機を乗り切るために、私たちは今後の行動原則となるアクションプランを策定しました。それが「Survive and Revive」です。 細かい内容は今後の戦略にも関わるので割愛しますが、要約すると以下のようなものです。

  • Survive:今はとにかく緊急事態。徹底的にダメージを減らし生き残ることを最優先する
    •  社員、パートナー、ご家族の健康を最優先する
      • 会社でクラスターを作らない(出社の原則停止)
      • 物理的なイベントをキャンセルする
    • 生産性の低下を防ぐ
      • フルリモートワークが長期に続く前提でオペレーションを行う
      • 強制的なリモートワークのための必要な補助を行う
  • Revive:今後生まれる新しい市場を開拓し、更なる成長につなげていく

私たちサーバーワークスでは、こうした原則に従い、強制的なリモートワークでも生産活動へのダメージを最小限にとどめることを目的に、全社員に一律月額2万円のリモートワーク補助を実施することにしました(期間は強制的なリモートワークが解除されるまでとなります)。

一時金を出す会社もあると聞いていますが、リモートワークのために一時的に支出が必要なケースは(社内アンケートによると)ディスプレイ、モバイルルーター等の購入であり、こうしたものはすでに会社のものを貸し出す措置をとっていたため、当社の場合大きな問題にはなりませんでした。 どちらかというと、光熱費や、自宅のインターネットが混雑でWeb会議等に耐えられないため、やむを得ずモバイル通信で行うことに伴うコスト増といった継続的にかかってくるコストの負担について考慮してほしいという声が聞かれたため、その手当を行うことにしたものです。

私もリモートワーク、特にWeb会議の品質を上げるためにマイクを買ったりカメラを買ったりマイクの周りに吸音材を買ったりグリーンバックを買ったりついでに動画編集ソフトを買ったりあと今日はスイッチャーとLEDライトがAmazonさんから届いたりと、リモートワークに伴うコスト負担増については痛いほど理解しているので、こうした補助が社員のみなさんの懐へのダメージを抑え、かつ「生産性の低下を最小限に防ぐ」ことにつながることを願ってやみません。

 

まだまだ感染症の状況は予断を許しません。 今は私たち一人一人が自分の身を自分で守り、こういう状況でも生き残り、成長できる会社、社会であるということを証明する他はありません。 私たち全員で、この危機を乗り越えていきましょう!!

キックオフミーティングをリモートでやったら逆に盛り上がった話

こんにちは、大石です。

facebookでもポストしましたが、この2月末で第21期が終わり新しい期を迎えるということで、先日キックオフミーティングを行いました。

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当社は普段からリモートワークが多いこともあって、キックオフは年に2回だけある「みんなが顔を合わせる数少ない機会」でもあります。そういう事情もあって私もキックオフでみんなと会えることをとても楽しみにしていたのですが、コロナウイルスの影響もあり2月17日には早々に「全員集合は禁止」を決め、代わりにYouTube Liveで社内に配信することにしました。

正直にいって、キックオフをリモートにしたと決めたときは

「仕方ないとはわかってるけど残念だなぁ〜」

というのが第一印象でした。普段リモートワークが多いからこそ、全員で集まって「今期も高い目標に向かってみんなで力を合わせて頑張ろう!」という気持ちをみんなで共有する機会が、私たちにとっては本当に貴重なわけです。

そうはいっても健康より大切なものはありませんので、キックオフをリモートにする判断自体に迷いはなく、2月17日には早々に「キックオフミーティングはリモートにします」という決定をしました。

そんな訳で配信形式でのキックオフ開催となったわけですが、運営チームがちょっとした工夫をしてくれて、このキックオフミーティング中に自由につぶやけるSlackのチャンネルを用意してくれたんです(※YouTube Liveの場合「非公開動画だとコメントできない」から、という事情もあります)。

これがとてもよくて、みんな配信を見ながらリアルタイムにコメントができるので、妙な一体感というか双方向性があるんですよね(お歳を召した方には「昔のニコ生の感じ」といえば伝わると思います)。

物理的に集まってキックオフをやる時は、マナーの意味も含めてノートPCやスマホを使うことなく「スピーカーの話を聞く」ことにしているので、どうしても一方通行になってしまうんですよね。もちろん笑いや頷きである程度の反応はわかりますが、それでもどうしても情報は限定的です。

それに対して、オンラインでやると細かい点にも笑いや突っ込み、意見の表明とか様々なリアクションがあるので、スピーカーが様々な反応をしれるのはもちろん、参加している人同士もコメントをし合うことでイベントがインタラクティブになり、結果としてかなり盛り上がっていました。これは私も想定していませんでした。 f:id:swx-ceoblog:20200803141616p:plain

↑これは発表の中で「バビロニアの教え」というキーワードが出てきたときの様子 リアルに集まって酒を飲んで盛り上がって円陣を組んで(組みませんけど)「やるぞーー!!」という昭和なノリも結構ですが、外国人の方もハンディキャップを背負った方も子育て中の方もいろんな方がいる中で「どこか一つの場所に集まって、アレルギーを持った人もいる酒という名の依存症誘発液をグビグビ飲むことでしかモチベーションを保てないのであれば、そっちの方が問題だなぁ」と改めて感じた次第です。

儀式として集まることを否定はしませんが、集まっても結局一方通行のコミュニケーションしかできないのであれば、集まる意義は限定的です。オンラインでこれだけ盛り上がってしまうと、逆に「みんなで集まることの意義とは何か?」を改めて考えさせられるよい機会となりました。

もしこれから「リモートでキックオフをやりたい」という方がいらっしゃれば今回の私たちの取り組みからいろいろとご紹介できることがあると思いますので、ご遠慮なくお問い合わせください。

こんな時期ですから、みなさんで力を合わせてこの非常時を乗り切っていきましょう。

リモートでのキックオフ、おすすめします!

「Slackの使い方をわかっていない」と鼻で笑う信者

先週、twitterでこんなツイートが回ってきました(下のリンクはまとめです)。

https://togetter.com/li/1452945

私達は2014年4月から(※)社内メールを停止して社内コミュニケーションはすべてSlackを使っていますが、古参ユーザーとして全力で解説するとこんな感じになるかと思います。(クリックで拡大します)

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※ちなみにSlackをいつから使い始めたかを知るためには #random とか #general チャンネルでi ボタンを押すとチャンネル作成日=使い始めた日がわかります

このポストをみたほとんどの反応が「草ww」とか「いつの時代やねん」というような、ある種バカにしたような反応でした(無理もありませんが・・)

こういう反応の本質は 「自分はわかっているが分かっていない人のことを下に見た反応」 ではないかな?と思うのですが、これって実は自分のクビを自分で締めるような行為だと私は思うのです。 Slackを得意満面の笑みで使っている方が、一番困る状況ってなんでしょうか? おそらく 「Slackを使おうというユーザーがいなくなること」≒「Slackがなくなること」 なんじゃないかと思います。

でも、みなさんが何か新しいサービスを使おうとしたとき、古参のユーザーから「プッ」とか笑われたり「わかってねーなーあいつ」とか言われたら、どう思うでしょうか?多分ほとんどの方が「よし頑張って覚えよう」ではなく「気持ち悪い連中がいるサービスには近寄らないようにしよう」と感じるのではないかと思うのです。

ユーザーがそういうクラスターだと、どんどんサービスのイメージは悪くなっていき「ほにゃららチームスとかの方がユーザーもみんなスーツ着てるしマトモなんじゃないか?」と考える人が増えて、Slackのユーザーは減り、結局Slackを使っている人自身に呪いが降り掛かってくると思うのです。 鼻で笑うことも、立派な「排他的行為」です。 自分たちの独特なオペレーションを他の人に教えるのではなく「あいつは何もしらないヤツだ」と排除する人々の集まりって、はたから見ると新興宗教と一緒で「気持ち悪い」ですよね。 「Slackを使っている連中は気持ち悪い集団だ」 と思われることほど、Slackのユーザーとしてダメージの大きいことはありません。

SlackもAWSも「ユーザーが多くなればなるほど、既存のユーザーが利益を受ける」正のネットワーク効果が非常に高いサービスです。こういう性質を考えれば、あのポストを見たときの正しい反応は「わからない人には論理的、合理的に理想的な使い方を説明する」ということだと思うのです。

私達は、AWSを2007年から、Boxは2011年から、Slackは2014年から使ってきて、それらを世の中に広めることに専心してきました。 私達が今ここにいるのは、「自分たちだけがこうした新しいサービスのことを知っている」という情報の非対称性があったとしても、それを鼻にかけるのではなく、ちゃんと丁寧に説明し、メリットやデメリットを合理的に伝えてきたからであり、「クラウド唯一神を奉じる神秘集団であったこと」が理由ではありません。

サーバーワークスのメンバーには「決して新しいサービスの使い方を間違っている人がいても、鼻で笑ったり馬鹿にしたりするのではなく、きちんと説明してあげてほしい。そういう行動こそが、クラウドを世界に拡げ、私達のビジョンを達成するための道だ」ということをお伝えしました。

ぜひこのポストをご覧になったみなさんにも、「自分たち自身が気持ち悪いクラスター」に陥らないような行動へのご協力をお願いできれば幸いです。

新年のご挨拶(2020年)

みなさま、新年あけましておめでとうございます。

2019年もお陰様で順調に成長することができました。これも、日頃より当社をご愛顧くださっているお客様、パートナーのみなさま、素晴らしいサービスを提供してくれているアマゾンウェブサービスジャパンの皆さま、そして成長を支えてくれている社員とそのご家族の皆様と深く感謝致しております。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

そしてなんといっても、2019年当社にとって一番大きなできごとは「東証マザーズへの上場」でした。 上場の意思決定は2013年でしたので、決定してから6年という非常に足の長いプロジェクトだったわけです。途中は山あり谷ありくじけそうになることも多々ありましたが、チームメンバーの全員が、気持ちを切らすことなく意思を持続できたことが成功につながったのではないかと思います。 改めてチームメンバーの皆さん、そして上場までの道のりを伴走してくれた大和証券の皆さんに感謝の意を伝えたいと思います。

(余談ですが、2019年の初値上昇額では当社銘柄が一位だったようです。 ※集計期間は2019年1月1日〜2020年1月1日 株主の皆様の高い期待に応えられるよう、これからも社員一同、力を合わせて努力して参ります)

 

とかく上場直前直後はいろいろな方から脅され(?)て、発言に気をつけるようになってしまった結果、ブログの更新頻度が落ちてしまいました。今年はこちらのブログもプラットフォームを変えて心機一転し、また上場してから一段落もして「何を発言してはダメなのか」もある程度理解できましたので、また更新頻度を上げてきちんとアウトプットの質・量を高めていきたいと思います。 私たちは「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」というビジョンを掲げておりますが、今年もこのビジョンに近づくことができるよう、技術力の向上、より良いサービスの提供に全力で取り組んで参ります。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。